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【選挙ウォッチャー】 NHKから国民を守る党・動向チェック(#279)。

 今年の秋にも行われる衆院選に、「古い政党から国民を守る党(旧・NHKから国民を守る党)」から、何かと物議を醸し出している中学生YouTuber「ゆたぼん」の父である中村幸也が立候補するという。
 ご存知の方も多いと思うが、「ゆたぼん」とは、小学校時代から学校に行かないことを宣言し、「少年革命家」を名乗り、生意気な発言を繰り返すことで話題になってきた男の子である。今は中学1年生だが、義務教育を放棄しているので学校には行っていない。世の中には、さまざまな事情があって学校に馴染めず、不登校になる子供はいても、「ゆたぼん」の場合、それとは事情が異なるため、嵐のような批判を浴びているのだが、その批判の多くは「ゆたぼん」本人にではなく、「ゆたぼん」を学校に行かせない父親に対してである。
 しかし、「ゆたぼん」の父である中村幸也は、このたび立花孝志の「諸派党構想」に乗っかって、「ゆたぼん党」や「不登校党」といった類の政治団体を設立し、衆院選に立候補することを決めたという。もともと立花孝志とは親交があって、「ゆたぼん」の誕生日パーティーに立花孝志が参加しているほどだ。そして、立花孝志はかねてからラブコールを送っており、このたび、衆院選への立候補を快諾した形である。ただ、このニュースはTwitterのトレンドに上がるほど大きな話題となり、コメントのほとんどはネガティブな意見となっている。歓迎している人はほとんどいないのが特徴だ。


■ 「ゆたぼん」の将来を案じる人は多い

 なんだかんだ言って、世の中は学歴ですべてが決まるわけではない。中卒でも立派に活躍している人はいるし、一流大学を卒業しても全然イケてない人生を過ごす人もいる。だから、良い学歴であることが必ずしも人生を豊かにするわけではない。しかし、小学校や中学校で学ぶ授業や体験はとても大切で、だからこそ学校に馴染めずに不登校になった子供たちに、どう教育をカバーするのかを専門家たちが話し合い、さまざまな試みが行われているのである。
 しかし、「ゆたぼん」の父親らは、学校に行かなくても、さまざまな大人たちと触れ合うことで、学校では学べないことを学べているので、この時間こそかけがえのないものだと考えているようだ。たが、残念ながら「ゆたぼん」が学んでいる大人たちは、立花孝志をはじめ、世間からは鼻をつままれているような人たちばかりである。
 例えば、野球を教えてもらうにしても、イチローや大谷翔平といった一流選手に教えてもらうならともかく、あるいは、イチローや大谷翔平を生み出したような少年野球の監督に教えてもらうならともかく、ゆたぼんが教えてもらっている相手は、スタジアムで選手に汚いヤジを飛ばし、ビールの売り子の姉ちゃんのケツを触って喜ぶ素人の変態オジサンたちである。これで野球がうまくなるかと聞かれたら、誰もが「うまくならない」と答えることだろう。そもそも教えてもらう相手を間違えると、ろくなことにならないのである。それで、「ゆたぼん」は今、選手が嫌がる汚いヤジばかりが上手くなっている状態なので、どこからどう見ても明るい未来が待っているとは思えない。だから、多くの人が「ゆたぼん」の将来を案じているのだ。


