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起業家のリアルに迫る # 人生を変える学び 「香り×IT」メーカーCODE Meee代表 太田賢司 Vol.2

大手香料会社で様々な経験をする中、起業を目指してグロービスへ入った太田さん。そこで何を学び、どのように起業へ至ったのでしょうか。

「起業は無理」と思われたプランを1ヵ月でブラッシュアップ

武井:起業はグロービスを卒業してすぐだったと思うのですが、会社を辞めたのはいつですか。

太田:もともと35歳までには起業すると決めていたんです。ちょうどグロービスを卒業するときがそのタイミングだったので、卒業と同時に起業がキレイだな、と。

とはいえ、お金の問題って大事じゃないですか。退職時にベンチャーキャピタルから資金を得られると心理的にも余裕が生まれるので、それを狙いました。実際、グロービス在学中の2016年の秋に出資が決まり、2017年3月卒業だったので、年明けには「間違いなく春には起業する」と会社に伝えました。

武井:ビジネスプランを練りだし、人に見せ始めたのはいつぐらいから?

太田:起業の1年前、2016年の夏ぐらいでしょうか。「香りで、カスタマイズで、それをITでやったら面白いことができそうだな」ぐらいのフワッとしたプランはあって、武井さんの所に行きましたよね。

武井:あのときは一瞬、「起業は無理かな」って思ったんです(笑)。

太田:そうですよね(笑)

武井:プロセスが面白いんですよ。まず、井上陽介さん(グロービス経営大学院教員)から「1回話聞いてやってくれ」と太田さんを紹介されて。会ってみると、結構面白いことは考えているけれど、いかにもフワッとしていてお金になるかわからないレベル。その時、わたしが何をアドバイスしたかは覚えていないんですけれど、なんと、その1〜2ヶ月後に懸念点を全部修正して、かつ、よりソリッドになった案をもう1回持っていらしたんです。そのときに「ベンチャーキャピタルからも投資のお話をいただいた」とご報告があったんですよね。「この伸びしろはすごい‼」と思いました。

太田:ありがとうございます(笑)。

武井:本当にたくさんの起業相談を受けるんです。でも、アドバイスした後で、それを修正して再度持っていらっしゃる方はとても少ない。10人中8人はいらっしゃらない。

太田:今だから言いますが、最初の時は、とにかく早く武井さんにお会いしたかったんです。武井さんのご専門のブランディングにすごく興味があったので、とりあえず会って話を聞こうって。つくりこむと時間がかかるから、「まず会おう」ということで、フワッとした感じになっちゃいました。

コメント 2020-09-04 143426

起業後の「お金がなくなる恐怖」。小さな実績の積み重ねがメンタルを支えた

武井:その後、本当に辞めて起業されて。しかも、グロービス卒業生の中では数少ないメーカー系での起業です。メーカーだと運転資金がかかって大変だと思いますが、最初の苦労は何でした?

太田:生活はガラッと変わりましたね。すべて自分に返ってくるので、どう1日を過ごすかはかなり気をつけるようになりました。毎日「いつ資金がショートするか」を意識していました。最初にベンチャーキャピタル(以下、VC)から入ったのが4~500万なので、半年持つか持たないぐらい。エンジニアも雇っていましたし、「次のファイナンスをどうしよう」とひたすら考えつつ、事業も動かしていかなくてはならない。そういう意味で、過ごし方やビジネスに対するマインドは、会社員時代から大きく変わりましたね。

武井:お金がなくなる恐怖には、どうやって慣れていきました?

太田:小さくても何か結果を出せばファイナンスできる確率が上がる、ということは分かっていたので、小さい成功体験を生み出すことに集中しました。クリアするごとにメンタルが保たれるようになっていきましたね。

例えば、最初はMakuakeのクラウドファンディングなんですけれど、プロジェクトが1週間で成立しました。それで「次の借り入れにこの結果が生きてくる」と少し安心して。次にコーポレートアクセラレーターとしてヤマハに採択いただいたときも、「よし、これは立派な実績だ。これも次のファイナンスに生きるから、焦らなくて大丈夫だ」と。何か1つ結果を出すごとに“安定剤”じゃないですけれど、「大丈夫だ、大丈夫だ」と自分にも周りにも言い聞かせながら気持ちを保っていた感じですね。

武井:お金の調達が安定するまでの道のりを教えてください。

太田:振り返ると、2016年秋にVCの出資がきまり、2017年の春に実際に入金があった。けれど、それは夏に消える予定だったので、それまでに、とやったMakuakeのクラウドファンディングに成功。次に、ヤマハやIBMと提携しました。同時に、日本政策金融公庫の資本性ローンという特殊なものを狙って、結果、2,000万円を調達しました。その鍵になったのが、まずVCから資金が入っていること・Makuakeのクラファンで成功したこと・大手企業と連携していること、という3つを達成していたことです。「これでまあまあ走れるな」という時に、グロービスのコンペティションG-CHALLNEGE2017で大賞をいただいて賞金500万円をいただき、2018年にまた次のファイナンスをやりました。

武井:その方法は、他の起業家の方にもおススメできますか?

太田:はい。効果的に働く“順番”を結構意識していたんです。ファイナンスにしても、参加するアクセラプログラムにしても。何もないベンチャーだったらおそらく落とされるけれども、実績が出ていたら採択してもらえる。そういう信頼感も意識していましたね。例えばPlug and Play Japan(世界的なベンチャーキャピタル)もそうですし、すごく人気で競争率が激しい電通さんのGRASSHOPPERでも、実績を買ってくれて採択いただいた。こういう戦略的なことも考えていましたね。

武井:このような華々しい成功をスタートから収められた理由は、ご自分では何だと思いますか。

太田:お互いに「この人と一緒にやったら面白いな」と感じてもらうことがすごく大事だろうと思っていました。実際、コンテストやアクセラレータープログラムの担当の方との、そういう関係づくりはすごく意識していました。

武井:大事ですよ。私から付け加えるなら、やっぱりビジネスのコンセプトとかアイデア自体がすばらしいっていうことと、経営者である太田さんの本気度、それからスペシャリストとしての能力、こういうものは他の企業にはなかなか無いと思いますね。

太田:ありがとうございます。武井さんのおっしゃるとおり、まわりの方に聞くと、「キャリアがユニークだから」っておっしゃってくれる方はたしかにいます。いわゆる普通のITのベンチャー起業家ではなくて、香りという専門性があってかつマニアックというかユニークな、専門性×経営も一応分かっている、というところが魅力だっておっしゃってくれてます。

――資金調達の実績を重ね、事業が軌道にのりはじめた3年目。コロナショックに見舞われた太田さんはどう対処するのでしょうか。Vol.3に続く。