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First Love 『初恋』を観たらエモさが渋滞してた

「一番好きな花なんです、ライラック」

何もかもが上手くいかなくて、期待された過去と比べて一層現実は辛くて、ボロボロの自信に未来への希望なんて見出せずに、行く宛てのない怒りをから元気で笑って閉じ込めた。誇れるものがなくたって、大事な人のために前を向いて働く彼女(ヤエちゃん) 。

一話の目立たないほんの日常を切り取ったシーンだけど、そんな彼女が偶然にもライラックを受け取った時に見せた静かな微笑みがどこか刹那的で印象に残った。

この作品のエモさって、儚さと脆さを愛で包んでるところにあるんじゃないかな。

夢を追いかけ毎日に精一杯、不器用だけどキラキラした過去。歳を重ねたからか現状維持と次なる一歩への狭間で揺れ悩む、ちょっとダサくてやるせない現在。後先考えず衝動で駆け抜けた過去だって、感情に上手く従えずに悶々と悩む今だって、同じようにもがいて苦しんで、くだらないことで笑ってる。

いつだって「不器用」で「青い」のだ。

それなのに、ヒトはいかにも器用に、上手く生きてるかのように振る舞う。取り繕って他者との間に見えないバリアを築いたりする。あと一歩踏み込んだ質問をしていれば、あと一回心ない言葉を返せば、一瞬でその張り詰めた緊張の糸がはちきれ泣き崩れてしまうのが想像できてしまうような、そんな余裕のなさが切なくてもどかしい気持ちになった。

それでも、どんだけ綺麗に上辺を整えていても、目の前の大事な人には強く真っ向から向き合い続ける、底抜けのピュアさと愛をもっているのも彼ら。

いい年になっても広場で大声で告白しちゃう同僚。
結婚予定の大好きな人を相手を想って手放す彼女。
結婚予定の彼女との安定より運命の人にかける彼。
搭乗寸前の初恋相手を追いかけ想いを伝える綴。
息子の意思を信じ1番のファンでいようとする母。

周りに気を遣って調和を保ったり、弱い癖に鎧を被って強くあろうとする人間が、譲れないものを前に感情に突き動かされて起こした行動はスマートとは程遠い。でも愛おしくて暖かい。人は孤独であれば傷つかずに済むかもしれないけど、その儚さや脆さが人を人らしくしていて、だからこそ寄り添い補完しあって生きるのかと気づかせてくれる。

何処かで立ち止まってしまった時や前を向けない時に勇気づけられたり、最終的に原動力となるのは、反骨心ではなくいつだって大切な人からの(への)愛の仕事なのだろう。夢に向かってまっすぐに生きる強さはきっと応援してくれる人がいるから保たれる。間違っても、失敗してもそれが次の糧になると信じて見守ってくれるそんな大切な誰かによって支えられて。

色のテーマ、画素、音、景色、とにかく全方向から瞬間のエモさを詰めたドラマ。満島ひかりも佐藤健も、木戸大聖さん他も素晴らしすぎる演技だった。綺麗なMVを見た後のような爽やかなフレーバーが後味でした。

さあ、
宇多田ひかるの初恋をかけながら学校に行こう。

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