山中千尋(ろひちかなまや)

ピアニストです。文章もときどき書いています。

山中千尋(ろひちかなまや)

ピアニストです。文章もときどき書いています。

最近の記事

気球に乗ってどこまでも

私が文章を書くモチベーションになる人がいる。その人の書いた作品を読むと、むくむくと書く気が起こってきてしまってすごく張り切るのだが、書くのにその人に50倍くらい時間がかかるので、途中でへろへろになってしまう。とっくに時間切れになったマラソンを走っているような虚しさ。なんでこんな無謀なこと、書こうなんて思ったことにひたすら自己嫌悪になる。行くも千里、戻るも千里、的な状態というわけだ。その人の書くものは、色濃い恋愛模様が多く、こんな話どこで思いついたの?!と驚愕してしまう。なんと

    • いわさきちひろ

      私が生まれた頃の両親はとても貧しい暮らしをしていた。それは目も当てられないほどの貧しさだった、と母から聞いて驚いた。私には小さな子ども時代の幸せな記憶しかないからだ。ありがたいことに家族ともに健康だったし、温かい食事を食べられたし、身近に音楽があった。何よりいわさきちひろの絵本があった。たくさんの物語が私の幼年時代ふちどる。赤い風船、りゅうのめのなみだ、ことりのくるひ、おにたのぼうし、ひさの星、あかちゃんのくるひ、あかいくつ、おやゆびひめ、絵のない絵本、あげたらきりがない。「

      • ようこそ、もやもやへ

        去年の10月くらいから、ある男性の作家のクラスをとっていた。仕事の都合で行けたり、行けなかったりしても、心を守って生きていくために、書くことが必要だった。クラスの方々の作品に触れて、その思いが切実になった。支えだった。たくさんの学びがあり濃密な時間を過ごさせていただいた。 しかし、ある時から少しずつわだかまりを感じはじめていた。教室にふんわりと漂う違和感が、先日の講義ではっきりした。 ”対話とはキャッチボール。あのキャッチボールの感覚、女性はキャッチボールをしたことがない

        • わたしが声を上げる理由

          わたしが声を上げ続けるきっかけになったのは若い友人からのメール。 「自衛隊に入ることになりました」 自衛隊の楽隊は世界最高峰レベル。 「すごいね!おめでとう!」 お祝いの返信をしたが、それきり。 その友人は「大学を卒業したら海外で勉強を続けて世界のいろんな場所で活躍したい、そのために頑張ってきたし、現地の学校も見学した」外国に行ったことも目をキラキラさせて話してくれていた。自衛隊の音楽隊に入りたいと一度も聞いたことがなかったので本当はとても驚いた。メールは短かった。

          ナンシー関トリビュート「ただそこにある赤いペダルスティール」by能地祐子さん

          ナンシー関と太宰治の命日が1日違いということもあり、今日あたりから気を引き締めていこうと思う。 下弦の月が霞んで見える。 ショックだったのは、ナンシー関の本をほとんどをどこかに(たぶんニューヨーク)置き去りにしてしまったことだ。読もうと思ったらここには一冊もない。「思い出の反芻は目減りのしない娯楽」 ナンシーの世界に浸りたかったのに。 代わりに太宰でも読んでみようと「もの思う葦」を開いたページが「田舎者」という作品だった。  私は、青森県北津軽郡というところで、生れまし

          ナンシー関トリビュート「ただそこにある赤いペダルスティール」by能地祐子さん

          自分を探して

          英語が話せるってすごくいい だって英語で話す時の自分はまるで別人格 自信たっぷり、主張はっきり、すっごくポジティブ かつて起こったトラウマだって 英語で話す時には上書きされていく あれはポルトガル語の自分に起こった 可哀想な出来事だって🤣🤣🤣 ポルトガル人のコメディアンが インスタ投稿から語りかけてきた話☝️ すごく笑った ほんとうに事実 英語人格に変わるとなぜか 母国語で話す自分にマウントを取り始める 他の言語で話す時とは別の 強い味方がつくような錯覚が…… そんな状

          これから

          能登半島大地震の被災された皆さまの大変お辛い現状が少しずつ分かってきて、こんなに寒い日々を助けも水も食べものもなく、どう過ごされていらっしゃるのか、気がかりでありません。救助がいきわたりますよう、少しでも早い復興が進みますよう、自分のできることを最大限ご協力していきます。皆さまがどうかご無事でありますよう、心よりお祈り申し上げます。 どう生きたいか、どう表現したいか、何を大切にするか、何に命をかけるか、ということに、今まで以上に真剣に向き合い、自分の可能性を伸ばすべく、必死

          2024年

          たくさんのファンの皆さま、友人に恵まれて2024年を迎えることができました。いつも多大な応援を賜りまして誠に有難うございます。のびのびになっていたYouTubeチャンネルを先日開設させていただきました。今年は有言実行でいきたいと思います。(政治家の文言みたいですが……) https://youtu.be/op6So_vlZBk?si=U259iqdnO7HS1nyR 本日元旦は一粒万倍日と天赦日と天恩日が重なる最高な幸運日。お参りにはバーチャルで構わないそうです。外国にいる

