見出し画像

映画『笑いのカイブツ』(1/5鑑賞)

穿つようなエネルギーと凄まじい苦しさに、圧倒されつつ引き寄せられた。
「ケータイ大喜利」レジェンドを獲得し、“伝説のハガキ職人”とも呼ばれたツチヤタカユキ氏の、自伝的私小説を映画化したもの。

5秒に1つ、狂ったようにネタを出す、笑いに心血を注ぐツチヤの日々。ネタ100本を携えてお笑い劇場で作家見習いの座を手にし、ハガキ職人から構成作家の道が開ける。けれど、決して順風満帆じゃないんです。

大喜利やラジオといった、ネタで勝負する場なら認めてもらえる。でも、「みんなと」「チームで」動くべき作家となると、人間関係で躓き厄介者になってしまう。

おもろいだけが正しいんや――ツチヤを笑いへと駆り立てる何かをカイブツと呼ぶのか。それとも、人と上手く交われない彼をカイブツと見做すのか。

ツチヤの才能を見出す人間も、笑いに傾注する彼を羨ましく思う者もいる。でも、ツチヤの抱える苦しみは大きい。

「誰かが作った常識に、なんで潰されなあかんねん!」
そう吐き出すツチヤへの、「この地獄で生きろや」が忘れられない。その潰してくる世間を、笑いで相手にするのだと理解しての言葉。ツチヤをさする手と表情のやわらかさ。

結局は笑いに戻ってゆく彼の生き様が、鮮烈な印象を刻む作品でした。

劇中で使われるネタや漫才はツチヤタカユキ氏が手掛けたもの。「ベーコンズ」というコンビが披露する漫才では令和ロマンのお二人が漫才指導を担当し、300人のエキストラを前にノーカット一発撮りだったとか。とても楽しまされ、面白さに笑ってしまった場面だったんですが、そんな裏話があったんだそうです。


『笑いのカイブツ』90秒本予告

この記事が参加している募集