さいきななこ

ファンタジックなお話が好きです。お話を整理しました。(2022.5.28)

さいきななこ

ファンタジックなお話が好きです。お話を整理しました。(2022.5.28)

マガジン

  • 凛ちゃんシリーズ

    真っ直ぐな思い。入道雲。湿った風。照りつけるお日様。 懐かしい「ふるさと」がつまってます。 いろんな方と繋がった、特別な作品。 優しいさし絵つき。

  • 狐のおでん屋

    狐のおでん屋シリーズ

最近の記事

幸福論

幸福とは。 どこかの哲学者が言いました。 人間が幸福であると言えるのは、何かを欲する時と、作り出すときだけである。と。 或いは、宗教家が言いました。 神に祈りなさい。隣人を愛し分け与えなさい。天はあなたに恵みを与えます。それこそが幸せだ。と。 そんな難しいことを考えなくたって。 幸福などは非常に単純です。 例えば、散歩に出てみてください。 さすれば、きっと分かります。 さて。幸福とは。 春を待ちきれず芽を出したつくし。まるまる太ったのら猫のあくび。誰も気が付かないであ

    • メルヘン詩 三編

      満月 聖母が 微笑み 瞬く時の その 優しく 柔らかな 眼差しに似た 丸い 光 に 身を 委ねる時 私は 母の胎(はら)に 抱(いだ)かれ 護られた 頃を 想い出す それこそが 慈悲だ 無償の愛だ というように その 御姿(みすがた)を 見せるのみで 自身は 何者かと 語る事も なく この夜空を 雄大に 航(わた)る 珈琲館(コーヒーハウス)幻想劇 『一杯のコーヒーから 夢の花咲く こともある』 はるか昔の流行歌を 口ずさみながら 今日の午後を メルヘンに過ご

      • きつねの木の葉便り 総集編

        木の葉は赤や黄色に染まって、辺りには金木犀の甘い匂い。すっかり秋めいてきちまったなあ。 今年もラーメン屋は店じまい。そろそろ、おでんの準備を始めるとしよう。 秋ってのは、人を感傷的にさせる。やれ、男と上手くいかねえでめそめそしてるお嬢さん。やれ、会社で上司がうるさい、部下は口答えする、と、ぶちぶち愚痴るおっちゃん。今日なんか、若い女の子が携帯でもって友だち長電話でぐずぐずと。折角のラーメンが伸びちまうってんだよ、全く! この季節は、みんな、湿っぽくっていけねえ。人の悩みを

        • すずめの親子

          空から近いところに、電線がたらんと張られていました。そこに、親子すずめが並んでとまっていました。 お日様が西へ傾き始めました。もうじきに日の暮れです。 急に、涼しい風がヒューっと吹きました。 風に揺れて、電線もヒューウと鳴りました。 すると、下の白いおうちの屋根から、ぷーんといい匂いがのぼってきました。 それは、木の実と葉っぱをいっぺんにあつめたような匂いでした。 すずめの坊は、おかあさんすずめにききました。 「おかあちゃん。おかあちゃん。これは何が香っているの。」 「こ

        マガジン

        • 凛ちゃんシリーズ
          7本
        • 狐のおでん屋
          8本

        記事

          お星さまシンドローム

          夕暮れ時 いちばん星が キラリと 輝きはじめました そろそろ 魔法のじゅうたんが (もしかしたら ピーターパンかもしれませんが) 遠い地平線から 迎えにきてくれる時間です 空をぐるりと 偵察したら 星の王子さま が住む 星へと 到着します そこでは あちらこちらで 『てつがく』が 生まれています バラの花は その色あせるときの哀しさを伝えるし きつねは 世界のひろさを教えます あなたは あなたの生まれた意味を それとなく 知るのでしょうね さてさて ひとしきり

          お星さまシンドローム

          おみおつけ

          昨晩、お鍋の中に水を張り、昆布を一切れ入れて寝かしてあったお出汁を火にかける。これが私の朝一番の大切な「儀式」である。 ゆっくりお出汁を煮出す間に、具の支度も並行して行う。 今日は、3分の1本になった大根と油あげ、いんげんのおみおつけにする。 私は、おみおつけの具には、新しく買った野菜たちより、古株の野菜たちに出演して頂く。冷蔵庫の中で、ちょっと寂しげで新入り達に遠慮気味になっている、余りの野菜たちにもう一度、ステージに立って貰おう。そのステージというのが、おみおつけであ

          凛と、きつねと、夏の夜の夢。

          日本の何処かのある片田舎に、林に囲まれた、中規模の稲荷神社がある。林も含めた一帯が、この神社の土地だった。この稲荷神社は、その土地の人々から、稲作の豊穣を願い、古くから大切に守られてきた。 神社の境内の林の中に、木が全く生えない場所がある。そこはちょっとした広場になっており、夜な夜な、狐のラーメン屋が現われるとかどうとか.......この界隈では、まことしやかに噂されている。 さて。草木も眠る丑三つ時。境内の林から、ほんのり灯りが漏れていた。 と、こんな夜更けに、1人の

          凛と、きつねと、夏の夜の夢。

          凛と、きつねと、夏の思い出。最終回

          プロローグ。 じいちゃんとばあちゃんの家から、10分走った頃だろうか。私の乗った車は、手を伸ばせば田んぼに突っ込んでしまいそうな、でも、車が通るには十分な幅がある。そんなあぜ道を走っていた。 タイヤから伝わる振動が、一層強く私たちの体を揺らした時、窓の外から、田んぼをまたいだ先に、林が見えた。今走っている道が、ぐるっと回り込む。道なりに沿って車がカーブすると、それに従って景色も動き、やがて大きな赤い鳥居が見えた。昨日の、キツネの神さまの神社だ。 助手席のお母さんが、神社

