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一口目にメロン味のする美味しい納豆レビュー:0060

このレビューは、「ひきわり納豆の一口目はメロンの味がする」というトンデモ自由研究のもと、地元で流通されているひきわり納豆7ブランドから2種プラスαをレビューさせていただきました。

ひきわりメロン説についての詳細は下記事に経緯が書いてあります。




記事を読まなくても、

・ひきわり納豆の一口目はメロンの味がする
・一口目のメロン味はブランドによって出やすさが変わる

という仮説を踏まえて読んでいただければ幸いです。



とにかく僕は、納豆にメロン味を感じてしまう不思議にとりつかれてしまったのです。

この記事を書いた後、

「納豆の中にメロン味に近い成分があるのか」から「食べ物の香りは体のどこでどう感じるのか」まで

小学生の自由研究程度ながら研究を続け、はや1年半。
途中スパゲティやうどん、そうめんに浮気をしつつも納豆一口目を食べては記録を続け、文献を読み漁る日々を過ごしていました。


それでも結局、なぜメロン味がするのか、いまだに分からない。
結論が出たらまたnoteにまとめようと思っていたのを一度断念して、途中の研究を少しずつ公開していこう、あわよくば納豆好きな方や香りの研究家に知識を教えてもらおうと思っています。


今回の記事は三本立て、前半はメロン味納豆のレビュー、後半は僕個人の体験と香りと味の脳科学から、どうしてメロン味を感じるようになったかの分析してみました。




1.メロン率の高い納豆レビュー(2種プラスα)


伝えたいことはひとつ。
ただメロン味がするのではなく、「おいしい」ということを強く推したいのです。
ほのかな青みと熟れた果物がマリアージュした結果のメロン味なので、割とおいしい。ソムリエがワインの評論をする時の表現をすれば納得するかと思います。



例えば…。

「この納豆のフレーバーは夏採りのアンデスメロン、ほのかに香ばしいわらの余韻が残る」


………。

……コレジャナイですね。


気を取り直して、今回は地元で購入できるブランド7種から、メロン味が出やすかった納豆2種(+α)を明記して書きます。
名指ししたメーカーさんはどうか温かい目で見守ってほしいです。



※注意※

なお、納豆は全国で3500種類ありますが、ご当地ブランドも多く、スーパーで買った納豆でも地域のみの流通の場合もあります。

今回は地元バレを防ぐため全国流通のブランドに限定しており、今後もご当地ブランドは全て取り寄せと表記させていただきます
記事を読んでいただいた方がひきわりメロンチャレンジをする際も、意図せず所在地バレが起きる可能性がありますので、「この製品は○○で買った」などの表記は控えたほうが賢明かと思います。




メロン率とは?

1パックの納豆一口目を、たれ、辛子を加えずに食べてメロン味を感じた率。10パック食べて1回だけなら1割。
僕個人の体験では、毎回メロン味を感じるのでなくて、納豆1パック毎に当たり外れが出る。


とりあえず一年間で7ブランド、合計68パック食べ、記録をつけました。
さらに、紹介する納豆には5つの項目を付けました。


メロン率:%(メロン味を感じたパック数÷食べたパック数×100。小数点以下四捨五入)
香り:食べる前の納豆の香り。(大豆だったり野菜だったりメロンだったり、割と様々なフレーバーを感じる。)
粒の大きさ:ブランドによってやはり微妙にサイズが違います。
たれ:かける前の味。(一口目食べた後は、全て納豆にかけて混ぜて食べています。)
辛子:かける前の味。(辛いのが苦手なため、一口目食べたのち3割から半分ほどを納豆に混ぜて食べます。)




ちなみに、メロン率の低いブランドもあります。比較としてこちらの商品を紹介します。

1-1:超・細か~いきざみ納豆

 (メーカー:株式会社ヤマダフーズ)

