スイミー
初めて『スイミー』を知ったのは、小学校の国語の時間。
他の赤い魚たちとは違い、一匹だけ真っ黒なスイミーが、ひとりで暗い海の中を泳いでいく。
中でもスイミーが赤い魚たちと群れを作って大きな魚になりすまし、敵の魚をやっつけるシーンが大好きだった。
赤い大きな魚の「目」になっているスイミーを見つけることも楽しかった。
ひとり(一匹)で大きな海に出て、
いろんな海の生き物と出会うスイミーがとても羨ましく、かっこよかった。
幼いながらに、「スイミーみたいにひとりで何でもできるようになりたい!」と思っていた。
「一匹だけ黒い」というところも「他とは違う特別な存在」のように感じ、小二の頃から既に厨二病だった私はスイミーに憧れていた。
読むたびに小さいスイミーに勇気をもらっていた。
しかし大人になり、
先日久しぶりに『スイミー』を読み返してみたとき、私はガッカリとしてしまった。
まるで自分のことを、「怖くて出られないよ」と言っていた、赤い魚たちのように感じてしまったのだ。
他人の目を気にし、周りの空気を読んで、合わせて。
一人だけ目立つことがないように。一人だけ特別に、ならないように。
大人になるにつれ、そんなことばかり考えて生きていたことに気がついた。
スイミーのように「ひとりでも勇敢に進んでいく姿」や「特別な存在」に、あんなにも憧れていたはずなのに。
本当はもっと自由に行動して生きたいと思っているのに。
子供の頃の私だけじゃなく、大人になった私のことまでも、スイミーは励ましてくれた。
スイミーが絵本の中から「ほら、こっちに出ておいでよ!」と言ってくれたような気がした。
スイミー。
私、これからは怖がらず、一人で広い世界に出てみるよ。
そして一人だけ違う姿をしていても、周りからどんな目で見られても、堂々として生きていくよ。
いつか他の赤い魚たちも、一匹一匹違う色になって、カラフルな魚の群れが作れる世界に
なったらいいね。
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