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昆虫標本の作り方①採取したら編

『標本』と聞くととても難しい印象を持つ方もいるかもしれませんが、一般の家庭でも十分作ることができます。いくつか用意しなければいけない道具や環境はありますが、昆虫標本の基本は乾燥させることです。きちんと制作された標本は、その色や形を数百年先も保って保存することができます。

博物館などで目にする標本のように、形を美しく保つことでより標本としての価値は高まりますが、実は標本で一番大事なのは美しさではなく、データです。
昆虫の名前が分からなくても、姿が残っていれば後からでも調べることができます。しかしその個体がどこで、いつ、だれが採取したものかをあとから調べることはできません。標本の見た目がどんな形であれ、その情報が記されたラベルと一緒に保存することで、 学術的な価値が生まれます。同じ種の昆虫の標本がいくつもあってもそのデータが違うことで、例えば地域ごと、季節ごと、年代ごとにどんな違いがあるのかをじっくり調べることができます。

今回は、採取した後の昆虫の扱いから、必要な道具の紹介まで!標本化の方法や保管方法は続編の記事をお待ちください◎


昆虫を殺虫するための道具

昆虫を標本にするには、昆虫を死なせる必要があります。殺すことに抵抗がある人は、その虫のことをちゃんと調べて適切な環境で飼育して、最後に死んでしまったものを標本にする、という方法もあります。いずれにしても、採取場所、採取日、採取者は個体ごとに記録しておきましょう。
まずは必要な道具から。専門の道具や薬剤もネットなどで販売されていますが、ここでは手に入れやすいものをご紹介します。

①三角紙

チョウやトンボの羽を傷ませずに持ち帰ることができます。トレーシングペーパーを図のように折って作ります。なければクッキングシートやコピー用紙でもOK

図のように折り、三角にします

②密閉ビン

除光液を染み込ませた脱脂綿と昆虫を入れて殺虫します。

③除光液

マニキュアを落とす液です。中に含まれるアセトンで殺虫します。揮発しやすいので吸い込まないように気を付けましょう。ドラッグストアなどで手に入ります。

④脱脂綿

除光液を染み込ませて密閉ビンに入れます。小さく折りたたんだ布やティッシュなどでもOK


昆虫を採取したら

死なせる方法は、チョウ・ガ・トンボの仲間と、その他甲虫など、の2つに大きく分かれます。

①チョウ・ガ・トンボ

採取したら、三角紙にはさみます。虫のサイズによって使う三角紙の大きさを変えます。採取するときは持ち歩いておきましょう。
採取したら、虫網の中で羽を折りたたむようにして三角紙の中に挟みます。チョウは羽を直接指で持つと羽の表面にある鱗粉(りんぷん)が剥がれてしまうので、網の中でお腹側から挟み、三角紙に収めます。
チョウやガは持ち帰ったあと冷凍庫に入れるなどして保管できます。
トンボの場合は糞を出させるため三角紙に入れたまま餓死させます。死後時間が経つと変色してしまうため速やかに次の処理に移ります。


②その他の虫

除光液を染み込ませた脱脂綿をビンに入れておきます。除光液は揮発しやすく吸引すると良くないので、ふたは常に閉めておきます。
採取した虫は直接ビンの中に入れて素早くふたをします。ハチ類など刺される可能性がある虫は十分注意します。スズメバチなどとても危険なものは、網に入れたまま液体のアセトンに浸けるなどの方法もありますが、厳重に注意が必要です。
殺虫後は腐敗を防ぐため、冷凍保存するか、防虫剤や乾燥剤を同封してカラカラに乾燥させて保存します。




さて次回は標本をつくるのに必要な道具編です!

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