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【選挙ウォッチャー】 参院選2022・参政党とは何なのか?(#2)。

 今度の参院選で、最大3議席を獲得してもおかしくないとみられている新興政治団体「参政党」。前回の参院選で議席を獲得した「NHKから国民を守る党」「れいわ新選組」と同じように、インターネットを中心に話題となり、急速に支持者を拡大しています。
 なぜ「参政党」が、そんなに話題になるのか。それは、日本に限らず、世界に共通して「陰謀論やフェイクニュースには数字がある」からです。アメリカでトランプ大統領が熱狂的な支持者をたくさん生み出したように、あるいは、フィリピンで歴史的な独裁者のフェルディナンド・マルコスの息子がフェイクニュースを研究して大統領になったように、今、世界中で陰謀論やフェイクニュースが溢れ、踊らされる人々が絶えません。もちろん、日本も例外ではありません。


■ 「コロナは風邪」は、新たなポピュリズム

 世界中で新型コロナウイルスが流行し、僕たちの生活は大きく変えられてしまいました。どこかに行くにもマスクを着けなければならず、みんなでワイワイと酒を飲むこともできなくなり、結婚式を自粛したり、高齢の家族との旅行を自粛したり、まさに「不自由な暮らし」だと思います。
 ましてや、この自粛生活に終わりが見えません。次々に新しい変異株が入ってきて、しかも、その変異株にはワクチンが効きません。このままでは何年もこの「不自由な暮らし」を強いられるのではないかという不安に苛まれます。

参政党の主張は「反ワクチン」にとどまらず、「反マスク」まで展開している

 そこに来て「参政党」は、「コロナはただの風邪」だと主張し、「ワクチンを打つ必要もないし、マスクをつける必要もない」というトンデモ理論を打ち出します。しかも、それを言うのがズブの素人ではなく、大学教授の武田邦彦さんや、歯科医の吉野敏明さんなど「専門家っぽい人たち」です。そうすると、常に猫のぬいぐるみを小脇に抱えている不思議なオバサンが言っていることも、真実のように思えてきて、脳味噌がアハついてしまいます。


■ 政治と「コロナは風邪」の歴史

最初に「コロナはただの風邪」で注目された平塚正幸の「国民主権党」

 新型コロナウイルスが日本でも猛威を始めたのが、2020年2月。ダイヤモンド・プリンセス号の中でクラスターが発生し、当時の安倍晋三総理がいきなり学校を閉じたり、アベノマスクを配ったり、かなりバタバタした対応を取るようになり、その年の7月に行われた東京都知事選で「コロナはただの風邪」だと主張して話題になったのが、「国民主権党」の平塚正幸でした。

 実は、平塚正幸は2019年の参院選で「NHKから国民を守る党」の公認で千葉県選挙区から立候補し、熱烈なN国信者となったため、「国民主権党」の分析については「参政党」以上に進んでいます。

 そして、平塚正幸が展開する「コロナはただの風邪」という主張で支持者を拡大する方法は、尊師・立花孝志も大絶賛。自分たちも「コロナはただの風邪」と言えば支持者を拡大できると考え、立花孝志にいたっては、新型コロナウイルスに感染し、血中酸素飽和度が95%を下回り、号泣しながら入院したことがあるのに、退院した瞬間に「やっぱりコロナはただの風邪」と言い出し、人々を呆れさせました。
 しかし、今のところ、立花孝志はどこでもノーマスクを貫き、「コロナはただの風邪」だと言ってはいるものの、こちらにはあまり支持が集まっていません。理由は簡単で、ものすごくバカだからです。

 副党首の大橋昌信や古参メンバーの遠藤信一は、「血液中のコロナウイルスを殺す」と言い出し、強アルカリ性の亜塩素酸ナトリウム水溶液(ほぼキッチンハイター)に、酸性のクエン酸を混ぜ、「混ぜるな危険」の毒ガスを発生させてから、それをリンゴジュースで割って飲むという、致死レベルの頭の悪さを披露。その動画をマネしたオバサンが深夜救急に駆け込む事案が発生し、宇都宮市議の遠藤信一は議会で謝罪までしました。

