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映画「ストレンジ・ワールド もうひとつの世界」感想


 一言で、3世代に渡る家族の物語です。地下の世界で繰り広げられる冒険は王道アクションでしたが、現代らしく、SDGsやZ世代の考えを反映し、「発想の転換」で乗り切ります。正に、世界に「悪者はいない」のかもしれませんね。

評価「B」

※以降はネタバレを含みますので、未視聴の方は閲覧注意です。

 本作は、ディズニー・アニメーション・スタジオによる第61作目の長編アニメーション映画です。ディズニー史上最も「ストレンジ(奇妙な)」世界を舞台に、親子3世代の壮大な冒険を描くアクションアドベンチャーです。
 監督は、『ベイマックス』や『ラーヤと龍の王国』を手掛けたドン・ホール氏と、『ラーヤと龍の王国』で脚本を務めたクイ・グエン氏が、共同監督と脚本を担当しています。

・主なあらすじ

 四方を高い山に囲まれた国アヴァロニア。「山の向こう側の世界」は謎のままで、その先に行った者はいませんでした。
 勇敢な探検家であるイェーガー・クレイドは、その謎を世界に示すことが偉業だと信じ、10代の息子サーチャーを同行させました。
 しかし、サーチャーは冒険よりも庭仕事が好きで、探検中も道端の植物に夢中でした。彼が洞窟内で「緑光を放つ謎の植物」に触れたときに衝撃が走り、雪崩が起きます。
 何とか危機を脱したものの、サーチャーはイェーガーに植物を持って探検から帰ろうと主張しますが、イェーガーはそのまま冒険を続けると主張します。しかし、探検隊のメンバーはサーチャーを支持したため、チームは決裂し、イェーガーはたった一人で吹雪の山を進んでしまいました。
 25年後、30代半ばになったサーチャーは農家になり、また発見した植物「パンド」によってアヴァロニアを近代化に導いたことで、「英雄」となります。しかし、父は未だ行方不明のままでした。
 ある日、妻メリディアンがクロップダスターの調子が悪いと訴え、原因を調べるとバンドバッテリーの電池が切れていました。サーチャーはバンドの根に害虫が入ったせいだと思いますが、その夜、何と巨大な飛行船ベンチャーに乗って、アヴァロニアの大統領のカリスト・マルがクレイド農園にやってきました。
 かつてクレイド探検隊にいた彼女は、このままでは国中すべてのパンドが腐ってしまうと告げ、サーチャーに原因究明のために「パンドの根っこ」の調査に行くことを依頼します。
 父親のせいで「冒険嫌い」になったサーチャーは最初は断るものの、説得されて同意します。それを聞いていた冒険好きな息子のイーサンは同行を希望しますが、父はそれを許しません。それは、息子を大切にしたい父の思い故でしたが、そこで押し黙る息子ではないイーサンは、何とかして地下世界に行くことを考えます…

・主な登場人物

・サーチャー・クレイド(演- ジェイク・ジレンホール/ 原田 泰造)
 本作の主人公。元々は冒険一家だったものの、とある理由から冒険を辞め、その後都市の動力源になる植物「パンド」を発見したことで「英雄」となり、街には銅像があります。現在は農場を経営していますが、息子のイーサンに農場を継いでくれることを望んでいます。

・イーサン・クレイド(演- ジャーブキー・ヤング=ホワイト/ 鈴木 福)
 サーチャーとメリディアンの息子。やんちゃで無鉄砲な性格ですが、開拓プライマルというゲームが好きです。友人ディアゾには親友以上の気持ちを抱いています。冒険好きで、山に囲まれたアヴァロニアのその先へ探検に出ることを夢見ています。

・メリディアン・クレイド(演- ガブリエル・ユニオン/ 松岡 依都美)
 サーチャーの妻。家族と農園を愛し、クロップダスターの操縦を得意とします。パイロットスキルは抜群です。左利き。

・レジェンド
 クレイド家の犬で左足がない3本足。人懐っこく、愛らしい性格です。

・イェーガー・クレイド(演- デニス・クエイド/ 大塚 明夫)
 サーチャーの父で、イーサンの祖父。冒険一家の「元」リーダーで、アヴァロニアの通行不能な山々を征服するために冒険しますが、チームが決裂し、一人の冒険を続けた結果、25年間行方不明になっていましたが…街の中央に、息子のサーチャーと並んで「銅像」があります。

