オペラ・ニュース:Opera Awards 24 発表
ロンドンを本拠とするインターナショナルな『Opera Awards』の今年の発表・授賞式が10月2日、ミュンヘンのプリンツレゲンテンテアターで行われました。
プリンツレゲンテンテアター。
プリンツレゲンテンテアターの内部。
雑誌『Opera』の表紙。ロンドンなのでもちろん英語です。値段もポンド。
授賞式はずっとロンドンで行われていましたが、22年から外国に出て(スペイン・マドリード、23年はポーランド・ワルシャワ)、今年はミュンヘンでした。
場所はバイエルン州立オペラが公演する劇場のひとつ、プリンツレゲンテンテアター。この日のプログラムは英語。司会進行なども英語でした。
今年の受賞者は以下の通りです。
CONDUCTOR :Simone Young
DESIGNER :Rufus Didwiszus
DIRECTOR :Christof Loy
EQUAL OPPORTUNITIES & IMPACT :Opera for Peace
FEMALE SINGER :Lisette Oropesa
FESTIVAL :Savonlinna Opera Festival
LEADERSHIP :Christina Scheppelmann
LIFETIME ACHIEVEMENT :José van Dam
MALE SINGER :Benjamin Bernheim
NEW PRODUCTION :Iphigénie en Aulide / Iphigénie en Tauride (Festival d'Aix-en-Provence)
OPERA COMPANY :Komische Oper Berlin
PHILANTHROPY :The Stavros Niarchos Foundation für ihre Unterstützung der Greek National Opera
READERS’ AWARD :Arturo Chacón Cruz
RECORDING (COMPLETE OPERA) :Louise Bertin, Fausto; Label: Bru Zane
RECORDING (SOLO RECITAL) :Michael Spyres, In The Shadows; Label: Erato
REDISCOVERED WORK :Salieri, Kublai Khan (MusikTheater an der Wien)
RISING STAR :Justin Austin & Arnheiður Eiríksdóttir
SUSTAINABILITY :Finnish National Opera
WORLD PREMIERE :Péter Eötvös, Valuska (Hungarian State Opera)
この他、ノミネートなど、以下のサイトで見ることができます。
オペラに関する賞は、たとえばインターナショナルなオペラ専門誌『オーパンヴェルト』の年鑑が90年代から行なっている賞が有名で権威があります。ただ、これだと、どうしてもヨーロッパ、ドイツ語圏がメインになってしまいます。とはいえ、全世界のオペラの上演の半分以上がドイツで行われているので、いたしかたないかと思います。
この『Opera Awards』は2012年に始まり、歴史はまだ浅いとはいえ、全世界を対象にしています。そのため、ノミネートされるだけでも素晴らしい業績と言えると思います。
そこで、ノミネートや授賞式の様子を少し紹介しておきます。
カテゴリーは上記の最優秀リストでわかると思いますが、『フェスティヴァル』部門に少々触れます。
これには6つのフェスティヴァルがノミネートされましたが、その中に『エルル・チロル・フェスティヴァル』がありました。
今年7月の開催期間中、私はワーグナー《ニーベルングの指環》のチクルス上演とチャイコフスキー《マゼッパ》のために合計5回、エルルの上演を観て、その質の高さを確信していたので、これは嬉しいことでした。
ここでは、《ラインの黄金》の投稿のみを挙げますが、その後に投稿が続きます。ぜひどうぞ!→
また、『発掘上演』には8つの上演がノミネートされましたが、その一つにドルトムント・オペラのオーギュスタ・オルメス《黒い山》が入っていました。
19世紀末のパリでサン=サーンスなど芸術家の男性たちを魅了したファム・ファタール、オルメスは現在、忘れ去られた存在です。
このプレミエも観ました。ちなみに、この発掘上演指揮は小林資典でした。→
日本でも有名なホセ・ファン・ダムには、彼の芸術家としての業績に賞が贈られました。
スピーカーの1人、バイエルン州立オペラのインテンダント、セルジュ・ドルニィはその挨拶で、突然、
「日本人は芸術・文化をこよなく尊敬し、愛する。」
と言い出したのです。何かと思ったら、
「その日本には『Living National Treasure』(『人間国宝』ということですね)がある。彼はまさしくそれに値する」
と続けました。
こういう場で「Japan」という英語がいきなり出てきたので、何事か?と思ったのですが・・・
それに「日本の存在感」がどんどん希薄になっていると思うからです。
また、小説家のドナ・レオンもスピーカーとして登場しました。
私が初めてドナ・レオンを知ったのは彼女の作品『死のフェニーチェ劇場』が1991年サントリー・ミステリー大賞を受賞した時でした。
ヴェネチアを舞台にコミサーリオ(刑事)・ブルネッティが事件解決していく小説は日本でもいくつか文庫で出ています。
ドイツではARD(ドイツ第一チャンネル)が2000年から2019年まで全部で26作のテレビ・ドラマ・シリーズを作りました。舞台はもちろんヴェネツィア。
いや、もう、これ、はっきり言って、私、好きすぎなんです!
