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【新社長インタビュー】地域新聞社の「アセット」とは?

2024 年2月7日開催の取締役会において、地域新聞社の代表取締役社⻑の交代が決議されました。当社の歴史の中で、社長が社外から就任するのは初めてのこと。社員としては正直なところ戸惑いもある中、細谷新社長の現在の心境やプライベートのこと、そして、今後の地域新聞社について聞いてみました。「社長と従業員というのは、上下関係ではなくて役割の違いです。なので、社長ではなく『細谷さん』と呼んでください」とのこと。気さくに何でも答えてくれました。

(聞き手・編集部 広田みずほ)

代表取締役社⻑ 細谷 佳津年(ほそや かつとし)
略歴

1990 年 4 月 国際興業㈱ 入社
2002 年 9 月 ㈱ギャガ・コミュニケーションズ
(現 ギャガ㈱)入社
2003 年 6 月 生駒シービー・リチャードエリス
㈱(現 シービーアールイー㈱)入社
2006 年 4 月 同社 財務経理部⻑
2009 年 9 月 ㈱エー・ディー・ワークス 入社
2011 年 6 月 同社 取締役 CFO 兼 経営管理部⻑
2014 年 6 月 同社 常務取締役CFO 兼 経営管理部⻑
2018 年 7 月 同社 常務取締役CFO
兼 エクイティ・アドバイザリー室⻑
2020 年 4 月 ㈱ADワークスグループ 常務取締役CFO
2022 年 3 月 同社 専務取締役CFO(現任)
(重要な兼職の状況)
㈱エンジェル・トーチ 代表取締役社⻑
A.D.Works USA,Inc. Director CFO, Secretary

1965 年 12 月 16 日生まれ。完全なる猫派。動物が好きで、獣医になろうとしていたことも。ペットは猫の蘭丸(女の子)。

ヒョウ柄が美しい蘭丸。性格はちょっと猛獣チック

地域新聞社の歩み
1984年8月  有限会社八千代地域新聞社を設立(創業者:近間之文)
1987年5月  業容拡大のため有限会社八千代地域新聞社を株式会社八千代地域新聞社に組織変更
1988年7月  商号を株式会社地域新聞社に変更
2007年10月 大証ヘラクレス(現東証グロース)に上場
2019年11月 代表取締役社長 近間 之文が退任。新代表取締役社長に山田 旬が就任
2024年2月   代表取締役社長 山田 旬が退任。新代表取締役社長に細谷 佳津年が就任

細谷さんってどんな人?

細谷さんの話に興味津々な社員が飛び入りでインタビューに同席しても快く歓迎してくれました

――新社長に就任されて2週間ほど(※インタビュー時)経ちましたけれども、今率直にどんなお気持ちですか?

もう宝の山のようなイメージを持って来たので、それが本当に毎日確認できていてうれしいですね。すごいワクワクしてます。あと皆さん思ったより優しいので、それもすごくうれしいですよ。

――本当ですか(笑)。もっと反発があると思いましたか?

思いますよね。まず自分は株主の立場で、長く務めてきた山田社長がいらっしゃって、皆さんはそのいきさつも含めて分からないことが多いと思うんですね。だから距離を置かれるのは覚悟して来ました。

――実際はどうですか?

協力的ですよね。特に本部長陣や幹部の方が一生懸命社員の皆さんに、今回の社長交代についてのご説明やケアをされている。松川さん(営業統括 取締役)や江澤さん(管理本部 本部長)がよく「地域新聞社の『人』が好きです」とおっしゃっていて、その通りですねという実感です。

――そうですね、私も好きです。最初に細谷さんがどんな方なのかを知りたいのでパーソナルな質問をさせていただきますが、プロフィルによると群馬ご出身なんですよね?

それが間違いなんです。実は東京生まれで…。

――え! 違うんですか(笑)。

東京出身なんですけど、3歳から高校卒業まではずっと群馬の伊勢崎にいて、群馬県大好きなんですよ。だから群馬県人として振る舞ってるんです。

――そうだったんですね。趣味などはありますか?

音楽ですかね。クラシックが好きで、先日の「ちいき新聞」に載っていたピアニストの角野隼人さんのインタビュー記事も読みました。

オーストリア・ウィーンの「ムジークフェラインザール(楽友協会大ホール)」にて奥さまと。新年にここでニューイヤーコンサートを催し、全世界に中継されるため、クラシック音楽ファンの間ではつとに有名な場所!

