秋の思い――李白の詩の詩

秋の思い

燕支えんしの山は、黄葉こうようの落ちる季節になりました。
わたしはここから、
(かつて我が匈奴きょうどの民の王・単于ぜんう颯爽さっそうと戦った)
白登山はくとうざんの高台を望んでいます。
今では、湖の上に、清々しかった青雲も消え、
王の単于ぜんうはいつかの若き勇猛の影を失って、
匈奴きょうどの地には、冬枯れへと向かう
寂しい秋の気配が漂いはじめています。
貴方あなたたち、我がの民の兵士たちが
砂漠のとりでに集結したのを嗅ぎ付けて、
かんの国の知らせの使いは、(国境の要塞)玉門関ぎょくもんかんから
王朝へと急ぎ戻ってゆきました。
(もうじき、漢の軍勢が押し寄せて、
すぐに戦争がはじまるでしょう。)
戦いにゆく貴方あなたの帰る日は、きっとおとずれないのですね。
わたしは空しく悲しむしかないのでしょう、
かぐわしく鮮やかに生きていた芝蘭しらんの野草が
蹴散らされ、踏みにじられてしまうのを。
(大好きなあなたの屍が、
戦場で踏まれ、足蹴あしげにされてしまうのね)


あきおも

燕支えんし黄葉こうよう
しょうのぞむ  白登台はくとうだい
海上かいじょう 碧雲へきうん
単于ぜんう秋色しゅうしょくきた
胡兵こへい  沙塞ささいがっ
漢使かんし  玉関ぎょくかんよりまわ
征客せいきゃく  かえ
むなしくかなしむ  蕙草けいそうくだかるるを


秋思

燕 支 黄 葉 落
妾 望 自 登 臺
海 上 碧 雲 斷
單 于 秋 色 來
胡 兵 沙 塞 合
漢 使 玉 關 囘
征 客 無 歸 日
空 悲 蕙 草 摧

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