詩『鴉』
夢を見た。
それは、かつてのわたしとあなただった。
それは、
今になって見る夢でも
回顧するほどの過去でもない。
おわりだってなかったけれど、
はじまりさえなかった二人。
あの頃。
何を想っていたのだろう。
飛び立つ鳥に己を重ねては、飛べないことを嘆く。
そんな日常と非日常を行き来する
もどかしい苛つきと、探り合いがあった。
確かにあったのだけれど、
確実になくなってしまった
そんな恋を、山程してきた。
黒い羽根に身を包むあなたは
鴉となって
どこまでもヒトを見下していたね。
あの夏
太った白鳥は羽ばたけたのだろうか。
空が歪んで会っていない。
今思えば
あれもこれも ぜんぶ恋だった。
ただ、羽根を焦がして飛べなくなるだけの、
ただの恋。
ただの恋だったのだ。
それだけの話。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?