――ご自分で楽器を演奏されたりも?

全然人前で演奏するレベルじゃないのですが、ピアノをかじったことがあります。海外旅行に行く時には、場所より先に現地のオペラ劇場とかオーケストラのプログラムから探すんです。「このホールの、この指揮者を見たい」というのがまずあって、そこに日程と場所を合わせていく感じです。

シチリア島のオペラ劇場にて。ここでオペラを観るためにイタリアまで行ったのにも関わらず、当日劇場スタッフのストライキで上演されなくなってしまい、放心している細谷さん

――(体育会系じゃない社長は初めてだ…)それはだいぶお好きですね。では息抜きは音楽を聴くことですか?

あとはテレビでスポーツ観戦をしたり、映画やYouTubeを見たりですかね。

――YouTube、どんなものを見るんですか?

「ちいき新聞TV」(地域新聞社のYouTubeチャンネル)も見ましたよ。

――ありがとうございます(笑)。

千葉の良いものを紹介して、全国に販路を広げられたらいいですよね。当社では「ちいきの逸品」というECサイトもやっていますが、eコマースを個人が導入しようとすると費用も期間もかかります。世の中にはECで販売したいお店があって、ユーザーを増やしたいECのプラットフォームがある。そこをつなげるといった意味でも、「ちいき新聞」ってすごく魅力的なんですよね。私、そういうことを考えるとすごくワクワクしちゃいます。

唯一無二の「アセット」とその生かし方

――細谷さんは当社には希少な「アセット(企業資産)」があるとおっしゃっていますよね。社員の中では今年の流行語大賞はアセットだろうというくらい最近よく聞いているキーワードですが、細谷さんから見た地域新聞社のアセットを具体的に教えていただけますか?

当社のアセットは「唯一無二」なんですよ。他にはないし、他はもう真似できないところまで来ているというのがその価値をすごく高めている。群馬県って人口約190万人なんですよ。「ちいき新聞」がカバーしているのは170万世帯ですよね。群馬県の全人口ぐらいの世帯数に、目で見える紙媒体が毎週1回配られる。各世帯に2人いるとしたら340万人ですよね。配るために約2,500人のポスメイト(配布員)さんがいて、そのインフラを維持する仕組みがまずこの会社にはありますね。さらに、記事を書く人がいて、デザインする人がいて、支社があって、営業がいます。千葉県ではものすごく信用のある会社です。こういうのをひっくるめて全部アセットだと思っています。

――私は地域新聞社に16年以上いるのでそれが当たり前になってしまっていて、もちろん価値があることは重々承知しているんですけど、正直生かし方がいまいち分かっていないかもしれません。

皆さんは「ちいき新聞」の配布エリア内に住んでいる人に地域の役立つ情報を届けたいと思っていますよね。それはとても大事です。ただ、アセットの活用法としてはそれだけではなくて、先ほどお話したように、「千葉で作っているものなんだけれど、もしかしたら全国の人に買ってもらえるかもしれない」という可能性がある時には、全国をプラットフォームとしている人たちと組めばいいわけです。その瞬間に、湖の中から、湖の外のお客さんにつなげることができるはずなんですよね。今のは売り主に対するアセット活用の話です。今度はプラットフォーム側の話ですが、プラットフォームの価値はユーザー数で決まります。ユーザーを獲得しようとする時に、大体今まではテレビCMやネット広告を打ちますよね。ところがこの5年間くらいで広告のCVR(コンバージョン率)は大きく下がっています。特にネット広告は競合があふれかえっていて、見ない人も増えているので、効率が悪くなっていますね。そういった現状とトレードオフの関係で、紙媒体の二次元コードを経由してユーザーになる人が逆に増えている。二次元コードを入り口にしてWEBの世界のユーザーになっていくというルートは、今すごく見直されています。でもそういった広告だけでは、「ちいき新聞」が面白くなくなってしまいますよね。そこを編集部や制作部の人たちがこだわって、地域の人の役に立つ面白い記事を届けようとしている。このベースがあって初めて、インフラとアセットが維持されるわけです。

――今までの当社ですと、他社とアライアンスを組むことにはどちらかと言うと消極的だった印象がありました。ですが今後は積極的にやっていきたいお考えということですよね。