■ 悪い大人の宣伝に利用されている「ゆたぼん」

 いくら「ゆたぼん」の父親がアホだったとしても、結局のところ、「ゆたぼん」に罪はない。なぜなら、彼はまだ未成年で、その責任は保護者が負うものだからだ。すべての父親が素晴らしい人間であるとは限らないし、私が父親になったとしても、私が素晴らしい父親であるとは限らない。でも、どうして「ゆたぼん」の父親にばかり批判が集まるのかと言ったら、それは未成年の子供が、悪い大人たちに利用されているからだろう。
 百歩譲って、父親に利用されるのはまだ良いとしよう。本当はちっとも良くないかもしれないが、この際、一旦置いておく。今回、「ゆたぼん」の父親が「古い政党から国民を守る党(旧・NHKから国民を守る党)」から立候補することは、立花孝志に利用されているとしか言いようがない。しかも選挙に利用されているのではなく、実質的に、立花孝志の「金融工作」に利用されているようなものだ。
 かねてから指摘されていることだが、「古い政党から国民を守る党」には約5億円の借入金がある。これらの借入金は2025年までに返済するという約束になっているが、今のところ、返済できる見込みが立っているとは言えない。ついでに、この約5億円の借金は「衆院選の準備金」という名目で借りたのだが、既に大部分はどこかに消えてしまったため、これから立候補する人は、原則として供託金300万円(比例ブロックの名簿に名前を載せるとなると600万円)を自腹で用意しなければならないという。供託金を用意させ、獲得した票に応じて手数料を引いて割り当てると言っているのだから、完全に立花孝志の「金融工作」に利用されているのである。どこかのヤクザがやっているならともかく、国政政党の代表が堂々とやっているのだから、この国の経済が新型コロナウイルスでとんでもなく破壊されてしまうのは当然かもしれない。


■ 俳優の死さえ利用する立花孝志

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 立花孝志が掲げる「諸派党構想」の問題点は、「古い政党から国民を守る党」というプラットホームを利用し、世の中のイカれた主張までテーブルに並べてしまうところである。例えば、この「諸派党構想」をめぐり、日頃から立花孝志と仲良くしているジャーナリストが「三浦春馬党」なるものを提案。なんでも三浦春馬さんの真相を解明するための党だそうだが、この提案を立花孝志はリツイートし、やりたい人がいるなら認めると言っていた。
 今なお多くのファンが心の中で大切にしている存在を、勝手に政治利用したあげく、どんな陰謀論か知らないが、「本当は他殺かもしれない」などとデマを流し、土足で踏み散らかすのである。もはや立花孝志にとって、未成年の中学を利用することなんて朝飯前。人々が一生懸命大切にしていることさえ、一切の配慮なく、自分たちの金のために利用するのである。


■ これで衆院選の票はさらに減ることになった

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 今回、「古い政党から国民を守る党」から「ゆたぼん」の父親を立候補させることを発表し、久しぶりに「立花孝志」という言葉がTwitterのトレンドとして取り上げられるほど大きな話題になった。最近はほとんど忘れ去られていただけに、立花孝志のモチベーションが上がったのか、ニュースが話題になった後は狂ったように新しい動画をアップしていた。
 しかし、今回の発表による効果は、立花孝志や「古い政党から国民を守る党」にとって、非常に大きなマイナスになったと分析している。当たり前の話だが、例えば、どこかの区議のように、女子高生の前でチンチンを出したことがニュースになったとして、「変態」としては大きな話題になるかもしれないけれど、そんな「変態」には絶対に投票したくない。つまり、どれだけニュースで話題になっても、そのニュースの内容次第では、むしろ投票したくなくなってしまうのである。選挙においては「悪名は無名に勝る」なんていうことにはならず、「悪名は票を失う」でしかないのだ。
 義務教育の学校に行かないことを肯定している「ゆたぼん」の父親は、かなり極端な思想の持ち主だ。というのも、子供に学校教育を受けさせる必要はないと主張していて、どれだけいろんな人に心配されても、自分の子供を学校に通わせようとはしない。今のところ、この極端な思想の被害者は「ゆたぼん」だけであり、私たちの子供が学校に行けなくなるわけではないのだから、「ゆたぼん」には可哀想かもしれないけれど、本人も満足しているようだし、保護者もアレなのだから、まったく赤の他人である私たちにとっては「まあ、いいか」ということで済まされるかもしれない。しかし、もし間違えて「ゆたぼん」の父親が政治家になってしまうと、その時は逆に、自分の子供が学校に行くことを政治の立場から否定されかねないのである。
 そんなことにでもなったら大変なので、多くの人は「ゆたぼん」の父親が政治家になることを望んでいない。それどころか、こんな人が政治家になったら日本は終わると思っているくらいである。なので、こんな人を擁立してくる立花孝志に対しても多くの人は嫌悪感を抱くし、こんな政党には断固として投票したくないと思うものである。立花孝志と「ゆたぼん」の父親のコラボレーションは、これ以上ないくらいに「最悪の組み合わせ」だったようである。