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メロン打率:14%(7パック中1パック)
香り:穀物クッキーのような香ばしい香り
粒の大きさ:極細挽き
たれ:薄めでおだやかな甘みが広がる。
辛子:普通の辛子よりも粘りがゆるく混ざりやすい。酸味はなく塩気が強い。


メロン味はしませんが非常においしいです。極細挽きの為混ぜると食感がふわふわします。
臭みもなく豆腐に似た穏やかな味が特徴、納豆の概念をいい意味で変えてくれます。
欠点としては、辛子がどうしても辛く、ほんのちょっと入れても淡白な味が損なわれてしまうので、よりこの納豆に合った辛子を開発していただきたいです。


《合わせたら美味しそうな食材》
合わせるというよりも、新たな食材として創作料理などに使えそうです。
イカの刺身と和えたり、卵焼きやおやきなど作ってみたいです。


次からはいよいよ、メロン率の高い納豆です。




1-2:国産ひきわり納豆 

(メーカー あづま食品株式会社)

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メロン打率:64%(14パック中9パック)
香り:うっすらメロン(熟れた果物)
粒の大きさ:細挽き(通常のひきわり)
たれ:甘みが強く、それほどしょっぱくない。タレだけでも美味しい。
辛子:辛みが最初にピリッとくる。和辛子よりマスタードに近い。


前記事にて3日目に見つけてしまったメロン味納豆です。あまりの衝撃に自分の舌を疑いました。
初期のころから安定してメロンの味が出る製品で、何よりおいしい。
納豆=メロン、だけでなく納豆=メロン=おいしい!を繋いでくれた一品です。
たれと辛子のバランスも絶妙。

唯一の欠点は2パック1組で99円と、納豆にしてはややお高いことくらい。それでもこの味を一度は食べてほしい。


《合わせたら美味しそうな食材》
納豆巻き、きゅうりなど。強いて言うなら香りの青さが強いので、炊き立てのごはんなど熱々の食品とは相性が悪く、逆に納豆巻きや野菜など冷ました食材と相性が良いように感じました。




1-3:おかめ納豆 旨味 ひきわり

(メーカー タカノフーズ株式会社)

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メロン率:77%(13パック中10パック)
香り:うっすらメロン(熟れる前の若いメロン)
粒の大きさ:細挽き(通常のひきわり)
たれ:味は濃い目。昆布味と思われる甘みが先立ち、後味がしょっぱい。
辛子:最初はそれほどでないが後から辛みが来る。しっかり辛い。


研究当初はメロン味を感じませんでしたが、食べ続けていくうちにメロン味を多く感じるようになり、AZUMAさんのメロン率を抜いて77%!となりました。
食べる前の香りも若い果物のような青みがうっすらと感じます。
たれ、辛子、納豆すべてがしっかりした味わいでおいしい。


《合わせたら美味しそうな食材》
濃い目のたれと納豆のしっかりとした味わいから、伝家の宝刀、卵かけごはんにもってこいでしょう。
パッケージの写真のように、赤身の刺身などで手巻きずしにしてもいいし、どの食材ともバランスがいい製品です。




2.体験:どうして後天的にメロン味を感じたのか


 ひきわり納豆メロン説は元々僕の提唱ではありませんでした。
youtubeの配信で雑談を聞いていたところ「ひきわり納豆って一口目メロンの味がするんだよね」という与太話を聞いて挑戦した結果、後天的にメロン味と認識してしまったのです。


チャレンジに関しては、一つ目の記事を書いた一年前に、Twitterなどで感想を書いてくださった方もいました。
その際、チャレンジした方も多くいらしたようですが、「やっぱりメロンの味しないよ」「うっすら緑っぽい味はする」「実は前からメロン味を感じていた」とかなり意見が分かれていました。