そうですね、「補完」ですよね。例えば同じようなモデルのところと組んでもせいぜい1+1は2ですが、1+1が3になる組み方なら良いと思うんですよ。地域の中で固まって、地域の中で完結しない方がいいですよね。地域密着というのはすごい武器だし、参入障壁が高いのだから、いくら組んでもうちにとって不利益はないポジションにいます。まずは自分たちに実入りがあるかというよりは、組んだ方に対して先に企業価値を上げてくださいというマインドで大丈夫だと思います。当社で大切にしている「利他の精神」って、まさにそういうことですよね。スタートアップの人たちのサービスも、熱心に聞くといい。結果的には、他社と組むことでうちのアセットが輝くタイミングになったということです。

――口では「利他の精神」と言いながら、利己的に小さなことを気にして、もったいないことをしていたかもしれません。私たちの経営理念の本質に立ち返ることで可能性が広がっていくと考えると、楽しみだなと思います。

すごい可能性だと思いますよ。「時価総額40億」の上場維持基準クリアっていうのも、皆さんインプットされてますか?

――そうですね。アセットの次に流行語候補だと思います(笑)。

あれ失敗したと思っていて私。40億って単に上場維持基準の通過点なので、当社のアセットって多分1,000億くらいですよ。40億がみんなの頭にあると、小さすぎて嫌だなって最近思っていて。

――あぁそっちの意味でですか! 正直「本当ですか」って思いましたけど…。今のところ40億でもまだ階段が見えていないというか、雲をつかむような感覚です。時価総額40億は通過点とのことですが、通過したらその先には何がありますか。

今当社の皆さんは上場メリットを実感できていないかもしれませんが、それは本来上場するとできるはずのことと現状に大きなギャップがあるからです。上場メリットを享受できるラインは最低でも時価総額130億以上、理想は300億以上。当社は今利益だけを目指すのではなくて、時価総額を上げて利益以外の手法で資金を調達することを考えないといけないステージだと思っています。資金調達ができればいろんな投資もできます。正直こんなことを言うともう本当に大ひんしゅくを買ってしまうんですけど(笑)、誤解を恐れずに言えば、投資もしない黒字よりは果敢に将来に向けた投資を実行している赤字の方がいい。投資家は赤字の中身を見るんです。だから今のビジネスをそのまま延長して、新しい芽が見えない状態で赤字というのは全く良くない。ですが、将来への種を植えている、あるいはこれまでに投資したものの刈り取りの時期で、いろんなものがだんだん芽生えて、一部はつぼみになっているし、一部は双葉になっている。そのための投資をしているから当期の損益は赤字なんですっていう状態は評価するんです、時価総額という面で。

――チャレンジし、成長し続けられる会社になるということですね。そもそも創業者の近間さんはなぜ上場という道を選んだのだろうというのも最近よく考えていたのですが、なんとなくその答えともつながってくる気がします。

会社はみんな非上場会社からスタートして、あるタイミングで上場するかしないか、ここが分かれ道になります。創業経営者は、リタイアする時に上場できていなかったら、誰かに会社を売るしかありません。M&Aなどで会社を売り渡す時に、今でも「身売り」というものすごく悪い表現が使われますが、日本の経営者にとって誰かに会社を売るということは、やはり自分の家族を売ってしまうような後ろめたさが多分ありますよね。特定の誰かの会社になってしまったら、「地域新聞社らしさ」が本当に担保できるかどうかも含めて、全部不透明です。でも上場すれば特定の誰かのものではないので、当社らしさは私たちが自主的に作っていけるわけです。いろいろな理由があったでしょうが、やはり皆さんのことを考えてというのはあったのではないでしょうか。上場しないでいくという選択肢もあった中、上場を選んだ。一度上場した会社が非上場に戻るのもまた同じく、誰かの会社になるということなんですよね。

今の課題と、これから私たちにできること

会社のこと、社員のことなどを細かくノートにまとめている細谷さん

――「地域新聞社らしさ」は継承していきたいですが、赤字は怖いし、どうしても目先の利益にとらわれてしまいます。私は上場前からこの会社にいますが、会社は長く存続していく上で必要なステージを進んできたのに、自分自身はあまり考え方をシフトできていなかったな…という気付きが今ありました。率直に当社の課題はどんなところだと思いますか。

ここまで私の話を聞いていただいて、また、これから対話をしていく中で、まず「なるほど」なのか、それとも「細谷さんの言ってることはやっぱり絵空事だよね」なのか、「変わらず、今のままがいい」なのか、多分いろんな感情を持つと思います。もし「なるほど」と思ったとして、「じゃあ少しそこに考えを向けてみようか」というふうに皆さんが思えなかったらそれが課題です。ただね、皆さんの場合は何とかしなきゃっていう気持ちは持ってらっしゃると感じていて、そこに賭けるに足る案が多分、今までは見えてなかっただけだと思うんです。

――例えば、何ができるでしょうか?

