千笑

物書き。 好きなものを好きなように書く。 ひとりでも読んでくれたらいいな。

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最近の記事

「声のする方へ」あらすじ

あたしと彼はようやく恋人同士になった。頻繁には会えなくなってしまったけれど、それでもうれしかった。それなのに、突然彼は死んでしまった。その死んだはずの彼が、なぜかあたしの前にいる…!? 引っ越し先の高校で同じクラスになった人に告白もされ、困惑するあたし。幽霊でも彼にそばにいてほしいあたしと、そんなあたしを好きになってくれた人。 彼の声が聞こえるようになったとき、今までの小さな違和感がひとつになっていく―――

    • 「声のする方へ」第三話

       一年前の彼が亡くなったあの日、なんとか葬儀を終えて帰路についていると、後ろから彼がついてきていた。見間違いかと思ったけれど、そうではないらしい。  電車の中では、あたしのはす向かいに座っていた。心配そうな顔であたしを見ている彼をじっと見ていると、やっぱり後ろの椅子が透けていた。  おもむろに彼に手を差し出していた。彼は戸惑いながらもその手を握ろうとしたけれど、やっぱりうまくはいかなかった。 「ほんとに……死んじゃったんだ」  ぼそっとつぶやくあたしの声に、彼は少し泣

      • 「声のする方へ」第二話

         彼がいなくなってから、早一年が経っていた。暖かくなり、桜が満開に咲き誇る頃を見計らい、あたしは彼と地元の大きな桜の木の下にきていた。  あれ以来、彼はずっとあたしのそばにいる。しかし、彼はもう死んでいる。  そう、彼は幽霊になってあたしの前に現れたのだ。  あの日のことは忘れもしない。差し伸べられた手を掴もうとしたとき、あたしの手はなにも掴めず地面に触れた。なにが起こったかわからずに呆然としていると、同級生が近寄ってきて手を貸してくれたが、その同級生の顔の上に彼の顔が

        • 「声のする方へ」第一話

          「す、好きですっ……俺と、付き合ってくださいっ」  地元ではちょっと有名な、大きな桜の木。少し高台にあるその立派な木の下で、彼は真っ赤な顔をして立っていた。  満開に咲き誇った桜の花びらがひらひら舞う中、あたしはじっと彼を見つめていた。 「……はい」  やっと口から出た言葉は弱々しく、彼の耳に届いたか不安になる。  そんな心配をよそに、彼はゆっくりと笑みを携えながら顔を上げた。 「……ほんと、に?」  彼と目が合い、あたしはこくこくとうなずくことしかできなかった

        「声のする方へ」あらすじ

          僕のヤバい彼女

          「ねぇ、今度どこ行く?」  少し冷えた風の吹く土曜の午後、おしゃれなカフェテラスで僕の彼女が笑いながら言う。  きれいなネイルを施した長く細い指で、テーブルに広げた雑誌のあるページを指す。 「ここね、最近できたらしくて気になってるんだぁ」  丸い大きな瞳をキラキラさせて、うるうるの唇を突き出して僕を見る。 「ねぇ、聞いてるのー?」 「あぁ、ごめん。どこ?」 「こーこ」  指をトントンされた場所を見ると、高級そうなフレンチのお店。一人二万からのコースで予約必須。クリスマスにはす

          僕のヤバい彼女