チャレンジしたのにメロン味を感じられなかったのは少々もったいない。

僕のように後天的にメロン味を感じられた人間もいるのだから、メロン味を感じるにはどんな条件があるのか、洗い出してみました。


先天的な感覚器官の有無(嗅覚は普通に感じられないものの、ある種のにおいに受容体が反応しない)などは調べようがありませんが、味の記憶はどうでしょうか。

そこでまず、僕が今まで食べてきた納豆とメロンの記憶を振り返り、どのように体験を蓄積していたか思い返してみました。



まずはメロン。

僕の祖父は八百屋さんで、売れ残りのメロンをよくもらっていました。
売れ残りだから、もうスプーンでつつくとじゅくじゅくに崩れるくらいに熟れたメロンばかりを食べて育ちました。
そんなわけで子供時代はメロンに充実していたため、果実のメロンには詳しいと自負しています。(ただ、熟す前の若いメロンは食べてなかったかもしれません。)


対してひきわり納豆…。

実はこれ、チャレンジをした一年前より以前、ほとんど食べた経験がありません。
我が家は小粒派で、しかも田舎で納豆は生協などの宅配。家庭の食事というのはほぼ母が仕切っていたので、ずっと同じおかめのマークの付いた納豆だけでした。
納豆といえば小粒のおかめさん。他のブランドを食べた記憶もない。
それ以外を知らない人間だったのです。




3-1:記憶と香りの結びつきから、納豆メロンチャレンジの成功率を上げるには


ここから先は『においと味わいの不思議』という書籍を読みながら推測して、僕が納豆からどのようにメロン味を感じたかを分析したいと思います。ページ数は、この書籍から参照した箇所です。




こちらの書籍はワインとソムリエの味覚表現を通して、香りと味について分かりやすく基本から学べます。興味のある方はとても面白いのでぜひお読みください。

※なお、ここからの説明は味覚ではなく香りについての研究となっております。メロン”味”と言っているのに香りを調査する理由は、次の通りです。

1・味覚は主に5つ(うま味、苦味、酸味、塩味、甘味)にくくられてしまい、成分の調査にアプローチしにくい。
→対して嗅覚は、人間が感じられる嗅覚受容体が400種類、さらに嗅覚受容体の組み合わせで判別できるにおいは数万種もあり、特徴的な香りに対してアプローチしやすい。(第一章p25)
2・自分の体感的に、メロン味は舌で感じているのでなく、喉の奥の辺りで感じ取った。
→人間は気道と食道が交差しているので、のど越しから鼻の嗅上皮に香りが届いて、それを「○○の味」と判別することができる。
このことから、味覚でなくて納豆を食べた時の香りからメロンを感じているのかもしれない。(第一章p46)
3・納豆は古くから悪臭とされてきたが、このメロン味が香りからなるものだとしたら、これまでの納豆の臭い問題を覆すかもしれない。
→研究意義が上がるし、面白いなと感じた(新しい納豆研究の開拓地になるかもしれないです。新発見があるかも!研究仲間募集してます!)。


さて、香りというのは鼻の穴の嗅上皮から嗅覚受容体が刺激され、電気信号によって脳に情報が伝わってきます。
他の五感のうち4つは大脳新皮質へ一旦情報が送られていくのですが、嗅覚だけは大脳辺縁系をにダイレクトに伝わって記憶が呼び覚まされます。
つまりは、五感の中で最も早く記憶を思い出しやすい感覚とも言えます。(第一章p68)




ではその感覚が絶対的に強固かというと、そういうわけではありません。



まず、嗅覚受容体の信号の組み合わせでパターンが生まれるので、全く違うにおい物質であっても、受容体が反応したパターンが似たものなら、同じにおいだと思ってしまいます。
化学物質から作られるメロン香料が天然のメロンのにおい成分と合致するわけでなくてもメロンの香りだと思うのは、そうした理由からです。


そして、先入観からも脳は影響をうけます。
本書でも挙げられている例では、イソ吉草酸というにおい成分。これは足の香りや汗臭さ、納豆に例えられる成分ですが、
嗅ぐ前に「足の裏の臭いがする」と説明されるか「納豆の臭いがする」と説明されるかで、イソ吉草酸に対しての感じ方は違ってきてしまう訳です。(第一章p69)

