【選挙ウォッチャー】 東京五輪と新型コロナウイルス(#11)。
現在、東京都や神奈川県は「PCR検査が飽和する」という状態が起こっていて、つまり、限界量までPCR検査を実施しているけれど、必要な量にまったく追いついていないという状態に陥っています。
これは何を意味しているかと言うと、これからお盆休みに入ることもあって、ただでも検査数が限界に達しているところに、民間病院などのPCR検査がお休みになるもので、「新規感染者数」が一時的に落ち着いたように見えるかもしれませんが、実際には見えていないだけで、安心できる材料は一つもなく、お盆明けからとんでもなく感染者が増える(実際にはずっと感染者が増えていたのだけど、検査ができないから新規感染者数が落ち着いたように見えただけ)という現象が起こると予測されます。
東京や神奈川で起こっている地獄は、まだまだ酷い状態になることは避けられません。日本政府や東京都、神奈川県などは、今すぐに東京パラリンピックを中止し、オリンピック会場に段ボールベッドで構わないので、とにかく仮設の野戦病院を作り、そこで軽症の感染者たちに大至急の治療を行う必要があります。放置すれば放置するほど、この環境はどんどん悪くなっていく一方です。
■ 野々村真さんが重症になる
タレントの野々村真さんが、新型コロナウイルスに感染し、重度の肺炎となっているようで、酸素吸入器をつけて入院していることが明らかになりました。仕事の関係者が陽性になり、濃厚接触者となったため、PCR検査を受けたところ、野々村真さんに陽性が確認され、発熱や咳、倦怠感といった症状が出ていたそうです。
当初は「自宅療養」だったそうですが、今月5日に体調が悪化して、奥様が入院。そこで重度の肺炎であることがわかり、心電図と酸素吸入器をつけて予断を許さない病状になっているということです。野々村真さんは57歳です。原則を自宅療養とせず、すぐに病院にかかることができれば状況が変わっていたと思います。現在は入院しているということなので、無事に回復されることを心からお祈りしております。(※記事を修正しました)
■ 半数近い人が「自分は感染しない」と思っている
国際医療福祉大学の和田耕治教授らが、7月13日から3日間、首都圏の1都3県の20代から60代を対象にインターネットでアンケート調査をしたところ、自分が日常生活で新型コロナウイルスに感染すると思うかを尋ねたところ、「あまりそう思わない」か「そう思わない」と答えた人が、以下のようになりました。
20代:男性43%/女性42%
30代:男性41%/女性45%
40代:男性52%/女性48%
50代:男性55%/女性60%
60代:男性66%/女性70%
65歳以上にはワクチン接種が進んでいるため、ある程度、感染しないと考えている人が多いとしても、40代・50代はワクチンを接種しているわけでもないのに「自分は大丈夫だ」と思っている人が意外と多く、感染リスク認識が十分ではないという結果が出ました。
まず、自分たちのまわりにこれだけ感染者がいると、特に東京都や神奈川県は、かなり感染する可能性が高いと思われますが、「大丈夫だ」と思っている人は行動も緩くなりますので、非常に危険な状態にあると言っていいのではないかと思います。
■ 新型コロナを5類感染症にすると地獄が拡大する
現在、自称・国際政治学者の三浦瑠麗などが口々に提唱するようになってしまった「新型コロナウイルスを2類感染症ではなく、5類感染症にするべきだ」というアホアホ理論を、厚生労働省が真剣に検討していると産経新聞先生が報じ始めました。まずは、こういうニュースを出してみて、人々がどう反応するのかを見る「観測気球」の役割のある記事ではないかと見られていますが、とても危険なことが起ころうとしています。
どうして日本の政治がことごとくバカで無能なのかと言ったら、平熱パニックおじさんをはじめ、テレビに出演しているアホのコメンテーターが重宝されて、国立感染症研究所の教授のようなアカデミアの世界に生きる人たちの提言が無視されているからです。簡単に言ってしまえば、プロでもない有名人のコメントが採用されて、プロの提言が無視されているということ。
新型コロナウイルスは現在、「2類感染症」に分類されていて、結核やSARS、鳥インフルエンザなどと同等に扱われています。新種のインフルエンザが出てきた時には、新型コロナウイルスと同じ「2類感染症」として扱われることになっています。