・スプラット
 地下世界に生息する謎生物「リーパー」で、小さくて青いプニプニの形状をしています。当初はイーサンを襲ったものの、ひょんなことから友人になり、地下世界を案内します。

・カリスト・マル大統領(演- ルーシー・リュー/ 沢海 陽子)
 アヴァロニアの女性大統領。かつてクレイド探検隊におり、イェーガーとは元同僚。戦闘力と統率力に長けており、アヴァロニアへの献身も本作の探検隊のリーダーとして申し分ないです。

・イェーガーの妻/サーチャーの母/イーサンの祖母
 25年前にイェーガーが「失踪」し、悲しみにくれたものの、年下の旦那にプロポーズされて再婚しました。

・アヴァロニア
 四方を高い山に囲まれた国。山の標高が高すぎて峰を越えた者はおらず、「向こう側の世界」は謎のままです。「パンド」が電力源となり、街は一気に都市化が進みました。レトロな街並みとSF技術が混ざった不思議な世界で、主な交通手段はパンド電池を動力源とする電動飛行船です。

1. 3世代に渡る家族の冒険物語として、王道・シンプル・ベタだけど、安心して楽しめる。

 本作は、祖父・夫婦・子供の3世代に渡る家族の冒険物語です。率直に言うと、シンプルに面白かったです。王道でベタでしたが、安心して楽しめました。

 冒頭、絵本の「冒険の書」が開いて物語が始まります。そこで、「クレイド家の歌」が流れ、ミュージカル風の演出に。絵本らしく、時々絵柄が2Dになるところは歓声をあげたくなりました。

 次に、シネマトグラフみたいなモノクロの無声動画撮影機が登場し、映像の内容にナレーションで説明が入りますが、次第に画面がカラーになると、若きイェーガーとサーチャー達が冒険している様子が映されます。しかしチームは決裂し、父子は離別することに…開始からものの15分ほどでしっかりと展開を見せてくれるので、すんなりと物語に入り込めました。こういう導入の巧さは、流石ディズニーですね。

 また、最近の作品に多い「ポリコレ」はありました。ユニークだけど身勝手な祖父、実直だけど冒険を厭う父、コミカルでメカオタクで左利きの母、やんちゃで無鉄砲なゲイの息子、ハンディのある犬、人間とコミュニケーションしたがる地下世界の生命体など、ハッキリとした「個性」を持つキャラが多く登場しますが、そこまで気になりませんでした。

 ストーリーはとてもシンプルでした。親子が冒険する→途中で別れる→親は行方不明になり、数十年が経過→子は成長して自分の道を邁進する→その息子が冒険に興味を持つが、父は反対する→ハプニングが起きる→冒険に出かける→地下世界のドタバタ→親子3世代が絆を取り戻して帰る、という王道かつベタな展開なので、正直「既視感」はありますね。でもそれ故に、老若男女が安心して楽しめる作品だとも思います。

 最も、今はディズニー・ピクサーだけでなく、ドリームワークス、イルミネーション、ソニー・ピクチャーズなどのスタジオからも、クオリティーの高い作品が発表されており、アメリカ全体でのアニメ映画のレベルがかなり上がっています。そのため、その中で比較すると、本作は「飛び抜けてはいない」かもしれません。
 また、本作は『ソウルフル・ワールド』や『バズ・ライトイヤー』のように哲学や人生観を問う大人向けの内容ではないので、「何か物足りない」と思う方かもいるかもしれません。まぁ、子供が好きなニチアサやゴールデンタイム、NHKEテレアニメのレベルだと思えば、アリだと思います。最も、本作は『劇場版ドラえもん』が好きなら嵌りそうですね。

2. 映像表現やキャラデザインの個性的さは、相変わらずアニメトップクラス。

 本作も、いつものディズニー作品と変わらず、映像表現やキャラデザインの個性的さは、相変わらずアニメトップクラスでした。CGなどの映像表現の完成度としては『バズ・ライトイヤー』の方が高かったですが、本作もレベルは高かったです。 

