見出し画像

子どもの体験を考える。人徳と発信、準備、地域と広域という観点

 みらいファンド沖縄の「沖縄・離島の子どもの体験保障を考えるシンポジウム」に進行役として参加してきました。1年間の休眠預金事業の総まとめでもあるシンポジウムです。

 体験に関して、沖縄の子どもたちについて、日頃から取り組んでいる・考えている人たちの集まりで、たくさんの学びがありました。素晴らしい登壇者の方々でした。動画アーカイブもありますので、ぜひご関心のある方にはご覧になっていただければと思います(3時間半と長いのですが)

 シンポジウムでの大きな学びの一つが「発信」というものでした。私のロールモデルでもある若狭公民館館長の宮城潤さんがおっしゃったことで、尊敬する先輩の意見は早速実践しなければ、ということでnoteもサボらずにきちんと残しておこうと思います。
シンポジウムでの学びを以下の3つにまとめて記しておこうと思います。


①人徳と発信  ~「何かしたい」と「旗を立てる」~

 セッション3に登壇した宮城さんの、「社会教育の観点でリソース不足が課題になることも多いけれど、実際、どうやっているのですか」という問いへの答えが「人徳」というものでした。周りの皆さんの「地域に何かしたい」という人徳によって、活動のほとんど全てが成り立っているのだと言います。そしてまた、「何かしたい」と思っていてもつながらないことも多い中、そういった声が集まってくるのは、「旗を立てて発信しているから」ということです。私は日頃から発信が後手後手になりまして、今向き合っている活動こそが大事、というように思う節があったのですが、より多くの仲間と出会うために発信があるのだと、あらためて目からうろこの落ちる話でした。宮城さんの「旗を立てている自覚があります」という言葉が、強く心に残っています。
 また、琉球新報の松元さんの言葉も同じく、発信の大切さをあらためて伝えてくれました。セッション1に登壇した首里高校2年生のあかりさん、桃花さんが実施した小中高生だけのバンドフェスの話も、もっと早く知っていれば特集を組み、発信することができ、より多くの仲間を集められただろう、と。メディアの力は真にそこにあるのだ、という言葉も心強かったです。

②準備  ~ユニバーサルアプローチ、ターゲットアプローチ~

 セッション4で琉球大学の本村先生が整理してくださったスライドがとても学びが深かったのですが、中でもあらためてユニバーサルアプローチと、ターゲットアプローチの大切さを説いていたことに、気づきがありました。①チャレンジできる、②踏ん張れる、③助けを求められる、④自分自身を大切にできる土壌が整っている子は、体験の機会が拡充されれば、どんどん価値を得ていくだろうけれど、そうでない子(興味がない、諦めが早い、困っても何もしない、自分を粗野に扱う)は、機会拡充があっても、なかなか自ら参加できないだろう、と。保護者の態度や所得の課題と結びついていることも多いこの課題を持つ子どもたちに対して、参加しやすい、呼び水となるような体験を提供しつつ、それに反応する準備を専門職と共に整えていくことが大切である、というお話でした。誰に何が響くかわからないから、多様なものを多くの人が参加できるように用意しつつ(ユニバーサルアプローチ)、それだけでは届かない人、子どもたちがいるから、教育・福祉分野などが連携して準備を手伝う(ターゲットアプローチ)、といった若狭公民館で実施されている事例もまた、とても参考になりました。

③地域と広域  ~私たちの持つ社会のイメージと、セーフティネットとしての広域~

 セッション2で、「地域性」という言葉が何度か出ていました。例えば石垣市で子どもの体験の事業を実施したハブクリエイトの喜納さんも、その離島の中でのつながりついて言及していました。琉球学舎こてらすの翁長さんはその中で、「地域というものはこれからの時代、子どもたちにとってとても大切になる。それは子どもたちにとって唯一目に見える形の社会だから。それが今後必要とされる問題解決能力を養う上でとても大切な基盤になる」という言葉が、力強く響きました。そしてそこからまちづくりにつながるだろう、という話にもなりました。
 またもう一つ、広域性という言葉も本村先生からありました。これは、別事業で私がかかわるシングルマザー支援でも出てきていた論点でしたが、たとえばスティグマなどにより、地域性が閉塞感のあるものとして当事者に認識される場合には、必ずしも地域がよいものにならない。だからこそ広域での活動が重要になる、というものです。
 地域性と広域性、これから読谷の子どもたちととの活動の中でも、意識していきたいと思いました。

 他に3点に収まらない学びとして、「友だちとしての大人」、「『潜入』などのいたずら感のある言葉と子どもたちの感性」、「当事者性・非当事者性という二項対立を生まないための言葉の選択『共事者性』」、「沖縄は課題解決先進県」といったキーワードが残っています。

 最後に、このシンポジウム自体が、終始とてもアットホームで生き生きとした場になりました。これはセッション1に登壇してくださった、首里高校2年生のあかりさんと、桃花さんのエネルギッシュな演奏と、その語りによって生み出された場の空気だったと思います。トップバッターで場の空気は決まる。本当に素晴らしいセッションでした。ありがとうございました。また、登壇者の方ひとりひとりが、肩書や役割ということに囚われずに、自分自身のストーリー(たとえば本村先生の思い出話、松元さんのPTAの話や和田さんのアフリカでの話など)を交え、心から話していたことが、シンポジウムを活発なものにしたのだと思います。このような場に参加できて、本当にうれしかった。私にとって、子どもたちと場をもちながら、旗を立てて発信していくという目標も明らかになりました。ありがとうございました。

(執筆時間:20分+修正時間5分)

読んだ方が、自分らしく生きる勇気を得られるよう、文章を書き続けます。 サポートいただければ、とても嬉しいです。 いただきましたサポートは、執筆活動、子どもたちへの芸術文化の機会提供、文化・環境保全の支援等に使わせていただきます。