人気シリーズで、終了後も何度も再放送しており、その度にまた見てしまう。
犯人や事件の進行、いろいろなシーンがわかっているのに、ヴェネツィアの風景や役者が素晴らしく、また、社会的な問題提起も面白くて見てしまうんです。
ちなみに『死のフェニーチェ劇場』のテレビ・ドラマもあるのですが、撮影場所はフェニーチェ劇場ではありませんでした。
日本の放送局関係の知人に「日本人もこういうの好きだと思う」と、何人にも勧めたのですが、まるで関心なし、でした。
ARDのサイトは→
ドナ・レオンは大のオペラ・ファン、特にヘンデルのファンで、バロック・オペラを観にミュンヘンには幾度となく通っていると壇上で話していました。
さて、『最優秀オペラカンパニー』に選ばれたベルリン・コーミッシェ・オーパー(KOB)。現在、劇場改修中で代替劇場のシラー劇場で上演をしています。
私は90年代、ドイツに住み始めてから、このオペラ・カンパニーのファンです。
現在バイエルン州立オペラ音楽総監督ユロフスキがKOBの受賞に対して挨拶をしました(上記写真)。
ユロフスキはまずKOBの第二カペルマイスターとしてキャリアを始めました。
当時の第一カペルマイスターは阪哲郎(現びわ湖ホール芸術監督)でした。
音楽総監督はヤコプ・クライツベルク。
クライツベルクはセミヨン・ビチコフ(今年、バイロイトで《トリスタンとイゾルデ》新制作を指揮)の兄弟で、KOBの後、モンテカルロ・フィルのシェフを務めました。素晴らしい指揮者でしたが、2011年、52歳の若さでモンテカルロで亡くなりました。彼の後任が山田和樹です。
クライツベルクのKOBの後任として、現ベルリン・フィル芸術監督キリル・ペトレンコが2002年KOB音楽総監督に就任、当時、私は彼が指揮するオペレッタなども観ました。特に強烈な印象を残したのが、《ドン・ジョヴァンニ》指揮でした。
KOBはバリー・コスキィがインテンダントを退任した後も、スザンネ・モーザーとフィリップ・ブレーキングが共同インテンダントとして、さまざまなジャンルで素晴らしい公演を続けているので、この受賞は当然だと思います。
授賞式の後のパーティーで。
左からブレーキング、モーザー、ユロフスキ。
モーザーが手にしているトロフィーを見せてもらいましたが、木製のシンプルなもので、KOBの名前が刻まれていました。
さぁ、宴もたけなわ、私はいち早く帰ろうと出口に向かったら、ユロフスキとこの夜最優秀指揮者に選ばれたシモーネ・ヤングが話をしていました。ユロフスキは足元に荷物等を置いていたので、帰るところだったのかもしれません。
その場で2人の写真を撮るのは憚られたので、ドアの外に出てから撮ったのが下の写真です。
FOTO:(c)Kishi
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代表:来住 千保美(Chihomi Kishi)
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