【選挙ウォッチャー】 奥多摩町長選2020・分析レポート。
一応は東京都であるけれど、実際は「東京都」というイメージからはかなり程遠い奥多摩町。この地を訪れるのは、昨年の秋、紅葉が美しい季節に奥多摩町議選を取材して以来なのですが、当時はたくさんの観光客がいて、みんなが思い思いに奥多摩の大自然を満喫していました。新型コロナウイルスのせいで、自由に観光することもできなくなって、例年だったらこの時期はたくさんのキャンプやBBQを楽しむ人たちで溢れていたはずなのに、今年は一人もおらず、町は閑散としていました。奥多摩町こそ都心から大自然を求める観光客を相手に商売しているような町ですが、なにしろ観光客が一人もおらず、これからもしばらくは観光客が増えるとは思えないのですから、経営はかなり厳しくなることでしょう。そんなタイミングで行われた奥多摩町長選。5月12日告示、5月17日投開票だったのですが、この選挙でも大きな変化がありました。
河村 文夫 76 現 自民党推薦
師岡 伸公 66 新 都民ファーストの会推薦
かなり珍しい構図なのですが、奥多摩町長選は「自民党vs都民ファーストの会」という形の保守分裂選挙になりました。現職の河村文夫さんは、これまで4期16年も町長を務めてきた人物です。町では古くから町長として慕われてきた人物であり、通常であれば、どんな相手が来ても横綱相撲で再選は確実と見られていたことでしょう。しかし、番狂わせが起こったのは、やっぱり「新型コロナウイルス」です。こちらもコロナ禍の選挙ならではのユニークな選挙戦略が展開されていましたので、コロナ禍が続く限り、しばらくは有効だと思います。
■ 外から来る人間を拒絶する町
この時期、奥多摩町はたくさんのハイキングやキャンプ、BBQを楽しむ観光客で溢れている時期だったはずです。都心から車や電車で2時間もあれば味わえる圧倒的な大自然。個人的には、家族単位でキャンプやBBQを楽しむのであれば、家で過ごしているのと何も変わらないので、気分転換にBBQをしても良いのではないかと思いますが、お店の人とは接触しなければならないため、やっぱり難しいのかなと思います。
地元のコンビニも「来町自粛お願いします」という貼り紙を置くほど。「来店自粛」だったら分かるけど、このコンビニの前に立っているということは既に来町しちゃっていると思うので、この貼り紙に意味があるのかと思うところではありますが、なんだか申し訳ない気持ちになって、そそくさと町を出る効果を狙っているのでしょうか。一方で、近くに出し巻き玉子の専門店があるらしく、観光客も来なくなって売上が激減しているのでしょう。「お弁当あります」の幟を設置するのに苦労していて、コンビニは「来るな」と言っているけれど、近所の飲食店は「来てくれ」と言ってしまう奇妙な光景が広がっていました。ただ、この「来町自粛要請」は、NHKのニュースにもなっており、幸いにも奥多摩町には江ノ島のような渋滞は起こっていませんし、自然を満喫するために散歩している人も見かけませんでした。河村文夫さんはそんなに悪い町長ではなく、一律の給付金は国から支給される10万円のほかに、町が独自に2万円を補助したり、来町自粛を呼びかけたために町民の感染を予防することに成功しました。また、症状があったらすぐに病院などの関係機関に遠慮なく相談をしてほしいと呼びかけていました。積極的に町民を救おうというスタンスが見られます。
キャンプ場はこれからがハイシーズンで、いかに多くのお客さんを入れられるかが勝負なのですが、今は営業を自粛しています。早ければ6月にも普段通りの営業ができるようになるかもしれませんが、完全に不安が払拭されたわけではないので、まだまだ「みんなでBBQをしよう」というテンションにはならないことでしょう。そうすると、1回限りの休業協力金や持続化給付金をもらったところで、それでは賄いきれないぐらいの損失が出ることは間違いありません。新型コロナウイルスの感染拡大が収まり、多少は自由に行動できるようになったとしても、第2波や第3波を恐れ、みんなが安心してキャンプやBBQができるようになるのはまだまだ先です。まさに奥多摩町は、同日に市長選が行われた小田原市と同じように、新型コロナウイルスの影響を全力で受けているような所であると言えます。
このような環境的な要因があった上で、勝った新人の師岡伸公さんは、どのような戦略に出たのか。これは「都民ファーストの会」が再び力を持つようになってきていると同時に、「大阪維新の会」がさらに勢力を拡大することを予測するレポートになります。少なくとも、今度の7月に行われる東京都知事選で小池百合子さんが圧勝することはほぼ確実ですが、もしかすると来年の東京都議選でも都民ファーストの会が勝つかもしれないことを示しています。現場で見ているからこそ、その空気を察することができるのです。
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