 例えば、クレイド夫妻のダンスシーンは、『ラーヤと龍の王国』と同時上映された『あの頃をもう一度』のオマージュだと思います。それにしても、思春期の息子の前であれだけオープンな愛情表現をしているの凄いですね。
 また、地下世界はとてもカラフルで、地上世界との違いが如実に出ていました。地下世界に生息する謎クリーチャー達のフォルムはどれも奇怪で、一度見たら忘れられないくらいでした。
 何となく、アノマロカリス、アンモナイト、三葉虫、オパビニアなどの先カンブリア時代やカンブリア紀に生息していた古生物を彷彿とさせます。プニプニな触感のクリーチャーは小動物みたいで可愛かったですが、大きくて獰猛な触手系のクリーチャーは気持ち悪かったですね。後は、全体的に虫みたいなクリーチャー達が多いので、巨像恐怖症や集合体恐怖症の人は要注意です。
 不思議なのは、あの世界に昼夜はあったようなんですが、地下世界で日光や月光が届かないなら、なぜ明暗があるんだろう、光源は何だろうな~と思いました。まぁ、ここはそこまで気にすることでもないですが。

3. 物語のスピードが速く、まるでアトラクションのよう。

 本作は、物語のスピードが速く、また乗り物に乗るシーンが多いので、まるでアトラクションのようでした。ディズニーランドやシーにいるかのようやパーク体験が出来ました。本作の内容に近いのは、『センター・オブ・ジ・アース』と『海底二万マイル』ですね。本作オリジナルのアトラクションも是非造ってほしいです。

4. 色んな文学・アニメ・漫画からのオマージュがある。

 前述より、本作は「既視感がある」と言いましたが、これは色んな文学・アニメ・漫画からのオマージュを感じたからでしょう。(これ自体は悪いとは思いません。)
 まず、親子3世代の話なら、『カムカムエヴリバディ』や『ジョジョの奇妙な冒険』などを思い出します。家族の離別・拗らせ・再会・共闘・再生・それぞれの行く道など、流れとしては「よくあるもの」ですが、そこに普遍的なものを感じました。これは、彼らだけでの話はなく、私達にも通じるものがあると思いました。
 また、異世界トリップ冒険物語なら『宝島』・『センター・オブ・ジ・アース』・『海底二万里』・『インディー・ジョーンズ』・『トレジャー・プラネット』・『アトランティス』・『パイレーツ・オブ・カリビアン』・『アバター』・『天空の城ラピュタ』・『風の谷のナウシカ』・『ハウルの動く城』・『ワンピース ゾウ編』・『劇場版ドラえもんシリーズ』・『メイドインアビス』などを思い出します。(特に、レジェンド(犬)の鍵の下りは、まんま『パイレーツ・オブ・カリビアン』でしたね(笑)) 
 個性的すぎる家族のドタバタアドベンチャーコメディーなら、『インクレディブル・ファミリー』や『ミッチェル家とマシンの反乱』などを思い出します。
 古生物系パニック作品なら、『風の谷のナウシカ』・『ジュラシック・パーク/ワールド』に似ていますね。特に超大型オウムガイや、ブロントサウルスみたいな首が長い恐竜みたいなクリーチャーはこれですね。
 異生物との「交流」シーンは、『E.T.』と『アラジン』でした。イーサンとスプラットの出会いからの「僕を信じて」と、指と指をツンと触れさせるシーンは『バズ・ライトイヤー』でもあったなぁ。
 クリーチャーの奇妙なフォルムは、『ポケットモンスター』・『ファインディング・ニモ』(生き物達の群れが通過するとき、立体交差点になるシーン)・『アーロと少年』(恐竜みたいなやつが)・『インサイド・ヘッド』・『ソウルフル・ワールド』・『もやしもん』(スプラットが)・『もののけ姫』(何かタタリ神やシシ神様みたいなやついた)みたいでした。
 アヴァロニアの国の成り立ちとイェーガーの名前は、『進撃の巨人』でした。
 人間と他生物との「戦い」や「共存」を描くなら、『もののけ姫』・『アバター』・『ウルフウォーカー』でした。
 農業ネタや生態系のシステム、生命倫理の話は、『もやしもん』・『銀の匙』・『百姓貴族』を思い出します。本作、荒川弘先生のご感想が聞きたいなぁ。
 人体構造と免疫システムは、『はたらく細胞』でしたね。
 後は、探検隊の小型電動飛行船の横スライドは、まんま『AKIRA』のバイクスライドで草でした。

 ちなみに、イェーガーは実在の探検家を何人か彷彿とさせます。探検に行ったきり、行方不明になる人多いですよね。そういえば、サーチャーが持っていたコンパスがイェーガーだとわかるキーアイテムになりましたが、どうせなら、あれを使って探査したら良かったのになと思いました。まぁ、地下世界だと磁気嵐があって使えなくなりそうですが。

