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一本の名作より百本の駄作

金曜日に、近藤康太郎さんのオンライン講座に参加した。朝日新聞の名物記者であり、私の愛読書となっている「三行で撃つ」の著者だ。

著書の中でも学びが多いが、講座の中で、脳の奥底にこびりついた言葉がある。それは、「一つの名文を書こうとするより、百の駄文を書け」という言葉だ。

そうか、と思った。文章を書くのが遅々として進まない時は、単純に気負いすぎているのかもしれない。良いものを、誰かの勇気になるものを。自分に強い負荷をかけるから、失速するのかもしれない。

考えすぎない。とにかく書き続け、書き切る。最初から駄作でも良いと考える。寧ろ、駄作か名作かなど、考えない。そうすれば、結果的に百本なり何百本なりの中から、人に響く名作が生まれるのだ。

この近藤さんの言葉は、参加者からの質問への答えだった。著書の中にある「常套句を使うな」という禁則めいたものに対しての質問。常套句を使わないようにすると、難しい、書けなくなる、という読者の不安。それに対して近藤さんは、常套句を使わないように意識して書こうとするのではなく、常套句を使ってでもとにかく書け、と言った。まずは量が質を凌駕する、と。とにかく書きまくり、時が来たらば「常套句を使わない」を思い出せばよい、と。近藤さん自身も、プールサイドでもどこでも、原稿用紙を持ち歩き、濡らしながらでも書いていると言っていた。

私はなぜ書き続けるかと言えば、自分のためでもあるが、誰かに前向きに、自分らしく生きる勇気を届けるためだ。しかし気取って書こうとしてしまい、真に書きたいことから離れたり、手が止まったりする。書く量がそもそも足りていないと、自覚することもできた。

小手先のテクニックや、理想に囚われて足踏みするのでなく、とにかく書き続けよう。肩から指先までがふっと軽くなった。

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