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voice


渦の音が聞こえる。
ゴォゴォと、それはまるでジェットコースターのような音で、暗く、地響きを伴い、だけども確かに、私の腹の底まで響いてきた。

いろんなものを受信したここ数日は、
自分が巨大なアンテナになってしまったようで
居場所が屋根裏にしかないように感じてしまったよ。
磔にされているキリストの気持ちが、今ならわかる
そうおもったことは果たして優しさだろうか。


諦めてしまった。
何を?
夢を?
愛を?
命を?
いいえ、それはひとつの声だった。


お前らにわかってたまるか、と、
一生をかけて償うつもりだった、罪がある。
どこに? ここに。
それは永遠に赦されることのない、私だけの罪。
普段は宝箱にしまっては、まるで宝石を慈しむかのように、
時々取り出して自分を映し出す。
鏡なんてものは、邪気を跳ね返すための道具だ。
本当は、世の中の全部が鏡だってことを、知っている?


渦の音が鳴り止まないでいる。
私の耳に、心に。
それは巨大な叫び声にも聞こえるし、
小さな沈黙にも聞こえるんだ。

貝殻を拾って、耳にあてて聞いていた。
「海の声がする」と、
たしかに、きみは言ったよね。疑いもなく。
本当はあれこそが宝で、鏡で、
最大の罪だったのかもしれないね。

あの頃の私は
もういない。



どこにも、いない。

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