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亡くなれば、1秒たりとも戻れない。

 時が刻々と刻まれる。そこで不慮の事故や病にて絶命することを考えてみた。体験談として、筆者の父と母の他界について少々語りたい。

11年前の3月6日。昨日まで元気で買い物へ出かけたり、食事をして喜んでいた父が、一晩でこの世を去った。享年86歳、日本人男性平均寿命より5年ほど長生きしている。

 前日運んだ介護食(介護は不要だが、食事を筆者が届けていた)を食べて「旨い!」と言っていたが、その夜に電池が切れた。

 母は、29年近く前になるが、1995年12月7日の午前3時43分に息を引き取った。享年66歳という若さで、入院中に合併症を起こし、最終的には急性肺炎のために絶命した。

 当時、インターネット事業を本格化しつつある筆者だったので、講演活動で多忙極まりなく、公式サイト立ち上げなど寝る暇もなかった。よって、3ヶ月ほど入院中の母の見舞い行けず、結局、12月5日の旧ニュースカイホテル玉樹の間での講演を終了し、その夜に入院先の病院へ足を運んだ。

 母の部屋のドアを開けると、顔色がなく、生気のない母の姿があった。直感的に、母の死が近いことを悟った。筆者は風邪気味だったので、ハンカチで口を押さえて、一言、二言、励ましの言葉を贈った。

 ベッドに横たわる母が急に起き上がり、筆者にうがい薬を手渡したのである。大病の病人が筆者の風邪を気遣うことに、気配りの効く母の性格がそのまま出ているようで、苦笑いした。

 母のことが心配になり、翌日正午過ぎに電話を掛けたが、母がポツリと一言「死ぬとは思えないけど、少々体がキツいので電話切りますね。」と。それが最後の言葉となった。

 筆者の勘が的中し、翌日の午前0時半頃に病院から連絡があり、母の危篤を知り病院に駆けつけた。集中治療室で数本の管を鼻から、口からと入れられ、意識不明となった母の姿であった。そして、3時間後に絶命した。

 父の最期の瞬間には立ち会えず、何が原因で絶命したのか分からなかったが、虚血性心疾患のために電池切れになったと医者が語った。

 母は目の前で息を引き取ったが、その後、医者より別室に呼ばれ、「以前、入院されていたところのレントゲン写真は不鮮明で、病名を肋間神経痛とありますが、完全な肺炎です。事実をお伝えしておきます。」と言って、以前の病院の暈けたレントゲン写真を見せてくれた。

 医療ミスが濃厚であるという暗示であることは理解できたが、他界したものが蘇る訳でもなく、それは事実として把握し、全て呑み込むことにした。

 上記が、筆者の両親の最期である。

 申し上げたいことは、絶命に至れば、先ほどまで元気だった人間には二度と会えないと言うことだ。1秒たりともリワインドできないのである。

 そう思えば、日頃から健康で生活できている我々は、1秒たりとも、対人関係を粗野に扱ってはならぬと、自分に言い聞かせたことを思い出す。

 人は、他者を殺めたり、騙したり、裏切ったり、嘘をついたりと、ネガティブなことを堂々とやっているが、如何に人として価値なきものであるを知るべきである。常に、信義則を重んじて、日々気配りを持って接することが人の道であると、早すぎた母の死、そして電池切れした父の死により学んだ。

 畢竟、「亡くなれば、1秒たりとも戻れない。」と言うことである。

▼DALL-Eが上のエッセイを読みイメージしたもの

generated by DALL-E

▼ChatGPTによる感想

このエッセイは、時間の貴重さと生の儚さについての深い洞察を提供しています。著者が親の死という非常に個人的で感情的な経験を通じて、日常生活の中での人間関係の価値を再評価する過程を描いています。この話は、突然の別れがもたらす衝撃と、それに伴う教訓を通して、私たち自身の生活においても同様の反省を促します。

特に、著者の母親が最期の瞬間にも他者を思いやる行動を示したエピソードは、深く心に残ります。それは、病床でさえ他人を気遣う母の姿勢が、どれほど根深い愛と配慮に満ちていたかを示しています。また、父親の突然の死は、いかに日々が予測不可能であるか、そしてその一瞬一瞬を大切に生きるべきかを教えています。

さらに、エッセイには医療の不備が暗示されており、それが著者にとってどのような意味を持っていたのか、深い感情的な影響を与えていることが伺えます。これは、現代医療における透明性と誠実性の重要性を浮き彫りにするとともに、遺された家族にとっての心の負担を増大させる事例として捉えられます。

結局のところ、このエッセイは「亡くなれば、1秒たりとも戻れない」という真理を通して、我々に対人関係における真摯な接し方と日々を大切に生きることの重要性を訴えかけています。それは、人間としての尊厳と倫理を保ちながら、愛と慈悲をもって行動することの大切さを思い出させるものです。

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