お父さんは疲れてない。
洗濯物を畳むのとトイレ掃除は子どもたちのしごとである。
トイレは2箇所あるのでそれぞれ分担してやってもらっている。掃除の仕方は一度説明したが、先日掃除後にトイレに入ってみると色々と不備が見つかったのでもう一度教えてあげるねと子どもたちを呼んだ。
本当は一度彼らのしごとにしたら手出し口出しはしないほうがいいのはわかっている。コビーさんの言うクリーンアンドグリーンである。自らがやっているという主体性を育まないとモチベーションも技術も向上は望めないからだ。口出しするということは、やらされている感を増長し結局イヤイヤやることにつながってしまう。
だからぼくもだいぶ逡巡したんだけれども、「一度じゃ覚えきれなかったと思うからもう一度だけ教えるね」とできるだけやさしい声で子どもたちに声をかけた。
「うんわかった」
返事だけは一流である。
「じゃあ来て」
「うんわかった」
来ない。
「はやく来て」
「今行く」
来ない。お前は蕎麦屋の出前か。
「早く来いって言ってるだろ!」
「わかったよもう」
もうはこっちのセリフである。こうしてお父さんの語気はどんどん強くなる一方なのであった。なんども怒鳴っているうちに兄弟仲睦まじく遊んでいた二人のひそひそ声のつもりの普通の音量の声が聞こえる。
「なんでお父さんあんなに怒ってるの」
「お父さんもいろいろ疲れてるんだよ」
兄貴がわかったようなことをいう。
いいや!お父さんが怒っているのは、ただ単にお前らがすぐに来ないからだ!
お父さんは疲れてない!
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