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ミュシャ×煙草 : 艶やかに「魅せる」広告の世界とは?

ゆるっと知る絵画
芸大生の筆者が、実際に観て感動した絵画をセレクト。
作品の魅力をゆるっと知ってもらえる情報をお届けします。

ゆるっと知る絵画 vol.2: アルフォンス•ミュシャ《Poster for JOB cigarette paper》(1896年)


ちょっと「違う」ミュシャ

右手に煙草。立ち昇る紫煙のなかで妖艶に微笑む女性。

Poster for JOB cigarette paper

ミュシャの作品を見たことがある方なら、少しびっくりするかもしれません。
よくイメージされるのは、淡く儚く、可憐な少女と花々をモチーフとしたものではないでしょうか。

The Seasons: Summer

確かに、ミュシャは大多数の作品で花と女性を愛らしく描いています。
こんなにも艶やかで、退廃的なイメージは珍しいといえるでしょう。

煙草巻紙の広告

モチーフの珍しさの理由。それはこの作品が、煙草巻紙を販売するJOB社の広告ポスターだからです。

煙草巻紙。聞き慣れない言葉ですが、用途はその名の通りで、煙草の葉を巻く紙のことです。

(JOB社による煙草巻紙How to動画。なんだかスタイリッシュですね。※喫煙シーンを含むため年齢制限あり)


快感と開放感。 巧みな技法

さて、広告ということは、この商品の良さを端的に伝えなければいけません。が、ミュシャは巧みにそれをこなしています。

軽く上を向いた女性、恍惚とした表情、煙と髪の軽やかな動き……。

絵でありながら動きがはっきりと感じられ、快感と解放感を効果的に表現しています。

実際に作品を見ると、画面左側の髪〜フレームにかけて、徐々に明るくなるようグラデーションが施されていることが分かります。全体的に落ち着いた色合いでありながら、要所で「抜け」を演出している点が見事です。

当時はまだ珍しかったであろう女性の喫煙シーンも相まって、当時の人々は強烈なインパクトを受けたのではないでしょうか?
何より、百年以上経った現在でも褪せない魅力があります。大成功の広告ポスターです。


堺アルフォンス•ミュシャ館

ミュシャの世界にどっぷりつかりたい!そんな方にぴったりな場所が、大阪府堺市の堺アルフォンス•ミュシャ館です。

約500点のコレクションはミュシャオンリー。
なぜ堺市にそんな美術館が?と疑問に思いますよね。

このコレクションは、故土居君雄氏が収集したものです。
土居氏はミュシャの実息とも関係があったようで、さまざまな作品をコレクションに加えました。それらの作品が、氏の没後、堺市へ寄贈されたという経緯があるようです(注)。

ミュシャに魅せられた日本人。なんだか親近感が湧いてきます。

大阪中心部から少し離れますが、行って損なし!と断言できる、素敵な美術館です。ポスターだけでなく、油彩画や彫刻も鑑賞できます。

360°ミュシャの空間へ、ぜひ足を運んでみては?


(注)堺アルフォンス•ミュシャ館. (n.d.). 堺が世界に誇るミュシャ・コレクション. 堺アルフォンス•ミュシャ館. https://mucha.sakai-bunshin.com/about/collection/(2024年4月5日アクセス).

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