先入観によってにおいのイメージは操作ができる。
また、におい成分はよほど強烈でない限り鼻の中に残らず流れていってしまいます。
写真のように物として残り、見比べられる感覚でもない。


つきつめていうと体の感覚というのは脳の電気信号ですが、嗅覚はもっとも言葉のイメージに騙されやすい感覚、でもある。


ここまでを参考にして2番目の僕の体験を分析すると、


メロンの味には充実した経験を持つがひきわり納豆の味の先入観を持たない、極端に記憶に偏りのある人間が、
あらかじめ「メロン味がする」という先入観を記憶してチャレンジすると、
納豆のなんらかの青い味を感じて今まで食べてきたメロンの記憶と結びついた。


また、多くの人にとってはメロン=納豆のワードが違い過ぎて忌避感を覚えていたようですが、その忌避感をあまり感じていなかったことも結びついた一因かもしれません。
チャレンジのきっかけは、メロン味かどうかそれほど信じていたわけではなく

「もしそんな味がしたら面白そうだな」と思ったからなのです。

それほど期待していたわけでもないのにここまでハマるとは、人生何が起こるか分かりませんね。




3-2:体験から得た、ひきわりメロンチャレンジが成功する方法


この分析を踏まえたうえでいくと、ひきわり納豆が好きで毎日でも食べている方は、納豆の味の先入観が邪魔をして、メロン味を感じない可能性があります。

ひきわりメロンチャレンジの成功率をあげるとしたら、

一週間食事に納豆を抜き、代わりにメロンを3玉ほど食べた後でチャレンジすれば、成功率は上がる…かもしれません。



3-3:結局脳はだまされていた。しかし大事なことは…


また、提唱された方が初めにこの説を話した折、

「騙されたと思って、…本当に騙してるかもしれないけど是非試してみてください」


とやや自信なく添えていましたが、

香りと記憶のメカニズムとしては、騙してるし騙されていることが分かりました。


納豆の何らかのメロンに近い香りを嗅いで、脳が先入観に騙されて、もはやメロン味としか形容できなくなってしまった。言葉の力は恐ろしいですね。

研究を根底から覆すことを書いてしまいましたが、メロン味というのは本当の意味では証明はできません。

前の記事で「成分調べたらぁ!証明したら熨斗つけて論文送ったるわい!」とか啖呵を切ってしまいましたが、そこまでの証明は多分できません、すみません。


ただ、大事なことは、



それをメロン味と呼ぶことで、毎日食べるひきわり納豆にちょっとだけ幸せを感じることができる。



自分の持つ全ての感覚や情動は脳の中で行われていることで、感じたこと全てはバーチャルだという話もあります。

自分の感覚が正しいと言い切るには、僕たちはあまりに科学や論理に囲まれすぎているけど、自分でおもしろいと思った感性を選べるし、信じることができる。

(この話を提唱された方がバーチャルライバーという仮想現実を生業にされている方なので、バーチャルという単語が書籍の中に出てきて、ちょっと面白がってしまいました。)



話を戻すと、
僕はこの味が美味しいと思っているので、今後も「ひきわり納豆はメロン味するよ」と言い続けるし、
メロンに紐づけられたあの風味がどこから来るのか、そして、よりひきわりが美味しく感じられるにはどうしたらいいか知るために、研究を続けていきます。

仮想の味覚であっても、味わった感動を信じる。もっと知りたいと思う。

これからもそうやって楽しんでいけたらと思います。


Special Thanks:納豆の食べ比べに付き合ってくれた母さんと、        評論として何度も校正してくれた弟くん。ありがとう!






自由研究をしないと死んでしまう性分なので、不思議だな・面白いな、と思ったことに使わせていただきます。よろしくお願いします。