東京下町 おうちご飯 #1 お茶漬け

私のお茶漬けと言えば 熱い 緑茶、煎茶をお茶碗に注ぐタイプのものである。

でも 世の中の主流は出汁茶漬けなのかもしれない。クックパッドで「お茶漬け」と検索すると殆どが “出汁茶漬け” なのだから。

確かに出汁茶漬けの方が分かりやすく、“美味しい” 味だ。だけど私はお茶漬けと言ったら緑茶の方が好きだ。子供の頃から食べ続ける、慣れ親しんだ味だからか。そうやって 緑茶漬けを消極的に推す程に 緑茶のお茶漬けは 後味も苦く、一般的には美味しいものではないのかもしれない。そう言えば私の夫もあまり好きではないと言っていたな。

私の両親は鮒佐の佃煮でお茶漬け(緑茶の。以下出汁茶漬けの場合は出汁茶漬けと書く)をするのを贅沢としている。何故かというとご存知だろうか、鮒佐の佃煮のべらぼうに高価な事を。
しらすの佃煮が100グラムで3000円程。100グラムって 目の前にすると凄く小さい固まりだ。

だけど流石の高級品、しょっぱい がでも、美味しいのである。

しらす、昆布の佃煮を お茶碗の白飯の上に並べて 熱々のお茶を急須から注ぐ。
少し食べたら、海苔をちぎり入れ食べすすめる。緑茶の苦味と佃煮からしみでる旨味ある醤油味 ほぐされた白いご飯をかっ込む。幸せご飯である。

どうやらお茶漬けの美味しいポイントに醤油味があると思う。鮒佐の佃煮なら最高だけど、なくても充分美味しいお茶漬けが楽しめる。

沢村貞子さんのエッセイで “おこうこ茶漬け” というものが出てくる。ぬか床の底に眠っているような古漬けを刻んでお茶漬けにするというのだ。

私もぬか床はやっていたので、しかも 古漬けの食べ方に悩んでいた事もあって 早速 試してみた。古漬けは塩っぱく酸っぱい物なので そのままお茶とご飯で食べると 風情はあるけれど もう一味という所だった。そこでお醤油味の出番である。お茶にとけた塩酸っぱい味を醤油味がマイルドに美味しくするのだ。

古漬けを刻んだ物に生姜醤油であらかじめ味付けをするとか、鮒佐でなくても、昆布や生姜の佃煮を加えてもいい、海苔もお茶漬けには欠かせないパートナーだ。

お茶碗一杯のお茶漬けを完食すると 禅寺の精進料理を連想する。たくあんとお茶でお茶碗を綺麗に拭って完食するというやつだ。注いだお茶で お茶碗の中にしみ出た全部の栄養を飲み干すイメージがあるからだ。ぬか漬けの野菜の栄養、乳酸菌も全部お茶と一緒に流し込む、栄養滋養と思うと食事はさらに美味しくなる。


最近おでんをした。おでんは大量に作って何日かかけて食べるけれど

古く漬かった蕪の葉と人参とナスと大根のぬか漬けを細かく刻んだものを たっぷり白飯の上に乗っけて その上から緑茶ではなく おでんの残り汁をかけていただいてみた。

おでんの 滋養ありそうなスープに 微かに酸っぱいカリカリ食感の刻まれたぬか漬けの野菜達 これとおつゆでほぐされたサラサラの白飯。

これが絶品でびっくりしてしまい、おでんの汁が続く限り 毎朝これを食べてしまった。

ぬか漬けを お世話していて 良かったと 実感した1杯だった。食卓で一人、ふぅと息をつく。

最強お茶漬けライフ..

そしてふと気付く..これって出汁茶漬けよね..と。

#料理 #お茶漬け #おでん #コラム #エッセイ


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