わたしのはじまり

男は夢を見ていた。
何もない空間にぽつんとひとり。

このままじゃいけない。男は旅に出ることにした。

歩く。歩く。歩く。  海が見えてきた。
何も考えずに歩いていたけれど、この世界に海があったとは驚き。
男は泳いでみることにした。

せっせらせっせら泳いではみたけれど、自分には体力がないことを思い出した。男は波に飲まれてしまった。

目が覚めると、7人の神様が男を覗き込んでいた。どうやら陸地まで流されたらしい。神様たちは微笑みながら話し合っている。
ひとりの神様が男の頭に手を重ねた。指の先がぽうっと光っている。
男はだんだん意識がとおくにいってしまい、また深い眠りについてしまった。

次に目が覚めた頃、男の頭のなかには自分とは少し違う実体のない何かが住み着いていた。男は困惑しながらも自らの頭の中に生まれた新しいパートナーを受け入れ、アイを注いだ。


今わたしは男の頭の中から独立しようとしている。たくさんの愛を注がれてきたけれど、きっとそんなのはウソ。それが男の自己満足のためだと、だんだん気づいてきた。私にアイは必要ない。

私はひとりになりたい。

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