■ 立花孝志が勘違いしていること

 どうして一時的にでも立花孝志が人気だったのか。それは、日本でほぼ唯一、NHK問題に取り組むことを宣言していたオジサンだったからだ。つまり、支持している人は、立花孝志が好きだったのではなく、NHK問題に取り組むと宣言している人が好きだったという話である。
 ところが、立花孝志は「立花孝志という存在が人気なんだ」と考えた。そのため、立花孝志という人間なら何をやっても支持してくれると考え、とうとう政党名から「NHK」の3文字を外してしまった。相変わらず、お得意の口八丁で「NHK問題はこれからも取り組み続ける」などと適当なことを言っているが、既にNHK問題はワンイシューではなく、「ゆたぼん」の父親が主張する「学校に行かなくてもいいじゃん」と同じテーブルに並べられた「たくさんある中の一つ」に格下げとなっている。
 立花孝志が今日まで、さまざまなトラブルを起こし、世間から嫌われるようなことを繰り返しても根強く支持されてきたが、それは「NHK問題に取り組んでくれるオジサン」だからである。立花孝志が天才的な能力の持ち主だからではない。実際、立花孝志に「天才的な能力」なんて微塵もなく、選挙は31連敗中で、裁判も負けまくり。最新の動画では「NHKは絶対に勝てる相手にしか裁判を仕掛けてこない」なんて言い訳をしていた。するってぇと、立花孝志はこれまで何度もNHKに訴えられ、そのたびに敗訴を繰り返してきたわけだから、その理屈は当たっていると言えば当たっているのだが、立花孝志はNHKから「絶対に勝てる相手」だと思われているということになる。「法律のプロ」を自称していながら、NHKのカモになっているのだから、こんなにダサい話はない。
 そんなタイミングで、生命線であるはずの「NHK」の3文字を外してしまったのだから、海の中で酸素ボンベを外したようなものである。これから立花孝志の人気は海の底の方まで下がり続け、かつて東京都知事選のポスターにまで利用していた森友学園の籠池泰典理事長のようにモメて、結局のところ、「ゆたぼん」の父親が立候補することはなくなるかもしれない。いずれにしても、今度の衆院選や参院選で2%以上獲得するのは夢のまた夢である。


■ 選挙ウォッチャーの分析&考察

 6月20日には「33連敗」という大記録がかかった魚沼市議選が行われる予定だが、今のところ、定数20に対し、23人ほどしか立候補しない見込みとなっている。前回は定数20に対し、22人しか立候補しなかったために、N国党の大桃聰が当選してしまっているので、今年も23人しか立候補しないとなると、微妙に当選する可能性が出てきている。
 今のところはまだ発表されていないが、船橋市議補選には少なくとも5人くらいの候補者が擁立される予定となっており、その後は、7月4日の東京都議選で、練馬区から松田美樹(新宿区議に当選したが、居住実態がなかったために当選無効となり、多大なるご迷惑をかけた)が立候補し、大田区からは片岡将志(元引きこもりで、N国党のボランティアに参加したことをキッカケに外に出るようになった)が立候補。7月11日の三郷市議選に日高千穂が、奈良市議選に竹島啓太が立候補する予定となっている。一応、これらの選挙では「落選濃厚」となっており、さほど大きな心配は必要なさそうではあるが、どうせ当選させても税金が無駄に使われるだけなので、該当する自治体にお住まいの方にはご注意いただきたい。
 なお、これらの自治体では供託金が没収されなければ、N国党の関連会社に選挙費用の公費負担によって利益が出るようになっている。選挙さえヤツらの金儲けに使われているのである。

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