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さっきょく塾エッセイ

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さっきょく塾思考論シリーズの、講義記事(https://note.mu/yukikocomposer/m/mfc1f745c26bc)に対するレスポンス・エッセイを無料でお読みい…
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#さっきょく塾

楽器とは何か。

自分で設定しておいて何ですが、なかなか難しい質問…。 いつも答えを全く考えずに先に質問を設定するので、凄く悩みながら書いています。よし、少し遠回りになるけれど、書き進めよう(実のところ答えは二の次で、これをきっかけに思考し続けることが大事)。 いつだったか、作曲家のハヤ・チェルノヴィンに言われてそれ以来心に留めている言葉があります。作曲家が思い描くその一つ一つの「音楽」は、本人が把握しているより実際は広大だと。自分が書こうとする音楽を彼方先まで見通せているんじゃなくて、そ

楽譜とはなにか。

この質問を考えたのは、去年の年末だったかな。あれから一つ新しい曲を書き上げました。楽譜とはなにか、の問いに対して、少し実例を出しつつ、答えていきたいと思います。以下基本的なステイトメントです。 いつもやりたいことに応じて記譜法を一から考えるようにしている。そういった意味では、新しいアイディアに対しては、新しい記譜法を発明しなければいけないのかもしれない。いままで五線であったり、スペースノーテーション、文字譜、写真入り、イラスト入り、様々な方法でチャレンジしてきたが、まだまだ

【4月課題】 楽譜とは

ノーテーション回の反応を見ていると「五線譜以外の記譜を用いるカルチャー」は条件が揃うことは稀なのかもしれないと思いました。作曲家が興味があっても演奏する人がいないと実行は難しいですものね、自分たちでパフォーマンスを行うなどの場合を除いては。じっさい今回はわたなべさんが明るくない分野ということでこういう形の講義記事になったんです。(行き違いというか私の勘違いも大きかったのだけれど) さて楽譜とは何か?禅問答のようですが、もしかすると「作曲家の所属カルチャーを示すもの」とも言い

日本人であること

五月のさっきょく塾 思考論<間ってなあに?日本の感覚を現代音楽でつかう?> 面白く読みました。特にリザ・リムが対峙する文化との距離感に共感しました。そして自分にとって、日本を感じる瞬間がどこにあるか、考えてみました。 「日本人だから〇〇だね」「女だから〇〇だ」という言われ方はどうも好きではありません。 これって、「予想されたこと」対して「その通り」に対応することだと思うんです。 うちの4歳娘にこう問いかけます。 「歯を磨きなさい」 そうすると大抵は、 「やだー」

【5月課題】 日本人であることは重要か否か?

さいきん久々にみっちりと作曲をしています。ここ数年は論文優先だったのでずいぶん久しぶり。楽譜書くの楽しいけど難しい、、、(´Д` ) ***さて今回主に取り上げた三人の作曲家(リザ・リム、スティーブ・タカスギ、ハヤ・チェルノヴィン)。よく見てみると多くの共通点があるもよう: ・現代音楽界ではマイノリティとされる文化背景を持ち(非西欧諸国出身、あるいはそれらをルーツとする) ・複数の国での中〜長期の生活経験があり ・複数の言語を話す或いは知識があり ・旅を日常としていて ・

場所とは。

舞台裏が好きです。コンサートホールはどうも明るすぎる。特に日本の由緒あるコンサートホールは緊張する。敷居が高い。 演劇の舞台は、あの匂いが大好きです。とてもわくわくします。 *** 今回の思考論で少し触れた「Loch(穴)」という作品。アイディアの発端は「身体をどう見せるか」ということでした。コンサートホールだとある程度の距離が出来てしまう。もっと間近で演奏家を見つめたい、違う距離感で身体を見せる曲を書きたいと思っていました。ビデオを使ったアイディアにしようと思ったのは

結局何を求めてるのか?

わたしたちは、音楽に何を求めてるのか。何かを伝えたいのか、伝えたくないのか。何をどう聞かせたいのか、聞かせたくないのか。 この前、森紀明さんのインタビューをしました。 そのとき、森くんが、こう言ってたんですね。 良い音楽に出会った時に「なんで、これは良いんだろう」ってよく考えるんだけど、大抵わかんないんですよね、理由が。わからないんだけど「この音楽が良かった」感覚って、その場にいる多くの人に共有されている時ってありますよね。あれが何なのかってよく考えるんです。 自分の