5. SDGsやZ世代の考えを反映し、「発想の転換」で乗り切ろうと伝えてくれる。

 前述より、本作は過去作からのオマージュがとても多いですが、一方で「SDGsやZ世代の考えを反映」した今どきの作品とも言えます。

 まず「SDGs」なら、「環境問題と持続可能な開発と共生とは何か」を問いかけています。
 今回の問題の原因はパンドの根っこにありました。当然、探検隊はそれを改善するために、試行錯誤を繰り返しますが、実はそれが「人間の都合のみを考えたやり方」だったと気づくのです。
 ここからは、植物と動物との関わり、生態系における生物の「立ち位置」、益虫と害虫の定義、農薬の役割について考えさせられます。
 パンドは、人間には「利用資源」でも、地下世界の生物達には「天敵」でした。しかし、パンドでそれら追い払いすぎると、元あった自然が無くなってしまいます。ここからは、自然や天然資源は「それぞれが命の一部」であり大切な役割がある、そこに利便性を見出すのは良いけれど、一方で、その価値観を相手に押し付けていないだろうか?という疑問を投げかけています。

  また、本作では、「Z世代」の価値観の一つとして、「真の悪者は『いない』んじゃないか」ということを挙げています。人間は、つい自分を肯定してくれるかどうか、また役立ってくれるかどうかで善悪や人間性を判断しがちですが、実際はそんな「単純」なものではなく、もっと「複雑」なんだよ、それを知るにはもっと人や出来事を「俯瞰的に」見る必要があるんだよ、という発想の転換の必要性を教えてくれました。
 家族や友人をカードゲームのキャラクターやポジションに喩えた点は、とても面白かったです。ゲームって、自分が「神の視点」でキャラを動かして進めるものが多いので、ある意味「俯瞰的な視点」に当てはまるのかもしれません。このカードゲームには、「冒険者」や「農民」など、様々な役割があります。勿論、それらの役割を全うすることは大事ですが、同時にそれだけに固執してもいけないということも教えてくれています。
 このように、現代は「多様性」が叫ばれる時代だからこそ、時には発想を転換し、価値観や考えに折り合いをつけることが大事なんですよね。本当に難しいことですが。

6. 実はこの世界そのものが「ストレンジ」なんだ!

 本作のタイトルは「ストレンジ・ワールド」です。一見すると、地上世界が「ノーマル」で、地下世界が「ストレンジ」なように思えますが、「実はどっちがどっちなんだろう?」と考えていました。

 作中では、「外の世界」と「内の世界」がはっきりと対比され、これらが目まぐるしく入れ替わりました。例えば、地下世界で人間と生物達によるマクロなバトルがあったと思ったら、次は狭い飛行艇内で人間同士がミクロなバトルを繰り広げ、それが収まったと思えば、また地下世界で人間と生物達によるマクロなバトルに巻き込まれたりと。このように、「世界はミクロだけどマクロ、マクロだけどミクロ」なのかもしれません。

 また、最後の「世界そのものが、ある大きな生命体だとしたら」という発想は意表を突かれました。ここは、「大きな目」がヒントになるんですが、実は彼らが住んでいた「世界」そのものが、「海の上を動く巨大亀」でした。つまり地上世界は「亀の外表」で、地下世界は「亀の体内」だったのです。(ここは、『ワンピース』のズニーシャを思い出しました。)
 だから、亀の体内(内臓)の調子が悪くなると、外表の環境も悪化する、勿論その逆もある、だから「目の前に見えているものだけが全てではない」、ということなんですね。

 そういえば、昔の「宇宙観」を表した絵で、「古代インドでは、世界は巨大な亀の甲羅に支えられた3頭の象が半球状の大地を支えている」というものがありましたが、本作を観てそれを思い出しました。
 ちなみに、この巨大亀を「実現」させようとする動きもあるようです。(詳細は、出典のカラパイアのサイトを参照。)

7. 現代的な多様性を反映しつつも、そこには「普遍的な価値観」がある。

 本作は、前述した現代的な多様性を反映しつつも、同時に「普遍的な価値観」も描いています。
 まず、本作は親子3世代の物語ですが、彼らが見ている地下世界の景色は、同じようで実は違います。

・祖父イェーガーは、自分の身を守るために、自分を襲いかかる生物全てを火炎放射器で攻撃します。彼は、自分を襲う奴は悪だと考えていますが、一歩引いてみると、彼の行動は「環境破壊」ではないかと思います。

