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数字でみる、社会的養護の現状と課題

こんにちは! いつも読んでくださりありがとうございます🌟

今回は、虐待や施設などの社会的養護に関する現状について、数字を交えてお伝えしていきたいと思います。

(社会的養護って何?という方は以前の記事「社会全体で育てる」を御覧ください)

社会的養護(養育)の現状

社会的養育(養護)を受けている子どもは現在、日本全国で約45,000人います。(2018年度の入所・委託児童の人数は、「施設入所児」が37,154人「里親やファミリーホームへの委託児」が7,104人)

この45,000というこの数字、多いと感じますか、少ないと感じますか?

 数字だけで見ると多いような感じがするかもしれません。でも実は、施設などに入っている子どもは支援を必要とする子(「気になる子」)のなかのごく一部だけなのです。

 実は、児童相談所等で「虐待対応相談」を受けたケースの全員が保護されるわけではなく、家庭に残したまま支援をして行くケースの方が圧倒的に多いのです。
そして、一時保護(緊急的な対応として、一時的に親から引き離して保護する)されたとしても、そこから施設などに入所することになるのはごく一部です。

 少し前のデータになりますが、2018年度の値をみますと、児童相談所での「児童虐待相談対応件数」は159,838件。「一時保護のされた件数」は24,864件(虐待要因で年度中に保護されたもの)。「施設入所となった件数」は4641件となっています。 ちなみに虐待以外の要因も含めると、施設入所件数は10,365件です。これをみると最終的に施設入所まで行く件数は少ないことがわかりますね。(*上記の数は、人数ではなく件数という点には留意)

 では親と分離する必要がある子どもが少ないのかというと、そうではなく、施設や里親など委託先のキャパシティーが足りていない現状があります。(都市部と地方では差があるのですが、)東京などの都市部では入所待ちの児童が多く、常に入所の依頼が飛びかっています。施設だけでなく、一時保護所は定員を常に上回り、パンク状態のところが多々あります。そんな中でも緊急保護の対象もふえていきますから、社会的養護の器は常にいっぱいいっぱいの状態にあります。

 2018年度に約16万件だった「児童虐待相談対応件数」は昨年2019年度には19万件まで増加しており、上昇はとどまるところを知りませんので、社会的養護の器はこのままではもちそうにありません。これを解消するには、需要である「社会的養護が必要な児童(被虐児など)」を減らすことと、供給である「施設や里親などの社会的養護の受け皿」を増やすことが必要になりますが、そこには大きな課題があります。

社会的養護の受け皿の現状と課題

 社会的養護には子どもたちが生活する場所の形態により、児童養護施設や乳児院などの施設に入所して多数の子供と生活する「施設養護」と、里親やファミリーホームなどの、より一般的な家庭の形に近い環境で少人数で生活する「家庭養護」があります。ちなみに日本では、上記にあったように「施設養護」が圧倒的に多く(約37,000人)、「家庭養護」(約7000人)の約5倍であり、里親委託が主流の海外と比べて「家庭養護」は圧倒的に少ない数字となっています。(この現状は世界から問題視されています。)

【施設の種類↓】 

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 今、国ではこの社会的養護の受け皿などについて、2017年8月に発表した「新しい社会的養育ビジョン」の中で、《まずは親子が分離されないように支援する事が最優先である事。しかし、親子分離に至ってしまった場合の代替養育は家庭での養育を原則とし、高度に専門的な治療的 ケアが一時的に必要な場合には、子どもへの個別対応を基盤とした、できる限り良好な家庭的な養育環境を提供し、短期の入所 を原則とする。また、里親を増加させ、質の高い里親養育を実現する》という内容を示しています。

つまり、①なるべく家庭にいたまま支援、無理ならば、②里親を増やして家庭養護をメインにする。③もし専門的なケアが必要なら施設に入所させるが、施設でもなるべく家庭に近い形で育てるようにする。というような目標が掲げられました。

はい。国の掲げた指針には共感しますし必要なことなのですが、①は良いとして、②③については、今ある受け皿の数や現状をまるっとひっくり返すことになるわけですから、そう簡単にはいきません。

実は、里親への委託の推進はいま力を入れて取り組んでいる分野なのですが、委託件数はこの30年ほどで約2700件ほどしか増えていません。「里親」という言葉は知っていても実際の制度について知っている方は少ないですし、こどもの支援ができる養育者を増やしていくのは容易ではありません。(これについてはまた別機会に詳しくお話します。)

また、施設や一時保護所を増設するのは、需要の多い都心部こそ(土地や近隣への理解、働き手の確保等様々な問題があり)容易ではありません。(港区の児童相談所や一時保護所の建設も反対されていましたよね。)

どちらもそう簡単に解決する問題ではないので、今破綻しかかっている社会的養護の需要と供給が、崩壊する日もそう遠くないと思います。そしてそれを防ぐには社会全体の、みなさんの理解と協力が必要不可欠なのです。


今回は数字を交えて現状についてお話してきましたが、いかがでしたか。

次回は、今日出てきた内容(施設の現状や課題等)についてもう少し詳しくお話していきたいと思います。


*今回のはなしに関わる社会的養護の現状について、詳しく知りたい方はこちらをご参照ください 

「社会的養育の推進に向けて」厚生労働省 *国の指針

「社会的養護の現状」日本こども支援協会 *図が見やすい


最後までありがとうございました🌟

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