 同じくN国党の幹事長・黒川敦彦は、「マスクの裏にワサビを塗ればコロナは撃退できる」と主張。鼻にワサビチューブを2本詰めるぐらいがちょうどいい頭の悪さを発揮し、いざ新型コロナウイルスに感染すると、鬼のように漢方薬をチャンポンしながら飲み、コロナ陰謀論者たちから「PCR検査を信じて『コロナに罹った』と大騒ぎしている黒川敦彦はニセモノ」と烙印を押され、界隈から破門されました。
 なので、新型コロナウイルスを使った陰謀論では、「参政党」より「NHKから国民を守る党」「国民主権党」の方が先行していたものの、彼らが育て上げた票田をすべて持っていこうとしているのが「参政党」であるとも言えます。どうしてこれができたのかと言うと、「参政党」の方が「専門家っぽい人が言っている」ということが大きいです。


■ 合言葉は「おはよう」、目覚める人々

参政党のトンデモ陰謀論を熱心に聞き続ける人たち

 多くの人は「新型コロナウイルスは、ただの風邪ではない」と思っています。いくらオミクロン株に変わったとはいえ、致死率の高さ、後遺症が残る確率などを見れば、インフルエンザの比でもなく、もちろん、普通の風邪とは比べ物にならないくらいに危険であることは、説明する必要もないほどです。ありとあらゆる科学的なエビデンスもあります。
 しかし、専門家っぽい人たちから、それっぽい話を聞かされ、ついにはインターネットで「新型コロナウイルスの真実」みたいなワードで検索をするようになると、フェイクニュースや陰謀論はそこらへんにゴロゴロ転がっているため、「ちゃんと検索をしたら、みんなが知らない情報が出てきた」という体験をすることになります。これがいわゆる「ネットde真実」という現象で、脳味噌をアハつかせ、「テレビや新聞が報じない真実がネットにはあるんだ!」と言って、目覚めることになります。

参政党のキャッチフレーズは「国民の眠りを覚ます」

 ズバリ、「参政党」のキャッチフレーズは「国民の眠りを覚ます」です。
 日頃から「新型コロナウイルスに感染したくない」と言って、ワクチンを打ったり、マスクを着けたりしている人たちは、テレビや新聞などのメディアに洗脳され、眠ったままになっている人たち。しかし、自分たちはちゃんとネットで真実に気づき、いわば「目覚めた日本人」であり、今こそ目覚めた人たちで日本を変えなければならないんだ・・・というのが「参政党」が採用しているストーリーです。
 目覚めたと言っても、「違う世界に目覚めてしまった人たち」でしかないのですが、彼らは集まった人たち同士で挨拶をします。「おはよう」

参政党のテーマソングのタイトルも「おはよう」である

 先日、N国党も「オウム真理教をベンチマークした」というN国版・尊師マーチを披露していましたが、ポピュリストたちの心をくすぐる政党や政治団体は、テーマソングを作りがちです。
 参政党の物販ブースで売られているテーマソングは、「おはよう」というタイトルで、「さぁ目覚めよう」と書かれています。
 これまでロリコンの平塚正幸が展開してきた「マスクを外そう」みたいな荒唐無稽な主張であっても、信じる自分たちは「目覚めている民」、批判してくる人たちは皆、テレビや新聞に洗脳されて真実に気づかない「目覚めていない民」と括ることで、まるで自分たちが賢く、真実に気づいた自分たちこそが日本を救う存在ではないかという気持ちにさせられます。自分たちこそが正しいと信じて疑わないので、暴走をすると大変なことになります。
 実際のところ、「参政党」の主張はほぼ「神真都Q」ですが、彼らは子どもにワクチンを打つ医師たちが、本当に子どもたちに酷いことをしていると信じ込み、襲撃事件を起こしています。