対して「5類感染症」というのは、普通のインフルエンザ、子供がかかるような百日咳、手足口病、結膜炎、感染性胃腸炎(ノロウイルスなど)、クラミジアや淋病といった性感染症など。ざっくり言うと、そこまで人が死ぬようなことがない病気が「5類感染症」になっているという話です。国内で感染が確認されているラムダ株の致命率は9.3%だと言われており、感染したら1割の人が亡くなるようなウイルスを普通のクリニックで見るというのは、大変危険なことです。
そもそも「2類感染症」と「5類感染症」には、非常に大きな違いがあります。まず、「2類感染症」の場合は、設備の整った大きな病院や発熱外来でしか受診ができませんが、「5類感染症」の場合には、そこらへんのクリニックで普通に受診ができるようになります。そこらへんのクリニックで受診ができるということを「便利じゃん!」と思うかもしれませんが、今は普通のクリニックで診療を受け付けていないので、クリニックの待合室で待っていても感染リスクはそれほど高くありません。しかし、普通のクリニックで受診できるようになったら、さまざまな病気の人と新型コロナウイルスの感染者がごちゃ混ぜの状態でクリニックの待合室を利用することになり、とてつもない勢いで感染が拡大します。クリニックも一応は導線を分けると思いますが、それでも大きな総合病院とはかけられる人数が違いますから、どこまで分けられるかわかりません。つまり、性感染症のようにチンチンをどうにかしない限りは感染しなかったり、あるいは、薬があって感染したとしても死に至ることがレアケースな感染症の場合には、待合室が少しぐらい一緒でも大きな影響はないかもしれないけれど、死に至る可能性がそこそこ高い感染症を待合室にごちゃ混ぜにすると、とんでもないことになります。これが「5類感染症」に指定すると大変なことになる理由の一つです。
もう一つ、深刻な問題があります。現在、新型コロナウイルスは2類感染症に指定されているので、基本的には無料に近い状態で診療が受けられるようになっています。ところが、「5類感染症」になった場合は、診療にかかるお金が原則として自己負担となります。これから感染者が急増した場合には、税金での負担が非常に大きくなってしまうので、ある程度は自己負担をしてほしいというのが官僚の考えているところだと思います。すると、国民健康保険に入っていても3割は自己負担になり、モノクローナル抗体カクテルなんぞを打ってもらった場合には、一体、いくらかかるんだという話になってきます。ちなみに、レムデシビルは5日分で25万円だそうなので、3割負担で7万5000円。夫婦で感染したら15万円の出費です。お金がかかると、当然、お金のない人は「病院に行くとお金がなくなる」というメンタルが働くため、感染が疑われても病院に行かないということが起こり得ます。そうすると、ますます感染が広がります。「5類感染症」にしても全額税金負担にするんだという特別な措置を講じる法整備の可能性がゼロではないとはいえ、これから鬼のように増えることを考えると、国民に10万円配った方がトータルの金額ではマシではないかということになりかねませんので、僕は政府がやってくれるとは思っていません。
つまり、「2類感染症」を「5類感染症」に引き下げるというのは、余計に感染を拡大するだけで、バカのやることであると断じておきたいと思います。そして、この国は政治家も官僚も「バカの巣窟」になっているので、もしかしたら本当に「5類感染症」に引き下げて、新型コロナウイルスを余計に感染拡大するかもしれないということは伝えておきたいと思います。
■ 「オリンピックをやってよかった」が64%
読売新聞が8月7日から9日に実施した全国世論調査で、東京五輪が開催されてよかったと思うと答えた人が64%、「思わない」と答えた人がたったの28%しかいませんでした。
おそらく、この『チダイズム』を熱心に読んでいる方々にアンケートを取ったら、「思わない」と答える人の方が多いのではないかと思います。それはどうしてかと言ったら、東京五輪の裏で、とても深刻な医療崩壊が起こっていて、それが8月下旬頃にかけて、もっと深刻な感染爆発につながる未来が見えているからです。しかし、このような懸念を抱いている人は、日頃から新型コロナウイルスの情報をチェックし、これからどんな未来が待ち構えているのかを想定しながら生きている「マイノリティー」です。世の中のほとんどの人がウレタンマスクや鼻マスクで生きているのを見れば、人々の新型コロナウイルスに対する意識がどれだけ低いのかは一目瞭然でしょう。