利益をあげるという点では既存のビジネスがありますよね。一生懸命やられていますから、そこに口出しをするつもりはないんですよ。一方で時価総額を上げるということは、投資家・株主に地域新聞社のファンになってもらうということです。ブランディングとか広報とか、会社のファン作りのための仕掛けが必要だと思っています。例えば、当社の就業規則を見ると、女性が働きやすい制度がありますね。育休を何回取っても違和感なく復帰できる環境があって、有休も数時間単位で取得できて、女性の管理職の数も増えている。皆さん当たり前と思っているから全然自慢しないけれど、いいところはきちんとアピールすべきです。

――それはこのnoteでもどんどん発信していければと思います。

それから、投資家は何に魅力を感じるかというと、どれだけ従業員が生き生きと働いているか。人材を「資本」として捉え、その価値を最大限に引き出すことで中長期的な企業価値向上につなげる経営のあり方を「人的資本経営」と言いますが、僕は人的資本経営って「会社のために自分を犠牲にしてませんか」という質問に対して、「いや、私は全然そんなことありません」と答えられるかどうかだと思うんですね。だから僕は皆さんに「何のために地域新聞社で働くんですか」というメッセージを投げかけています。大抵は「生活のため」といった理由が浮かぶじゃないですか。でも、有限の人生、働かなくてもいいぐらいお金があれば他のことをやりたいのに仕方なく働いてるとしたら、それは自分の時間を犠牲にして働いてるのと同じなんですよ。僕はよく会社を演劇のステージに例えます。皆さんそれぞれが役者さんとして、このステージを使って自己実現してほしい。投資家は今、ワクワク働いている状態からイノベーションが起こると考えているので、そこをきちんと開示すると企業価値は上がるのです。

――最後に、細谷さんが仕事と人生において一番大切にしていることは何ですか?

「自己実現が日本社会やみんなのためになっているという状態に一致させたい」ということですね。グローバルで見た時に、日本の会社と従業員のエンゲージメントはとても低い。だからこそ「なぜ地域新聞社で働いているんですか?」という問いに対して、皆さんが「地域新聞社で働いている自分が私は大好きなんです」と言えるように、いろんなことをしていきたいと思っています。

――私も自分にできることをしていきたいと思います。細谷さん、ありがとうございました!

飛び入りで同席した根本・稲村の感想

根本(事業開発部)
「ある意味で『家族経営』のような当社において、外からの視点を持った細谷さんのお話はとても新鮮で勉強になりました。お話の中で印象的だった言葉が2つあります。1つ目は『会社は社員が自己実現を目指して輝く演劇のステージ』。この考え方は近間さんがおっしゃっていた『会社は社員の道具である』という言葉と通ずるなぁと思いました。もう1つは『もし変わろうとしないなら、それが課題』。変わることと、変わらずにいることを自分の中にしっかり持つことが大事だと思いました。」

稲村(事業開発部「ちいきの逸品」担当)
「突然の社長交代の発表をどう受け止めれば良いか悩んでいたところ、カメラマンとしてインタビューに同席させてもらえることに!(ありがとうございます!)結果、写真は広田さんが鋭い眼差しで細谷さんを見つめる(たまたま)1枚しか撮りませんでしたが(笑)。私も地域新聞社の魅力をたくさん知っている、同じなんだなと思いました。変化を前向きに捉え、輝けるよう頑張ります✨」

編集後記

創業者として上場を果たし、大きな存在だった近間さん。そのバトンを受け取った二代目社長・山田さんと共に、自分たちなりのミッション・パーパスを模索した第二創業期。そして迎えた新たなステージ。近間さんがよく言っていた「必要、必然」というフレーズが思い出されました。今起こるべくして起きていることに対して、現在地を正しく理解し、最善を尽くすのみ。「人の役に立つ」という経営理念は変わりません。まずは当社の持っている価値を私たち自身が再認識することから始め、一人一人が会社というステージで思いっきり楽しめば、きっと素晴らしい未来が待っていると感じました。

インタビュー/文/撮影:編集部 広田みずほ(X ※旧Twitter / Web記事 )

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