参政党の著書を抱えながら熱心に演説を聞く聴衆たち

 しかし、「参政党」が街のあちこちで街頭演説をするたび、目覚める人たちが増えるばかりです。新型コロナウイルスに限らず、「日本は子どもたちに大変な反日教育をしている。敗戦国だと教えられているので、子どもたちが自信を失っている」という主張もそうです。普通だったら「んなわけあるかいな!」の一言で片付きそうなものですが、日本の衰退を肌で感じられるレベルになっていることもあり、「それでも日本は素晴らしい!」と言われると、なんだか嬉しくなってしまい、「ひょっとして日本が衰退している原因は教育にあるのではないか」と考えてしまう人も現れるのです。
 確かに、日本は第二次世界大戦で負けました。とはいえ、玉音放送を聞かされている当時の中学生じゃあるまいし、「もう日本はダメだ。戦争で負けたから何をやってもうまくいかないんだ!」と自信をなくしている子どもなんて見たことがありません。むしろ、敗戦したにもかかわらず、見事な復興を遂げ、凄まじい成長曲線を描いて発展を遂げた歴史の方が輝いているのではないでしょうか。
 でも、政治経験者や大学教授といった、一見するとスペシャリストっぽい人たちが「反日教育なんだ」と言ってしまうもので、ネトウヨ方面に目覚めてしまった民たちが「参政党しかない!」と言い出し、ますます支持をしていきます。

演説を聞き終わり、物販ブースに並ぶ「目覚めた人たち」

 質疑応答スタイルで、たっぷりと街頭演説を聞いた聴衆たちは、登壇者と握手をできたり、サインをしてもらえるということで、さっそく物販ブースに並び、本やCD、Tシャツといったグッズを買います。ここは秋葉原ですが、まさに秋葉原で活躍するアイドルたちも羨む光景が広がっていました。
 こうして彼らは「目覚める」と言いながら、よりディープな世界へと誘われることとなり、再び「現実の世界」に戻って来た頃には、ずいぶんと景色が変わっているのかもしれません。どちらかと言うと「おはよう」と言うよりは「おやすみなさい」の近いのではないでしょうか。


■ 「参政党」に殺されるN国党

今では駅頭に立っても、ほとんど無視されてしまう尊師・立花孝志

 飛ぶ鳥を落とす勢いの「参政党」と対照的に、着実に人気を落としているのが「N国党」です。(ちなみに、正式名称は「NHK党」ですが、我々はこの名称を認めていないので、あえて「N国党」と呼んでいる。)
 今さら「NHKをぶっ壊す!」と言ってみたところで、「いつになったら壊れるんだよ!」と言われるだけで、どれだけもっともらしいことを言っても、ほとんど聞いてもらえません。実は、かつてYouTubeの広告収入を得るために、尊師・立花孝志に張り付いていたYouTuberたちが、今ではこぞって参政党の街頭演説を中継するようになりました。やっぱり「参政党」の方が数字が取れるということのようです。
 炎上をすることによって、ネット上の話題を独占し、アホの1票を取り込む作戦を展開していたN国党にとって、話題性で上回る政党が出てきてしまうことは大きなマイナスで、いわば生命線を奪われた状態にあると言っても過言ではありません。

 そこに来て、昨日のレポートでも書いた通り、「参政党」「NHKから国民を守る党」の選挙戦略をパクって、各都道府県の選挙区に、カカシのように候補者を立てまくる戦略を取っているため、必然と「NHKから国民を守る党」が取れる票は少なくなり、政党要件を満たすための「2%以上の得票率」というノルマさえ超えられないかもしれません。
 もし2%のハードルを超えられなかった場合、N国党の借金は返済できなくなり、年末を迎える頃には「4度目のおかわり借金」をお願いしなければならなくなることでしょう。立花孝志がシャバにいられる時間は、どんどん短くなっています。参政党が躍進すれば躍進するほど、尊師・立花孝志はどんどん眠れなくなってしまうので、こっちには24時間、いつでも「おはよう」と言ってあげましょう。


■ 選挙ウォッチャーの分析&考察

赤尾由美さんに抱かれている猫のぬいぐるみ

 ということで、「参政党」は、こんなに混沌とした時代だからこそ生まれてきた政党だと思いますし、こんなに混沌とした時代だからこそ一部のコアな支持者から熱烈に応援されているのだと思います。
 こうした陰謀論者たちが国会で議席を取り、さらにはメディアも使って大きな声で陰謀論を発信することは、とても看過できることではありませんけれども、もっと酷いカルト政党が既に国会の議席を取り、今も大きな声を出しているわけですから、その延長線上にあるとも考えられます。
 だからこそ、政治をよく見て、選挙で誰に投票するべきかとしっかりと考えて、「うっかりとした1票」を入れないことが大切なのだと思います。その一助になるように、僕も偏ることなく、皆さんにしっかりと政治や選挙の今をお伝えしていきたいと思います。

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