見出し画像

【選挙ウォッチャー】 品川区長再選挙2022・分析レポート。

 11月27日告示、12月4日投票で、今年2度目の品川区長選が行われました。前回は10月2日に行われましたが、6人による大激戦の末、法定得票数を満たした者がいなかったことから、全国的にも珍しい「再選挙」になってしまいました。
 前回の品川区長選に立候補した6人のうち、5人は再び立候補。最下位だった「品川に維新を起こす会」の大西光広さんは7821票しか取れず、順位的には1位だった森沢恭子さんとは2万票以上も差をつけられていることから、品川区長選での当選は非常に難しいと判断し、品川区議補選に回りました。
 しかし、この混戦をチャンスを睨んだのか、それとも、区議補選に立候補してくる国民民主党の候補を勝たせるためなのか、新たに元区議の石田慎吾さんが立候補することになり、品川区長再選挙は6人による戦いとなりました。「また再選挙になってしまうのでは?」という懸念もありますが、おそらく再々選挙を避けようとする心理が働き、さすがに今回で決着するのではないかと思いました。

森沢 恭子 44 新 無所属(元都民ファーストの会)
石田 秀男 63 新 自民党推薦
山本 康行 46 新 松原仁の秘蔵っ子
西本 貴子 62 新 自由を守る会が応援
村川 浩一 75 新 共産党推薦
石田 慎吾 43 新 国民民主党推薦

 今回も共産党が立候補していますが、前回の選挙では遠く及びませんでしたので、さすがに今回も厳しいと思います。また、西本貴子さんはトップの森沢恭子さんとは9000票あまり離されており、この数字を挽回するのはかなり厳しいと思います。石田慎吾さんは今回から参戦ですが、松原仁さんが圧倒的に強い地盤で国民民主党が力を発揮できるとは思えず、実質的には森沢恭子さん、石田秀男さん、山本康行さんの三つ巴という感じの情勢ではないかと思います。
 森沢恭子さんにとっては、前回の再選挙で1位だったという事実が非常に大きく、「だったら森沢恭子さんでいいじゃん」という票が乗っかる可能性がありますので、最も上積みが見込めるという意味で有利なのではないかと思います。


■ 村川浩一候補の主張

 今回、最も苦戦が予想されるのが、共産党推薦の村川浩一さんです。
 前回のレポートでも紹介しましたが、福祉のエキスパートで、もし区長になって議会の反対もなく仕事をさせてもらえたら、それはもう品川区が日本で最も住みやすい街になることでしょう。なにしろ、ほぼすべての予算を福祉に充てるでしょうから、みんなが住みやすくなった結果、どんどん人が集まるようになって、自然と再開発が進み、地価が上がるという好循環になると思います。
 しかし、誰もそんなことは望んじゃいません。この国の人たちが求めているのは、住みやすくなることでもなければ、福祉が充実することでもないからです。では、何を望んでいるのかと言うと「共産党じゃない区政」。なぜ共産党じゃない区政を望むのかと言ったら、「みんなが共産党じゃダメだと言うから」です。

まさかハゲた共産党の爺さんが本当はスゴい人だなんて誰も思わない

 選挙のことなんて、誰も真剣に考えていません。おそらく過半数の人が共産党のハゲたオッサンのことを最初から選択肢に入れていないし、プロフィールを知ろうともしないでしょう。知ったところで投票しないかもしれません。
 しかし、ホゲホゲしていそうに見えますが、村川浩一さんは、本当は頭脳明晰のスーパー爺さんです。行政経験こそありませんが、福祉のことは誰よりも熟知しているので、品川区にどの分野のどんな福祉が足りていないのかを的確に述べており、これらの福祉をしっかりケアできれば、赤ちゃんからお年寄りまで受けるべき行政サービスがしっかり整うに違いありません。品川区は税収に困っているはずがないのに、福祉にまったくお金が回されていません。これは、街を再開発するディベロッパーやゼネコンにお金を回す政治が長年続けられてきた証拠です。逆に言えば、こうした再開発にお金を回すことを止められてしまうと、途端に都合が悪くなってしまう人たちがたくさんいるもので、「共産党だけは絶対にダメだ」ということになっていくわけです。

品川区に足りないのは「お金」ではなく「心」だと主張する村川浩一さん

 言うまでもなく、品川区は財政に困窮しているわけではありません。日本の名だたる企業が品川区にあり、税収は非常に潤っているはずです。にもかかわらず、いまだに学校給食費が無償化されておらず、医療費も無償化にされていないというのは、単純に「予算のかける場所がおかしいだけ」。いかに利権にお金を費やしてきたのかを表しているとも言えます。福祉にお金をかけなくても良いという社会を政治家たちが作ってきた証拠であり、今なお有権者たちは「福祉にお金をかける候補」を選びません。日本が衰退してきた原因は、まさにここにあるのではないでしょうか。


ここから先は

9,162字 / 20画像

¥ 340

いつもサポートをいただき、ありがとうございます。サポートいただいたお金は、衆院選の取材の赤字分の補填に使わせていただきます。