          凛と、きつねと、夏の思い出。最終回

          凛と、きつねと、夏の思い出。5

          次の日の朝、お父さんとお母さんが迎えに、玄関にやって来た。 私は、起きてからそわそわしていた。 向かいに来るであろう二人にきちんと謝って、それから、私はそれでも絵を描きたいこと。お父さんやお母さんにも、その思いを知って欲しいこと。自分の考えをちゃんと伝えなきゃ、と心の準備をしていた。 二人が来る直前には、しっかりと決意は出来ている筈だった。 しかし、土間にぎゅうぎゅうになって、並んで立っている二人を目の前にして、昨日の自分の行いを思い出し、きまりが悪くなった。二人とは目も

          凛と、きつねと、夏の思い出。5

          凛と、きつねと、夏の思い出。4

          キツネの神さまの言葉に、背中を押された私は、おいなりさんの林を出て、田んぼ道を走り、じいちゃんとばあちゃんの家へと急いだ。 田舎の道は、東京とは違う。田んぼ道に電灯はあるけれど、数は少ない。日が落ちてくると薄暗くって、足元を確認するのもままならない。とてつもなく不気味だ。暗闇の先に何が居るのか、なんて、変に勘ぐってしまう。心細くなって、めそめそしてきてしまった。 「怖い.....どうしよう.......じいちゃん.......ばあちゃん.......」 ガァーガァー。何

          凛と、きつねと、夏の思い出。4

          凛と、きつねと、夏の思い出。3

          屋台の中は、思っているより広かった。横に両手を伸ばしても、まだ余裕があるくらい、一人では広すぎる横長のベンチに、私は音を立てないように座った。 キツネの神さまは、カウンターの向こうで、ぬるくてすまねえな、と、麦茶を一杯そそいでくれた。麦茶が入った青いびいどろのコップを、とん、と置くと、横にみぞれ飴も添えて出してくれた。 広場に吹き抜ける風が、昼間と違い、優しくて涼しい。屋台の入口から裏へと抜けていく風に当たりながら、麦茶を一口飲んで、しばらく飴を口に含むと、胸のざわめきが

          凛と、きつねと、夏の思い出。3

          凛と、きつねと、夏の思い出。2

          家を飛び出してから、ずいぶん時間が経った。昼間は町の図書館で過ごして、閉まっちゃったからまた歩いて… とうとう行き場をなくした。丁度たどり着いた公園で、持っていたスケッチブックを膝に置いてベンチに疲れた身体を沈ませた。 (ゆーうやけこやけで ひがくれてー やーまのおてらの かねがなるー) 5時のチャイムが、辺りに鳴り響く。 顔を上げて周りをみてみる。低学年の子たちが、かけっこしながら、もう少し大人の子は、お友達と歌いながら、みんなお歌のとおりに、おててをつないで、それぞれの

          凛と、きつねと、夏の思い出。2

          凛と、きつねと、夏の思い出。

          (前書き) この物語の主人公について。 この女の子は、一体、どんな女の子なのでしょう。この子と同じような気持ちや想い、感性は、きっと、大人の皆さんにも、ある筈です。皆さんの感性で、この女の子がどんな子なのか、ぜひともイメージを広げてください。 ━━━━━━━━━━━━━━━ 私と私のお母さんは、仲が悪い。 私は、絵を描くのが好きなのだけれど、そんな私を見て、お母さんは、 「絵ばっか描いてないで、きちんとお勉強なさい!!!」 いつも怒ってばかりいる。 「ほら、凛。お

          凛と、きつねと、夏の思い出。

          続、きつねのおでん屋 最終回

          それから━━━━━━━━━。 あの男は、本当に手紙を出してくれた。外国人の服が洒落てるだの、二人で旅行した先の東京のカフェーで飲んだ珈琲が美味いだの、決まってどうって事ない内容だったがな。まあ、あいつらが元気にしているなら、俺としても気が晴れるってもんよ。そう思いながら、あいつからの手紙を読んでいたんだ。 しかし、昭和に入ると、戦争の火種がどんどんと大きくなってな。 アメリカ軍ってのは賢い奴らさ。日本を征服した後の事まで考えてか、日本人の心の寄り所である神社には、爆弾を落

          続、きつねのおでん屋 最終回

          続、きつねのおでん屋 5

          あの夜から、何日か経って、またあの男が俺の店へやってきた。暖簾をくぐるなり、俺の真正面に座った男はやけに大人しかった。いつも賑やかな奴なのにおかしいと思った。変なのは、態度だけじゃない。博打に行った後のように服が乱れた様子もなければ、女と遊んだ後の香の匂いもしなかった。 「お前さん、今日は遊んで来なかったのかい?」 俺が何かたずねる度に、いつもなら茶化してくるところを、男は、ああ、と一言頷いたきりじっと黙っている。やっぱり変だと思った。 黒く大きな瞳は、遠くを見つめてい

          続、きつねのおでん屋 5

          続、きつねのおでん屋 4

          「おうおうおうおうおうっ!手前!俺たちを騙したやがなぁ!」 「なんだ。お前さんたち、もう質屋に行ってきたのか。一番近い質屋は隣町にある筈だから、俺たちが逃げる間の時間稼ぎになると思っていたのに。」 取り囲んでいる奴らの1人が詰め寄ったのを皮切りに、束になったように口々に怒声を浴びせる。 しかし、当の男は兄貴分が突っかかってきても、手を袖口に突っ込み、余裕の返答した。 そんな男に、ヤクザもんたちは、更に詰め寄る。 「ざぁんねんだったなあ!色男さんよぉ!隣町まで行く前に、

          続、きつねのおでん屋 4