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TV DRAMA LIBRARY~ドラマの部屋~

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刺さったドラマの数々の備忘録です
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記事一覧

ハンドメイズ・テイル/侍女の物語

The Handmaid's Tale(アメリカ/2017~) 原作 マーガレット・アトウッド 配給 MGM Television 1985年に出版されて以降、映画化、ドラマ化されるたび、繰り返し、その時代時代の人々へ大きなメッセージを刻んできた作品。 huluオリジナルドラマ配信が大反響を呼び、海外で大きな衝撃と社会現象を巻き起こした。 「この物語で女性達が体験する出来事は、空想、想像、フィクションはひとつも無く、すべて現実に存在する出来事」と原作者が語るとおり、この

ブルー・アイズ 国家陰謀とテロ事件

Blå ögon/Blue Eyes(スウェーデン/2014) 監督 Henrik Georgsson "多くのスウェーデン人は自国で安心してくつろげない" あの議員がモデルでは、あの事案がベースになっているのでは、とスウェーデンで大変な物議を醸したドラマ。 産業省補佐官が忽然と姿を消し、けれどその事実は隠蔽されたまま、エリンは後任に推薦される。果たしてあの夜、何が起こったのか――。 またしても邦題で損をしてしまった作品。 確かに同時多発テロやテロリストの描写はあるも

8デイズ

8 Tage/8 Days(ドイツ/2018) 監督 Stefan Ruzowitzky 「君の名は。」から二年後に制作されたドイツのドラマです。 隕石や彗星の衝突というと、多くの作品が地球滅亡を描いてきた中で、「君の名は。」の、地球全域ではなく、ある地域だけが被害に遭う、という視点は斬新で衝撃でした。 このドラマでも、隕石で消滅するのは特定の地域に限定されています。 消滅する地域の人々は当然国外脱出を試み、難民が大量に発生し、空港や国境は大混乱になります。 たった一週

アンバーアラート 失踪者特捜班

Alerte Amber(カナダ/2019) 監督 ステファン・ボードイン/フレデリック・ダムール 邦題で非常に損をしてしまったドラマかもしれません。 これは、バラバラに千切れ、砕け散り、壊れてしまった家族の「緊急事態」の物語。 結果が出てしまった後の、たられば、ならいくらでも言えることかもしれません。けれども、嵐の只中にいれば、人は必死に、真剣に、間違えていく――。 「僕たちは問題児。ママにとっては僕たちがいない方がいい」 プライドと建前、他人の視線を気にするあまり

BrainDead ブレイン・デッド

BrainDead(アメリカ/2016~) 政治をからめた軽いブラックコメディ、と聞いて何となくシェトランドとブルー・アイズの後から観よう、と後回しにしていた作品。 けれども、軽いコメディにしては、ずいぶん力の入った制作メンバー(リドリー・スコットまで!)であることにふと気づき、なおかつ、マイケル・ムーアまで参加、と聞いてただならぬ気配を感じ、高まる期待感とともに視聴したところ、これが、完全に予想のナナメ上を行っていました。 コメディとして面白い、というよりも、コメディを

ライン・オブ・デューティ 汚職特捜班4

Line Of Duty(イギリス/2012~) シリーズを通して、一旦視聴をスタートしたらもうやめられない、という定評のあるまさしく徹夜ドラマなのですが、特にこのシリーズ4が印象に残りました。 ※以下ネタバレ含みます 職場での根深い性別差別、人種差別。出産育児への軽視と風当たりの強さ。当たり前の事として行われるセクシャルハラスメント。 凄惨な現場の後でも家事をしなくてはならない日常。一切手伝わず、疲れ切った姿を見ようともしない家族。 そりの合わない同僚。 そして、失敗

シェトランド

Shetland(イギリス/2013~) 原作 アン・クリーヴス 海に囲まれた小さな島。 移動は船と飛行機のみ。 数十人しかいない村民は全員顔見知り。縁続き。 厳しい自然と、人と人の近すぎる距離。 恨みが育ちやすい土地、と登場人物が語る、狭い社会。 どこか日本の隠れ里に通じるような、重苦しい空気。 シェトランドというとウールかシェットランド・シープドッグが有名ですが、島そのものについてはあまり知られていないのかもしれません。 ペレス警部を演じるダグラス・ヘンシュオールの