・息子サーチャーは、発見したパンドを農作物にして、人々の生活に役立てました。「人間目線」で、「役に立つ」生き物を選んでいますが、これは「一方的な見方」とも言えます。

・孫イーサンは、上記2人よりももっと俯瞰的に環境を見ており、「この世界に悪いものはいない」と主張しました。生物達の生活に興味を示したことで、彼らの生き方を「人間目線で決めてはいけない」ことに気づきました。

 これこそが、「価値観や考え方の多様性」なのでしょう。

 また、親の願う生き方と、子が思い描く将来が乖離していたらどうなるか、という「普遍的な問題」も描いています。
 イェーガーとサーチャーは、街の英雄として讃えられて銅像になりましたた。でも、イーサンはそれを望んでいるのでしょうか?確かに、銅像になることは価値の現れかもしれません、でもそれだけが大事ですか?
 人間は、皆一人一人考えの違う個人なので、各々の意志は尊重されなければなりません。だから、子は親のアクセサリーではないし、思い通りにしようとコントロールしてはいけません。
 それでも、自分の願望に夢中になるあまり、家族に「執着」してウザがられたり、反対に「放置」してしまって忘れ去られそうになったり、「貴方のため」と称して理想や願望を押し付けてしまったり。人間はその度に過ちを犯します。お互い見ている世界が違うからこそ、あんなに反発し合っていますが、実は「似た者同士」なのかもしれません。(この辺の家族のウエットさやドロドロさは『リメンバー・ミー』や『ミラベルと魔法だらけの家』と被ります。) 
 本作も、「個人主義」を示しつつも、互いを理解する和解の物語ですが、これは現実でも難しい問題です。つまり、いつの時代にも、どこの世界にもある「普遍的な問題」かもしれません。

 昔は、「親なし主人公」が多かったディズニーアニメでしたが、今は「いる親との折り合い」を描くように変わっています。その時代毎にホットスポットになる問題は変化していきます。
 それにしても、ディズニーアニメって、いつも時代の「一歩先」を行っているように思います。もしかすると、スタッフの皆様は、「今の私達にはわからなくても、その先の世代には何か残せるかもしれない」、そんな思いで作品を創っているのかもしれません。
 このように、本作は、全体的に「道徳的」なメッセージが多いので、賛否両論あるようです。私はそこまで「押し付けがましい」とは思いませんでしたが。

 個人的に面白かったのは、キャラ同士のコミュニケーションで、ボディーランゲージが目立っていたことです。
 これ、手話ではないですが、クレイド家の会話や、イーサンとスプラットの「会話」にボディーランゲージが使われています。特に、後者の「会話」は、正に、「言葉が『通じない』者同士の非言語的コミュニケーション」だったので、とても印象に残りました。ここは今どきですね。

 ラストにて、本作はクレイド家の伝記絵本の中の「劇中劇」だったことがわかります。冒頭では、「冒険の書」の絵本が開いて物語が始まりましたが、ラストでは絵本が閉じ、「新たな冒険の書」となって物語は幕を閉じます。こういう演出も、とても良かったです。

8. 日本人のアニメーターさんが関わっている。

 本編終了後に流れる英語のスタッフクレジットに、「YOHEI KOIKE ヨーヘイ」とカタカナ併記された日本人のアニメーターさんが登場します。この方は、ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオでアニメーターをされています。この方は、「触手がたくさんあるモンスター」などを作画されたそうです。(詳細は、出典のURLをご参照のこと。)

 他にも、ディズニー・スタジオで活躍される日本人アニメーターさんはいらっしゃいますが、こういう方が増えてほしいなと思います。回り回って、日本のアニメに関わることがあるかもしれませんね。

追記: 最後に、毎度日本語吹き替え版にすると、「看板や手紙の表記まで日本語に訳される」んですが、ここはやっぱ違和感あります~ここまではしなくて良いと思います。

出典: 
・映画「ストレンジ・ワールド もうひとつの世界」公式サイト

※ヘッダーは公式サイトより引用。

・映画「ストレンジ・ワールド もうひとつの世界」公式パンフレット

・映画「ストレンジ・ワールド もうひとつの世界」Wikipediaページhttps://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%AC%E3%83%B3%E3%82%B8%E3%83%BB%E3%83%AF%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%83%89/%E3%82%82%E3%81%86%E3%81%B2%E3%81%A8%E3%81%A4%E3%81%AE%E4%B8%96%E7%95%8C

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