          近況です

          12/27の未明から高熱の風邪で声がまったくでなくなってしまいました。39.2℃ほどあり、コロナ、インフルエンザの検査を受けました。ともに陰性でしたので本当に良かったです。強い解熱剤(アメリカ製)のおかげで38.7℃まで下がってきました。今年の猛暑を乗り切った身体はこのくらいの熱、なんでもないです。。。と言いつつ文章を書いていたらめまいがしてきたのでここで終わりにします。 上記の理由により、今週のいつだってT-Timeは過去からの再放送となります。大変申し訳ございません。ご

          おだちんぼ

          インスタライブ、ご視聴誠にありがとうございました。わたしの壊れている部分がだんだん滲み出てきていて、こんなにさらけ出していいのかと、猛省しております。見苦しいものを申し訳ありません。 親戚の集まったときに歌って踊りまくっていたら「ちひろちゃんは、おだちんぼだからねぇ。大きくなったらどないさ(どんな人間に)なるんだろう」といつも案じられていました。不吉な予感が見事的中してしまったインスタライブでした。 皆さま、これからもよろしくお願いします。

          赤い靴

          倉敷ジャズストリート、倉敷アヴェニュウにお越し賜りましたお客さま、誠にありがとうございました。皆さまに演奏をお聴きいただけて、感謝の気持ちでいっぱいです。 アヴェニュウのリハーサルの後に、急に曲が頭の中に降りてきました。音楽がふと浮かぶことは頻繁にありますが「本当に書きたい曲ならば、また思い出すし」とたいてい何もせずに放置します。そして、記憶がよみがえってきた時に書きとめます。 でもアヴェニュウの演奏前に降りてきた曲は 「Écoute, écoute, ce moment

          出るとこ

          最近は、カフェやレストランがある美術館が多い。美術館のカフェはおしゃれで、混みすぎていなくて、和やかな雰囲気。 女性客が大半。会話を楽しんでいる。 美意識が高く、おしゃれ人ばかり。 そんな空間にくっきりと聞こえてきたのは、 わたしの愛する西の言葉たち。 隣のテーブルで会話が弾んでいる。   A: 孫にお見合いの話が来たんよ B:あんたのお孫さん、シュッとしたイケメンで3高やからね。どんな人? A:もうびっくりよ。写真見たらめちゃくちゃべっぴんさんやねん。ま、写真は簡単に修正

          明暗

          巨匠となったモジリアーニのデッサンは はるばる大阪まで運ばれ、 美術館に飾られた。 立派な額に入ったデッサンの前で 2人の女性が立ち話を始める。 Aさん:これなんぼ? Bさん:知らんわ。ええ値段やろね。 Aさん:こんなんなら私もすぐに描けるわぁ。 子どもの時からずーっと絵の成績5で 高校は美術部。「女ピカソ」て呼ばれてたんて。 Bさん:あんたそれ「顔がピカソ」言われてたんと違う? Aさん:私がピカソなら、あんたは「ゲルニカ」やね Bさん:なんのしりとりにもなって

          洗濯

          家事の中では洗濯が好きだ。 洗濯機が全部やってくれる。 心が洗われる。気分も良い。 でも今日は衣類や心だけでなく Apple Watchも洗ってしまった。 洗剤にまみれ、しっかりと脱水されて すごくきれいになったはずなのに、Apple Watchはスイッチを押しても真っ黒な画面のままだった。 「洗濯すれば、きれいになると思うなよ」 Apple Watchはいつものように硬かった。 「柔軟剤入れても、関係ないから」 Apple Watchがポケットに入っていることを

          どこ見てるの?

          東京の美術館と大阪の美術館では、鑑賞するお客様の温度がまるで違う。 東京の展覧会は満員電車みたいに混んでいるのに、朝の通勤時みたいにしーんとしている。 時々ひそひそ声がする。虫が枯葉の上を這っているような音量だから、何を言っているのかわからない。面白いことは(たぶん)話していない気がする。 その点、大阪の展覧会は賑やかだ。元気な人多数。新世界みたい。ドヴォルザークの新世界じゃなくて、通天閣が見えるほう。ボケとツッコミが勝負している。関西DNAすごい。 モジリアーニ展では

          マエストロ飯守泰次郎先生のご冥福を心よりお祈り申し上げます

          飯守泰次郎先生の指揮で「ラプソディ・イン・ブルー」を群馬交響楽団と演奏させていただいたことは、私にとってかけがえのない幸運でした。 泰次郎先生の指揮から生み出されていく途方もない情熱と高揚、荘厳、圧倒的な煌めき、柔らかな情感。先生の創造される音楽の深さの一部分にさせていただいた夢のような時間がずっと心に刻まれています。 「今度はリストをやろうよ!」終演後に先生がお声がけくださったことを急に思い出しました。先生からこぼれた温かくて大きな笑みは、私の音楽人生を照らす輝く星です

          マエストロ飯守泰次郎先生のご冥福を心よりお祈り申し上げます