プロローグ⑧〜だらしねえな、この程度かよ俺は

2019年2月3日

まんじりとしない日々が続く。火曜日の検査日までは特に症状改善のためにできることはない。幸いにして痛みも息苦しさもないのだけれど、しかし左の首筋に触れればシコリは確かにそこにあって、しかも毎日徐々に大きくなっているような気がする。

仕事に関しては、ちょうど今月から勤務スタイルを大幅に変更したのもあって、スケジュールには比較的余裕が出来たし身体への負担も少なくなった。

しかしここで問題が。
従来からのクライアントは分院で引き続き施術することになったのだけど、その分院のベッドが今まで使用していたベッドよりもわずかに低く、微妙に僕の身体に合わない。その影響で1日の施術が終わると、今までに感じたことのない腰痛が背中から臀部にかけて貫くようになった。

整体師が腰痛なんて、まさにミイラとりがミイラなシチュエーションで笑い話にもなりはしない。
しかし一抹の不安がむくむくと頭をもたげ出す。
これは本当にベッドの高さが合わないことで起きている腰痛なのか?
ひょっとしたら癌細胞がすでに頸部リンパ節から腰椎に転移していて、それで起きている痛みなのではないだろうか?いや、もしかしたら腰椎だけでなくリンパを経由してガンは全身に転移していて、火曜日の検査を待たずして既に手遅れな状態なのかもしれない。

腰の痛みだけでなく、ちょっとでも動かして痛みや違和感があったり身体に触れて強張りがあったりするとすぐにそんな思いが頭をもたげ出す。

まだ正式に告知されたわけでもないくせに、ガンという言葉を聞かされただけですっかり弱気になっている自分がいて、情けないやら悔しいやら。そんな自分に猛烈な自己嫌悪を感じる。だらしねえな、この程度かよ俺は。

ガンはもちろん怖い。でも本当に怖いのはガンそのものじゃなくて、自分の身体の中で意味不明に大きくなっているそれの正体がわからない事なんだ。


美味しい食べ物とか、子供達へのおみやげとか、少しでもハッピーな気持ちで治療を受ける足しにできれば嬉しいです。