見出し画像

ノスタルジック、それは“紅”――東京・神楽坂

written by: SAKI.S 



神楽坂。かぐらざか。

なんて良い響きなんだろう。

かぐら、ざか。坂とついている地名に、どことなく憧れがある。くねくねした小径がいっぱいあって、ふとした拍子に迷いこんでしまうような。

そんな、どことなく迷子になれる、わくわくを残してくれてる気がする。(実際に住むとなると大変だけれど)

そう、神楽坂もそんなところだ。

JR飯田橋駅から降りて、ひたすら坂を登っていく。坂といっても比較的ゆるやかなので、ずらーっと連なるお店をぼおっと眺めたり、ふらっと入っているあいだに、気づいたらけっこう登ってしまえる。

もうすぐお祭りだったみたいで、道に沿ってずらーっと提灯が並ぶ。お店や看板の赤とあいまって、赤色が真夏の光にまぶしい。

真夏に映える「あかいろ」は、どことなくノスタルジックだ。

なぜだろう。「あかいろ」に吸い寄せられて、どこか過去の、遠い記憶に飛んでしまうような、気分になるからだろうか。

ねこの郵便局。こぢんまりとした店内は、上を見ても下を見ても右を見ても左を見ても、文字通りねこばかり。文房具からマンガから雑貨から、こんなにねこばかり集められるのか、というくらいある。

「あか」はこんなところにも潜んでいる。青い紫陽花とのコントラストが眩しい。

神楽坂はかつて花街だったようで、舞妓さんが賑わう大通りを避けて通っていたという、昔ながらの小径もあちこちにある。かくれんぼ横丁や兵庫横丁という、どれも石畳で、そこだけ異空間のよう、な。

うってかわって、ノスタルジックはノスタルジックでも、こちらは昭和レトロなコインランドリー。

疲れたので神楽坂茶房へ。行列ができてたけれど、テラス席を希望したらすんなり行けた。抹茶マロンタルト。一切れがすごく大きい。

神楽坂茶房、雰囲気抜群なので正直味の方はそんなに期待していなかったのだけれど、これがべらぼうに美味しい。抹茶とマロン?という感じだったけれどこれがよく似合う。

ポークカレーも食べたけれど、こちらもカフェ飯、とは思えないくらい、カレー専門店かってくらい本格的な味で一瞬で食べ終わってしまった(ゆえに、写真がない)。

坂を登りきったところで、やっと本日のメイン、本屋Titleとla kaguに行く。これまでのノスタルジックな神楽坂とはうって変わって、スタイリッシュな店内。ひろびろしていて、真夏じゃなかったら外の階段でもゆったり過ごすのに。

坂を再び下るのは大変なので、帰りは地下鉄神楽坂から乗る。

「あかいろ」ばかり目についてきただろうか。なんてことない道でも、神楽坂を歩いていたらどことなく、ノスタルジックな気分になってしまう。

真夏ですっかりやられた身体だったのに、そんな神楽坂の「あか」を目に焼き付けていたら、あれだけ歩いても、気持ちはすうーっと楽になった。ここしばらくは家で仕事していたし、暑くて出かける気にならないし、夫は忙しいし、なんだかくさくさした気分、だったのだ。

目的なく街を歩くって、どうしてこんなに気持ちが楽になるんだろう。仕事や勉強や家事や...毎日が「しなければいけないこと」で埋めつくされてると、気づいたら都会のコンクリートに埋め尽くされた地面のように、じわじわとした息苦しさ、がある。

そんなとき、神楽坂の「あかいろ」は私を目的から解き放って、少しばかりの“横道”、“脇道”を見せてくれた。

そんな誘う「あかいろ」を見つけて、ふらっと迷い込んでみて。

***
訪れた場所:

赤城神社
善国寺
神楽坂茶寮
la kagu
本屋Titile
***

(Photo by SAKI.S)

サポートありがとうございます。みなさまからの好き、サポート、コメントやシェアが書き続ける励みになっています。