◇早まる夕闇、引かぬ暑さ

ずいぶんと夜の訪れが早くなりました。真夏なんて19時を過ぎても明るかったのに、いまはもう、18時過ぎには車のライトが必要になる。季節が進めば、その時刻はもっと早まるでしょう。
しかしまだ、日中はものすごく暑いですね。日が沈んでも、熱はなかなか引かない。建物の中は特にこもって、眠るときも寝苦しいなあと感じる。

好きな季節はいつかと問われれば、これからだと答えます。秋、ではありません。

夏が、死んでいく時期。

夏から秋へと移ろい、徐々に涼しくなっていく様は、いのちの灯火が尽きてゆくのに似ている……気がします。日没が早くなり、秋の気配が感じられるようになってもなお、しつこく残る暑さは、最期の抵抗のようにも思える。
そういう暑さの中に、恐ろしくひやりとする朝が訪れたとき、わたしは身震いせずにはいられないのです。ぶるり、と。

ただ、わたしにとっては夏こそ最も死を感じる季節でもある。あの強烈な暑さに、身を焼かれるような、身が溶け出すような、身の腐るような感覚を、抱いてしまうからかもしれない。立ち上る夏の匂いが、押し寄せる熱気が、息苦しくて仕方ない所為かもしれない。止まぬ蝉の大合唱、やがて仰向けに転がるいくつもの死骸に、何か思うからかもしれない。
そういう季節が過ぎていくときに、“死んでいく”という表現を選んでしまう。

じゃあ生を感じる季節はいつか。たぶん、冬です。
身を切るような寒さの中、がちがち歯の根を鳴らし、ぶるぶる身体を震わせる。そういうときに、強く、感じる。
もちろん、凍えるような厳しい厳しい寒さは、ヒトの命を失いかねません。だからわたしが生を感じる寒さなんていうのは、程度が知れているのだけど。

さて暑さは、いつまで続くのでしょうか。やわらいでくれると、過ごしやすいのですけどね。