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関係人口創出に有効なイベント実施ノウハウ3選:山形県小国町 × NIPPON TABERU TIMES

「地域おこしの事例はたくさんあるけど、分かりやすくまとめている場所はないよね......」
そんな声から生まれた、地域リノベーションラボによる事例調査企画。地方創生に興味がある人、地域おこしに取り組みたいけど何から始めたらいいか分からない人のための事例集の作成を目指す。

合同会社NIPPON TABERU TIMES(通称食べタイ)は、山形県小国町で関係人口創出、空き家活用、移住促進などさまざまな事業を実施してきた。

調査期間は2022年6月17〜21日。合同会社NIPPON TABERU TIMES代表である田丸さくらを始め、食べタイによる様々な事業の関係者や移住者へインタビューを行った。山形県小国町で食べタイがどのように活動してきたか、どのような変化をもたらしたかを調査した。

竹村亜里沙(早稲田大学2年、TABETAI提携ライター)
今回初めて小国町を訪れた新米学生ライター。
小国町や食べタイについて知って日が浅いからこその、
外部からの客観的な視点を届ける。

小国町とは?

小国町役場HPより

新潟県との県境に位置する人口7000人ほどの町。朝日連峰、飯豊連峰に囲まれ、面積は東京23区程度あるが、その90%がブナなどを中心とした広葉樹の森となっている。

また、冬は全国有数の豪雪地帯となる。この町を象徴するブナと雪から、町全体を「白い森」と表現し町おこしに取り組む。

目的

小国町のファン、協働人口を増やす。
※山形県小国町では、小国町に住んでいるかどうかに関わらず、小国町やまちづくりに関わる人々を「協働人口」と呼んでいる。
小国町人口ビジョンより。

活動内容

2017年:有志の学生で2度のツアーを開催(自主事業)

2018年:山形県小国町との連携事業開始
小国町現地ツアーを3回と首都圏交流イベントを1回実施

2019年:首都圏イベントを1回、現地ツアーを2度企画も台風での中止もあり1回実施。

2020年:オンラインイベントを3回、現地ツアーを2回実施。首都圏交流オンラインイベントを1回実施。

2021年:オンラインイベントを2回、現地ツアーを2回、首都圏交流オンラインイベントを1回実施。

首都圏イベント:Tregionという赤坂にある東北バルで小国町の食材を使用したパーティーやオンラインで小国町と繋いだ様々なコラボイベントを指す。

食べタイによる山形県小国町に関わる記事まとめ

成果

※複数回参加された方は重複カウント

総集客数:185名
<内訳>
現地ツアー:61名
首都圏イベント:36名
オンラインイベント:88名

イベント後アンケートによると、ツアーにおいては高い満足率とリピート希望率を得られた。また首都圏イベント参加者の多くがその後の現地イベントに参加するなど実際に訪問に至る。

ツアーからの移住者:1名
おぐにマルチワーク協同組合(おぐマル)代表 吉田悠斗さん

1ヶ月以上の在住者:3名

イベント実施ノウハウ

お話をうかがった人:
高橋俊典(たかはし・としのり)さん
小国町教育委員会 高校魅力化推進室長。食べタイが小国町に関わり始めた頃から関わる。ツアーを始めとした事業委託やマルチワーカー創出を役所職員の立場から支える

山口ひとみ(やまぐち・ひとみ)さん
結婚を機に小国町へ移住した。農泊ツアーの宿泊先となっていたり、観光ガイド講習にも参加したり、旬彩工房が食べタイの記事となっていたりする。

田丸さくら(たまる・さくら)さん
合同会社NIPPON TABERU TIMES代表。大学時代から精力的に日本全国に足を運び、生産者の取材や地域PR事業を実施してきた。

①人の巻き込み方

行政の巻き込み方

  • イベントを実施して町に人を連れてきたという実績をつくる

  • 町が必要としていることを提供する

初期の食べタイは学生有志のボランティア団体だったとのことですが、なぜ予算を組んで正式に事業委託するようになったのか。

高橋さん:私が役場で移住担当になった時に、食べタイがツアーで20人ほど人を連れてきてくれた。しかし、それが食べタイ費用と自己負担から成り立っていることを知った時に率直に続けられないだろうなと思った。だったら継続させるために事業にしよう! と思ったことがきっかけで事業委託に至った。