この数字になるのは当然なのです。本来、政治というのは、鈍感な国民をも守るために先手を打って政策を進めていくべきものですが、日本の場合は国民が鈍感であるのをいいことに、「何もやらない」ということが横行しているのです。バカで無能な政治家たちの集団になっているのです。
■ 政令市ではPCR検査が飽和している
最近、僕がチェックしている偉い先生たちが「ここはもうダメだ、サチっている!」と言うようになりました。いよいよ「サチる」という言葉が飛び交い始め、正確な感染者数の把握ができなくなるという大変なことが起こり始めています。
先生たちの言う「サチる」とは「saturation(飽和)」という意味で、簡単に言うと「検査が追い付かなくなっている」という意味です。
前々から川崎市のPCR検査が限界に達していることはチェックされていましたが、「さいたま市」でも同様のことが起こっていて、政令市のような人口の多いところほど「感染者の数が多すぎて、PCR検査が間に合っていない」という現象が起こり始めています。ただし、世田谷区は政令市と同じくらいの人口を抱えていますが、「世田谷モデル」をやって、平熱パニックおじさんをはじめ、全国のバカどもからコケにされながらもPCR検査の拡充に踏み切ったため、今のところは、まだ頑張れているようです。
■ バカウヨ「なぜ高校野球を批判しないのか」
東京五輪のことは批判するのに、どうして高校野球のことを批判しないのか。さては、高校野球を批判したらヤケドすると思って批判していないだけなのだろう。ということで、バカがカラんできました。
僕はパラリンピックは中止するべきだと思っていますが、高校野球については「様子見」です。これは高校球児たちの青春がかかっているから甘く見てあげているからではありません。東京五輪とは何から何まで性質が異なるからです。違いについて、いくつかまとめてみました。
① 関係者人口がまったく違う。
② 海外からラムダ株などが持ち込まれる心配がない。
③ 未成年なので五輪選手のように新橋の居酒屋に行ったりしない。
④ 甲子園気分を味わうために球場のまわりが密になる可能性が少ない。
⑤ 全国から医師や看護師がボランティアで集められるイベントではない。
⑥ テレビ各局がジャックされ、朝から晩まで報道されることはない。
⑦ クラスターが発生して中止しようと思ったら、すぐにできる。
⑧ 会場が甲子園のみなので、広い範囲で感染する心配がない。
挙げればキリがないのですが、もし高校球児たちの間でクラスターが発生するようなことがあれば、その時は、すぐに甲子園を中止するべきだと考えます。東京五輪と違うのは、甲子園は「すぐに中止の決断ができる」という点がありますので、開催する前から一生懸命中止を求めなくても、様子を見る時間はあると考えています。
いずれにしても、開催の条件は「高校球児の間で感染が広がらない」ということが絶対です。これは高校球児たちの命や健康に関わる問題になりますので、難易度は高いですが、感染者が出ず、無事に大会が開催できることを願っているという感じです。ただ、僕より厳しい見方をしている人はたくさんいて、僕は「危険厨の中でも安全寄り」なので、「甲子園なんかやっていいはずがない」という人たちもいます。もっとこういう人たちの声に耳を傾けるべきだと思います。
■ 選挙ウォッチャーの分析&考察
赤字経営の店があって、売上をグラフにしたら、かなり悲惨なことになっていたとして、「でも、昔はこんなに売上が高かったんですよ」とか「アフターコロアの時代が来たら売上も回復するんですよ」と言ったところで、毎月の赤字は解消されません。今、この苦しい状態の中で「どんな手を打てるのか」を考えなければならないし、努力をしたからといって、必ずしも良い結果が出るとは限らないのだけれど、それでも「何かしないといけない」ことに変わりはありません。「放置をする」というのは赤字額を増やしていくだけで、待っているのは「破綻」です。「破綻だけは避けたい」と思うのであれば、手を打ち続けるしかない。その努力の過程で起死回生の一打が見つかる場合もあるという話です。ウルトラCというのは、コツコツ続けた努力の中から見つかるのです。