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輸入食品卸が直販ECに挑戦!専門商社ならではのウリで卸と小売を両取り

コロナ禍による消費ショックの影響で、直販事業やネット販売を始動されるケースが増えています。一方で卸中心に事業展開をされてきた事業者様のなかには、直販やECに参入しづらい背景をお持ちの方もおられるのではないでしょうか。

今回は、輸入卸売業を営む企業が始められた、直販事業の立ち上げストーリーをご紹介します。スタート当初は、「卸先と競合にならないか」という不安をお持ちでしたが、輸入卸の強みを活かした商品設計で不安を解消。コロナ禍のおうち時間を彩るサービスを展開されています。

自分たちで "売るチカラ" を持ちたい

アサヒグラント株式会社様は、業務用輸入食材を扱う専門商社です。日本で初めて生ハムを輸入されたパイオニアで、飲食店向けのチーズや調味料などを取り揃えておられます。創業当時は珍しかった輸入食材も、今では市場に広く浸透。市場拡大に比例して発展されていました。

ところがコロナ禍による外食産業の低迷を機に、売上は昨対比30%まで減少。余剰在庫を販売するため、直販に初挑戦。クラウドファンディングや広告で当座を凌いだものの、卸依存の収益構造に強い危機感を持たれました。

そこで外部環境に左右されない売上の柱をつくりたいと、直販事業の立ち上げを検討。短期的なプロモーションや安売りではなく、売れ続ける仕組みを確立。事業基盤の再構築を目指しておられました。

既存得意先との関係を維持しながら、直販事業を立ち上げたい――。

卸問屋の売上に支えられていたアサヒグラント様。本格的に直販事業を始めるには、卸と共存できるビジネス設計は必至です。40年以上かけて築いた信頼を守りながら、どのように自社の販売力をつけていくか――。そんな課題を売り方で解決するビジネスプランを提案しました。

アサヒグラント様の強みは商品力。プロの料理⼈が扱う業務⽤の⾷材に特化し、本場メーカーから直輸入。品質管理まで自社で行うこだわりで、現地サプライヤーとの強固な関係を築いてこられました。その結果、商品力の要となる、質・量・価格が全て揃っています。

直販事業でもその特長を活かして、卸商品を組み合わせてセット販売することに。価格内で好きな商品をチョイスできる「選べるセット」やサブスクプランを企画。客単価を担保しながら、お客様に楽しく購入いただける商品設計です。これによって卸価格と直販価格の共存も実現。得意先との関係を維持しながら、挑戦できる環境を整えました。

強みを活かした事業戦略

本格的に直販を始動するにあたって、値引きや広告ではなく価値で選ばれる事業に育てたいとお考えのアサヒグラント様。直販事業を媒体として市場と繋がり、環境に左右されない販売力を持つ。そんな理想の姿を体現する事業戦略を構築しました。

小売でも強みとなるのは商品力。生ハム以外にもチーズやワインなど様々な商品が販売可能。希少商品も安定して手に入れられるのも専門商社ならではの利点です。これらの特長をお客様にどのように発信するか――。事業の強みを顧客にとっての価値に転換し、魅力的に伝えるためブランディングを実施。幅広い商品展開、飲食店に卸す本格的な味、現地から届く珍しい食材、質・量・価格を兼ね備えた調達力。これらの特長を包括した「プロの味をおうち時間に」というブランドコンセプトを設定しました。

オンラインショップで本格レストランの味をお届けし、食卓に外食気分の楽しさを届ける。ブランドコンセプトは、直販事業を通して顧客に何を提供するのかを明確にし、企業と顧客を繋ぐ架け橋となります。

コンセプトに沿ったオンラインショップ

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ブランド戦略に基づいて制作したオンラインショップは「オトナマルシェ MiAppe(ミアぺ)」。MiAppeとは、ハムやチーズ、オリーブを総称する「おつまみ」という意味です。ロゴは、家と豚舎のシルエットを重ねたデザインに。生産者のもとから自宅に直接届く本場の味というメッセージを込めています。

冒頭につけた「オトナマルシェ」では、イベント感覚で訪れる楽しい雰囲気を演出。好みのおつまみを見つけるワクワク感を醸成。外食に代わる楽しみを提供できるよう、非日常な雰囲気を表現しています。商品を選び、購入するところから楽しんでいただく。「プロの味をおうち時間に」というブランドコンセプトを体現する世界観を構築しました。

シーンを想起させる

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ただ売るだけのオンラインショップではなく、外出や外食に代わるイベント気分を届けられるよう、オンラインショップ内での商品の見せ方・コンテンツにも工夫を施しました。

オンラインショップで購入を左右する重要要素である商品画像。真空パックに包まれた商品画像を並べても魅力的には映りません。そこで食べるシーンを想起させるイメージ画像を使用。例えばホテル仕様のソーセージは、卵やサラダを添えたモーニングメニューを模して撮影しホテルの朝食を想起させることに。休日の朝食用としての購入意欲を掻き立てます。またセット商品には、メニューを選ぶ楽しさをプラス。生ハムだけでなくチーズやオリーブを含めたセットは、好きなメニューをチョイスできる仕組み。好みの商品を選んだり、新しい味に挑戦したり、様々な購入の仕方を顧客主導で選ぶことができます。

このようなお客様を飽きさせない工夫は購入後も続きます。商品には、美味しい食べ方やレシピを添えて発送。一定金額以上を購入するとオマケが付いてくるシステムもあります。自分では選ばない商品との出会いや新しい食べ方の発見。顧客をさらに惹きつける仕掛けであると同時に、売りたい商品をオススメしやすい仕組みです。

オンラインショップ内には産地や食材についてのコラムも掲載。記事からは商品の品質や生産者との関係性が伝わり、安心して購入できます。専門店ならではの情報は、店頭で店員さんからうんちくを聞く感覚に似ています。実店舗のようなコミュニケーションを通してファンをつくる仕掛けです。

オンラインショップの収益を支えるのはリピート顧客。商品だけでなく、買い物自体を楽しみ、お店のファンになってもらえるように。購入前から購入後までの一連の体験を通して非日常をお届け。お客様の心を掴みます。

運用で一緒にPDCA

オンラインショップのオープン後は、継続的に売上が伸びるようお店を育てるフェーズです。EC事業未経験のアサヒグラント様を運用支援でサポート。

オンラインショップを訪れたユーザに購入してもらえるように、商品の見せ方や掲載内容を検討。サイト内の細かな修正や新しい企画ページの作成など、共にPDCAを回しています。オンラインショップの立ち上げから携わり、ベースにある戦略を理解してる関係だからこそ、スピーディで質の高い提案が可能。売上の柱となる事業へ、共に育てていくパートナーとしてお喜びの声をいただいています。オープンから6ヶ月、毎月の売上目標を計画通りに達成。順調なスタートされています。

まとめ

市場環境の変化を捉え、新たな売上の柱を確立するため挑んだ直販事業。顧客の日常に外出や外食に代わるワクワク感を演出。「プロの味をおうち時間に」、「オトナマルシェ MiAPPe(ミアぺ)」を体現し、おうち時間を豊かに彩る存在へ。新たに考案された選べるセットは、何度でも購入したくなる看板商品に育っています。

専門商社として培った強みを活かした事業戦略とブランディングによって、「卸先との関係を維持しながら販売力を持ちたい」という思いを実現。。顧客に愛され続けるお店として着実にファンの輪が広がっています。