地元の人の巻き込み方

  • 積極的な姿勢から信頼獲得

なぜ食べタイと一緒にやろうと思ったか。

山口さん:人はどのようなものかイメージできないと反対する。食べタイは「こういうことができます」「このようにやったらいい」とイメージしてもらえるように伝える力、企画がうまい。だから協力してもらえて、町が契約できる学生団体となれた。

毎月のように小国町に来てくれるし、話していても想いが伝わる。行動力があり、スピーディー。なかなか、ツアーを企画して実際に人を町外から連れてこれる団体はなかなかない。食べタイをきっかけにさまざまな事業が小国町で始まっていった印象。

学生に限らず若い人がやっていることを大人は応援できる。それが世の常だと思う。
遠慮しすぎないでそこからどう動けるかが差な気がする。

②有効なイベントの作り方

イベントを行う上で意識していることは?

  • まず魅力を満喫する

  • イベントでしか味わえない経験を楽しむ

行政の視点

高橋さん:自治体と学生が連携して行うイベントの中では、アウトプットを求める「課題解決型」が多いと思うが、それでは関係人口にはなってくれないと思う。

おもてなしをして楽しんでもらった時に関係人口になるのではという仮説を元に、おいしいものを食べてもらうなど、まず小国町を満喫してもらうことを意識している。
地鶏ラーメンとどらやきとか(笑)。小国町はおいしい食べ物で溢れている。

イベント企画団体(外部)の視点

田丸さん:ただの観光ではなく、小国町の豊かな食や温かい地元の人との関わりを体験してもらえるツアーの企画を意識している。地域と繋がりのない状態では触れることが難しい地域に根付いた文化や暮らしに触れることができると、満足度、リピート率が高い。

首都圏イベントに関しては、現地ツアーに比べて気軽に参加できることが魅力。現地で行われるイベント告知や小国町の良さを思い出せる企画実施から、実際に訪問するきっかけになるようにイベントを工夫している。

協働人口を絶やさない。この目標の実現のためにも、学生時代に訪問したけど疎遠になってしまっている人やしばらく訪問できていない人を再び町に繋げていきたい。


③集客方法

人はどのように集めた? 友人メイン? SNS?

田丸さん:最初は友達(運営メンバーと同じゼミ、TABETAIメンバー、その友達など)がメインだった。現在も中心ではあるが、TwitterやFacebookから参加してくれる人も一定数いる。SNSの中だと思いのほかTwitterからの参加率が高い。

PRの工夫は?

島根県海士町とコラボイベントを行ったときには、海士町側からもSNS(主にTwitter)で発信してもらった。また、協力隊ネットワーク、町関係の情報が乗るJOIN、TABETAIの過去関係者など、知っているコミュニティの全てに告知をするようにしている。

100件以上の申し込みがあったイベントでは、リツイートしてくれた参加者の中から抽選でプレゼントを送る企画を行ったりと新しいチャレンジも。

町民の期待

食べタイの将来に期待することは?

高橋さん:コロナでイベントがオンラインになってしまっていたので、リアルに人を連れてきてほしい。そして来た子がリピーターになってくれると良いなと思う。

学生が来てくれるということは、インターネット以上に若い人の考えを知ることができて、新しいインプットをもたらしてくれる。継続的にあるといいなと思うし、地元の人が望んでいることでもあると思う。

山口さん:これまでの延長線上で構わない。
今まで通り学生が小国町を知るきっかけの窓口になっていて欲しい。やっと若者がチャレンジする文化が根付いてきたように感じるし、大人はいつでもやりたいことがある人はできるだけ応援したい、声がかかったから協力しようという気持ちでいる。今後も頑張ってもらいたい。


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地域リノベーションラボとは?
合同会社NIPPON TABERU TIMESの前身である団体が2015年に開設され、2018年より小国町と連携しイベント運営や生産者さんへの取材、地域おこしに取り組んできた。
地域PR事業をメインにスタートしたが、PRの前には町の受け入れ体制が必要! と、現在ではシェアハウス運営や移住者への仕事紹介など、まちづくりにも貢献する。
そのノウハウが全国の地域おこしのプレイヤーたちの役に立てば……。そんな思いから立ち上げられたのが「地域リノベーションラボ」です。