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#1「トイレの神様」から学ぶグリーフ(悲嘆)を力にするヒント

2010年に大ヒットした【トイレの神様】。
「トイレにはそれはそれはキレイな、女神様がいるんやで」
誰もが一度は聞いたことがあるフレーズではないだろうか。
シンガーソングライターの植村花菜さんが
3年前(当時)に亡くなったおばあちゃんとの思い出を歌った曲である。


Q. 皆さんはこの曲からどんなメッセージを受け取るだろうか?


2010年、当時この曲を聞いた私は高校生。
とにかく曲名からしてインパクト大。
「トイレ」「神様」???
そして10分近い曲の長さに、まず驚いた記憶がある。
高校生の頃からテレビを見ることが少なかった私は
ラジオで彼女の曲をよく聞いていた。

”おばあちゃんとの思い出を綴った温かい曲だな”
そんな感想を持っていた。
それ以上のことは特に感じたり、考えることは
無かったように思う。


あれから11年。
この曲を何度もリピートして聞いている自分がいることに気づいた。
それはなぜだろう?何が響いているのだろう?
そう考えた時に、
この曲は、私がライフワークとしている
「グリーフケア」に通じるヒントが
詰まった曲だということに気づいた。

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Q. あなたは「グリーフ」という言葉を聞いたことはあるだろうか?

グリーフとは悲嘆のことである。

例えば、
・身近な人が亡くなるというグリーフ、
・大切なペットを亡くすグリーフ、
・離婚に伴うグリーフ、
・学校や職場が変わるグリーフ、
・ずっと愛用していたものが壊れてしまった、
 使えなくなってしまったグリーフ、
・いつもの場所、繋がりが失われるグリーフ・・・

グリーフの大きさや種類は色々ある。
人によってその影響や程度は様々であり、
比較をするものではないが、
人生においてグリーフを経験しない人はいないことは確かである。

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さて、この曲の発売から今日までの10年ほどを振り返って欲しい。
Q. あなたはどんなグリーフを経験してきただろうか?

私は、
・親元を離れて生活を始めた。
・曾祖父と祖父を見送った。
・学生から社会人になった。
・初めての結婚をして、名字が変わった。
・妊娠をして、初期流産を経験した。
・助産師として産声がないお産に多くご縁があった。
・離婚を経験した。
・離婚をしてまた名字が変わった。
・再婚してまたまた名字が変わった。
・新卒で勤めた病院を退職した。
・静岡→千葉→大阪→千葉、大きな引越しを4回経験した。
・コロナで自由に逢いたい人と逢う、食事を楽しむ時間が少なくなった。


さっと書き出しても10個以上。
きっと自分でも気づいていないような、日常の些細なグリーフも入れたら
物凄い数のグリーフを私たちは日々経験しているんだと思う。
本当に、よく頑張って生きている、私たち。


日常にある「グリーフ」と
いかに上手く付き合いながら生きていくか、
これは私たちの生活の質(Quality of Life)に関わる
大切な生きる力であると感じている。

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この曲が生まれた背景には
「これが売れなかったら最後」と覚悟して
「自分のルーツ」をテーマに歌いたいことを全て出し切ろう、
という植村さんの思いがあったそう。
そこで自然と頭に浮かんだのが
12年間同居したおばあちゃんのことだったというのだ。


植村さんの歌詞には
・小3の頃から始まったおばあちゃんとの生活
・生活の中でおばあちゃんから教えてもらったこと
・おばあちゃんとギクシャクしていた時期のこと
・おばあちゃんの最期に触れて、出てくる想いと感謝の気持ち

そんな温かくも、グリーフを交えたエピソードが沢山詰まっている。

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曲の後半には次のような歌詞がある。
「気立ての良いお嫁さんになるのが夢だった私は
今日もせっせとトイレをピカピカにする」
幼い頃からずっと一緒に過ごしたおばあちゃんを亡くすという
グリーフを経験しながらも、
植村さんの確かな生きる力を感じる歌詞である。


「トイレにはそれはそれはキレイな、女神様がいるんやで」
曲のサビにあたるこの歌詞は、
おばあちゃんを亡くされた後の、
植村さんの生きる力に繋がる、
おばあちゃんからの魔法の言葉だと感じた。


この魔法の言葉を力に生きることが、
今ここに見える姿はなくても、
おばあちゃんとの日々、
想いを大切に生きることに繋がる。

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Q. あなたにはどんな魔法の言葉やそれに似た存在があるだろうか?
Q. その経験からどんな学びや気づきがあっただろうか?


グリーフはそこで止まったら
グリーフのままだけれども、
そこから何か力のような、温かな光を見出せた時、
人の魂はものすごく喜びを感じるんだと思う。


力や光を見出せる、そこに気付くまでには
それぞれに必要な時間がある。
グリーフのつらいところの一つに
いつこの暗闇が終わるのか、光が見えてくるのか分からない、
といった性質がある。

植村さんの場合は、
おばあちゃんの死を経験してこの曲の発表までに3年程かかっている。


グリーフが形を変えて力になるまで
数年単位で時間がかかることは決しておかしなことではない。
自然なことであり、その人なりに必要な時間がある。


私もこうして
特に響いた流産や離婚といった
自分のグリーフを力に生きるまでに
2−3年近く時間が必要だった。


あなたの場合はその時がいつなのか
私には分からないけれど、
その時がくる、と自分で決めることができたら、
必ずその時はくる。

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だからその日を楽しみに、
どうか自分を信じて、
今の時間を、自分を、精一杯生きてほしい。


あなたはもう十分よく頑張っている。
今日もいのちにありがとう。




お気持ちいただけると嬉しいです。いただいた温かいお気持ちは、悲しいいのちのご経験をされた女性の支援に使わせていただきます。