ハッピー・バレー 復讐の町

Happy Valley(イギリス/2014~) これまたふわっとした邦題が付いていますが、決して復讐劇ではないので、邦題はスルーしましょう(笑) うっかり深夜に配信の視聴をスタートしてしまったら最後、徹夜ルート突入の沼ドラマです。 続きが気になって、やめられないとまらない。 主人公は元刑事の警官、キャサリン。 序盤はのどかな田舎町のささいな事件からはじまります。 うっかり油断していると、急転直下、突然足元に出現した真っ暗な穴に落ちるように、物語に引きずり込まれていきます

ヘビー・ウォーター・ウォー

Kampen om tungtvannet/HEAVY WATER WAR(ノルウェー/2015) 各国が核兵器開発を進めていた戦時下。 1942年から、実際にノルウェーで起こった、ナチスの核兵器開発阻止計画を元にして描いたドラマです。 物語は、ノーベル物理学賞を受賞したヴェルナー・カール・ハイゼンベルクと、予備役将校であるライフ・トロンスタ(大学教授・科学者・作家)を中心に、ノルウェー、ドイツ、フランス、イギリス、アメリカの、核を巡っての攻防を、史実をなぞりながら描いて

アウトブレイク ―感染拡大―

Epidemie/Outbreak(フランス/カナダ/2020) 感染拡大を防ぐには新たな感染者を見逃してはいけない―― 医療スリラーとしてスタートしたこのドラマ。驚くべきことに、放送が開始したのは2020年1月。 製作者も出演者も、撮影中はまさか世界がこんなことになるとは思いもしなかった、と驚いているそうです。 今日は昨日と同じ。明日も今日と同じはず、と無意識に信じて生きている中で、新しい脅威に人はなかなか気づくことができません。 違和感を感じても、「まさかね」と見過

刑事フォイル

Foyle's War(イギリス/2002~2015) これぞ、イギリスドラマの真骨頂!! 絶対に観て損はありません。 邦題は「刑事フォイル」ですが、物語は原題の通り、「フォイルの戦い」です。 フォイルは警官ですが、彼の真の戦いは犯罪捜査ではなく、時代の激流の中、自分をどこにとどめるのか。それがメインです。 時は大戦中。敗戦の噂が流れ、ナチスの影が忍び寄ってくる、イギリスの南東部のヘイスティングス。 空襲にあえぐロンドンから距離があることで、かえって戦争があらわにする人

バビロン・ベルリン

Babylon Berlin(ドイツ/2017~) ドイツが渾身のパワーを込めて作ったドラマ! なんていわれたら、もう観るしかありません。 「書類」があれば危険な案件もあっさり通り、「公式」「権威」の大義名分があれば何でもやりたい放題。くっきりと鮮やかな建前と本音。同調圧力。生真面目。 国中に蔓延する貧困が、やがてナチスを呼び寄せていく気配。 良い意味でも悪い意味でも「イメージとしてのドイツらしさ」を裏切らない―― 全編を通して画面いっぱいに満ちる、饐えたにおい。腐敗臭

ライン・オブ・デューティ 汚職特捜班

Line Of Duty(イギリス/2012~) NK細胞を増やしたいこの時期、重いもの、暗いもの、残酷なものは避けたい。このドラマ、絶対後味悪い、絶対にバッドエンドに違いない―― それなのに、やめられない!! そんなドラマが、この「ライン・オブ・デューティ」です。 見慣れた刑事ドラマを見る視点で見始めると、誰もが驚くはずです。 「何だこれは!?」 聖職者であるはずの警察官達が日常的に様々な罪を犯して生活しています。 軽い違反は日常茶飯事。 けれども、生活ってある

ステート・ウィズイン ~テロリストの幻影~

The State Within(2006年 イギリス/アメリカ) 主演のジェイソン・アイザックスを観てすぐに浮かぶのは、白髪魔法使い(笑)のドラコのパパ!! あのイメージを払拭しつつの鑑賞です。 スタートしてからすぐに、テレビドラマとは思えない怒涛の展開です。 巨額CG効果や大量のエキストラや爆薬を使わなくても、テロの悲惨さと戦慄が胸に迫ります。構図と撮影が秀逸だからですね。 ほんの短いカットで、各キャラクターの性格や役割を視聴者に理解させてしまう手腕はお見事です。(