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【選挙ウォッチャー】 焼津市長選2020・分析レポート。

今年の取材は、これで終わりです。本当は12月20日の寒河江市長選、12月27日の四條畷市長選を取材したかったのですが、寒河江市長選は無投票当選の公算が大きく、年末の四條畷市は新型コロナウイルスが猛威を振るう中で、アホの吉村洋文知事がいる大阪府に出かけるのはとても危険だということで、早くも今年は取材納めとなってしまいました。取材はこれで終わりますが、記事は毎日リリースされる予定です。さて、今年最後の取材となった焼津市長選は、12月6日告示、12月13日投開票というスケジュールで行われました。ゴリゴリに土木利権を守るタイプでコンクリート中心の政治をするオールドスクールな現職と、東京大学医学部卒で地元の病院に勤務する30歳の新人という、今年を締めくくるにはピッタリの、最高に面白い選挙です。取材もスムーズに進みましたので、かなり納得の行く選挙レポートとなりました。

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中野 弘道 63 現 ゴリゴリの自民系支持
西田 秀  30 新 近隣都市の市議が支持

これほど見どころの多い選挙は珍しく、久しぶりに面白いレポートになることは確実です。医師の西田秀さんは、やや新自由主義的な一面が垣間見えるものの、コンクリートなどのハード面に予算を割くのではなく、子育て世帯への支援、高齢者向け医療の改革などのソフト面を公約の柱に掲げていました。まさに次世代の発想力を持った新人です。取材するまではポンコツかと思っていたのですが、実際に取材をしてみたら、そこそこ良い感じの戦いになっていました。


■ いわゆる「先生」は当選しにくいかもしれない

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今回、30歳で無所属の西田秀さんが焼津市長選で勝てるかどうかは、かなり注目でした。広島県では、三原市長選で35歳の岡田吉弘さんが、安芸高田市長選で38歳の石丸伸二さんが市長になるなど、一部で世代交代の波が起こっています。岡田吉弘さんは自民党推薦、石丸伸二さんは裏金問題で辞任した市長を支えていた副市長との戦いという特殊な環境にあったため、西田秀さんとは大きく環境が異なるのですが、それでも30歳の挑戦は、見ていて応援したくなるものがあります。僕はこの選挙を見た時、「これはワンチャン、大逆転劇があってもおかしくないのではないか」と思ったのに、なぜか票が伸びず、惜しい戦いにもなりませんでした。この「大きく負けてしまった」という敗因を考えた時に、組織力の違いはさておき、市民からの関心を得られていないことから、西田秀さんに対する期待感がなかったからではないかと考えます。本当は同年代から注目され、応援されなければならないのに、応援されているのが爺さん婆さんばかり。しかも、見ていると西田秀さんだから応援しているというよりは、「給食費を無料にする」みたいな公約を掲げているから応援しているように思われ、純粋に西田秀さんの人間性みたいなところが好きで応援している人が少ないのです。これは西田秀さんが「強い人間だから」ではないかと思うのです。強い人間、あるいは、強く見える人間というのは応援しなくてもできそうな気がしますが、弱く見える人間は応援しないとダメな気がします。よく考えてみると、僕がどうして応援してもらえているのかと思ったら、NHKから国民を守る党みたいなアホに酷いことをされているからだと思うのです。つまり、強い部分を見せるのではなく、弱い部分を見せることも有効ではないかと僕は思っているのです。安芸高田市長選で石丸伸二さんが勝ったのも、キャリアを捨てて「負けたらどうするんだよ!」という境遇に身を置いたことで、みんなが応援せざるを得ない環境にあったからだと思います。西田秀さんは、どうせ負けても医師を続けるのでしょうし、医師ということで、街頭演説でも「教えてあげる」という口調になっていたことが敗因だと考えます。集まっている爺さん婆さんに「世の中はこうなっているから、こうした方がいいんですよ」という感じで、教えてあげているような演説になっていたのです。しかし、橋下徹さんの街頭演説がわかりやすいのですが、市民に「おかしいと思いませんか?」と呼び掛けた方が票は伸びます。もしかすると、教師や医師のように日頃から「先生」として活躍している方々が陥りやすいところなのかもしれませんが、みんなで「おかしいと思う」という気持ちを共有することを目指した方がよかったのではないかと思います。


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