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場所とは。

舞台裏が好きです。コンサートホールはどうも明るすぎる。特に日本の由緒あるコンサートホールは緊張する。敷居が高い。

演劇の舞台は、あの匂いが大好きです。とてもわくわくします。

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今回の思考論で少し触れた「Loch(穴)」という作品。アイディアの発端は「身体をどう見せるか」ということでした。コンサートホールだとある程度の距離が出来てしまう。もっと間近で演奏家を見つめたい、違う距離感で身体を見せる曲を書きたいと思っていました。ビデオを使ったアイディアにしようと思ったのは、アーティストの永岡大輔さん、瀧健太郎さんからの影響です。演奏家の身体を場所からどうにか解放しようと思ったんですよね。瀧さんがやっているように、移動式プロジェクターを使えば、即席コンサートも出来そうだなぁ。

(瀧健太郎さんのプロジェクトから)
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そして「穴」から10年たって、最近また「場所」をテーマにした作品をいくつか書きました。その一つが、行ったことのない場所の音を想像する作品。イタロ・カルヴィーノが書いた「見えない都市」のように、想像上の都市の想像上の音を書いて収集する、というアイディアです。架空のサウンドマップとでも言いましょうか。音響の参考にしたのはこのサイト

音って、場所を喚起させますよね。行ったような気になってしまう。このサイトではいくつかの場所の環境音を聞くことができるんだけど、まずそれらの音を分析するところから始めました。敢えて具体的な地理は調べずに、音だけで環境を想像してみる。「あぁ、近くに海があるんだろうなぁ」とか「子供が沢山住んでるなぁ」とか、そうやって音を聴きながら、それをスケッチしてコレクションするところから始めました。これがなかなか時間のかかる作業で、一つの環境音に対して一か月くらい時間がかかり・・・思った以上にヘビーな作業でした。

そこから、ロサンゼルスの環境音の中に、例えばストックホルムの音を入れたり、そこからまた別の音楽に繋げたり、と、して書いたのが、二作目となる弦楽四重奏です。スケッチしてコレクションするのに思った以上に時間がかかり、今もなお改定作業中です。タイトルが無駄に長ったらしい「連続都市、弦楽四重奏、演奏家の個人的な記憶とプロジェクターのための(Die fortdauernden Städte für Streichquartett, persönliche Erinnerungsstücke der Objektspieler und Projektor )」という作品。いつかまた改定して再演したいなぁ。

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ところで、思考論文中に書いたクラウス・ラングのプロジェクト、日本でやりません?町の色んなところで、演奏しちゃおう企画。本気でやりたい人募集中。

若手作曲家のプラットフォームになるような場の提供を目指しています。一緒にシーンを盛り上げていきましょう。活動を応援したい方、ぜひサポートお願いします!