"生きづらさ"を感じている人へ | 心を取り戻すための3つの習慣
30代になって「生きづらい」と感じることが多くなった。
理由のひとつは、32歳から始めた不妊治療だ。
周りに同じ境遇の人がいない、孤独な通院生活を仕事と両立していた。
流産を繰り返していた時期は、誰かの「妊娠・出産・子育て」の話題には敏感に胸を痛めてはいつも泣いていた。
少し触ると張り裂けてしまうようなギリギリの精神状態だった。
会社へ出勤していた時代は、HSPの気質に悩まされた。
外部からの刺激をキャッチしやすいせいで、周りの話し声やBGM、室温までに気を取られて仕事が捗らないことがあった。
「Highly Sensitive Person(生まれつき敏感で、周りからの刺激を過度に受けやすい人)」という気質の存在を知るまでは、自分はただ不器用で仕事ができない人間なのだと思い込んでいた。
さらに、心配性で用心深い父の影響で、わたしは元々「不安がり」な性格だ。
ほとんどの人に「考えすぎだよ」と笑われてしまうような「起きる可能性の低い不安」が起きてしまったらどうしよう、と本気で考えていたりする。
今も子どもを産み育てていると、さまざまな不安が増大していく。
最近悩んでいるのは、パニック症。
車の運転では強い恐怖感に襲われ、意識を失いそうになるし、混雑した交通機関では息がしにくい。すぐに脱出できない高速道路や長いトンネルも苦手だ。
こんなかんじで、わたしは何重にも「生きづらさ」を感じる特性を持っている。
でも今回はネガティブなだけの話ではない。
生きづらさを感じているわたしが、「自分の心を取り戻すため」にやってみて良かった習慣をいくつか紹介したい。
少しでも「生きづらい」と感じている人に向けて書く。
在宅ワークが選択できるようになる
コロナ禍で在宅ワークがしやすくなったことは、わたしにとってとても良いことだった。
「フル出社」「出社と在宅のハイブリッド型」「完全在宅」まですべて経験した。
在宅ワークをするようになって、「出かける準備」「通勤時間」「1日中人と過ごすこと」にどれだけ疲れを感じているかわかった。
たまにならいいのだけど、これを週5日こなすのは大変なことだ。
コロナ以前の出社時代は、定期的に重い頭痛があった。生理痛が辛いときも鎮痛薬を飲みながらなんとか1日を耐えた。
とにかくいつも疲れていたので華金に飲むビールは欠かせなかった。
飲み会に参加するとその場は楽しいのだけど、翌日になると「振る舞いや言動に失礼があったのではないか・・・」とひとり反省会をして落ち込んでいた。
今思うと、からだやこころに負担がかかることばかりだ。
在宅ワークをはじめてからは、自分が働きやすい環境を自由に作れるようになったので、集中しやすく作業のパフォーマンスが上がった。
付き合いで呼ばれる飲み会とは無縁となり、人間関係のストレスも軽減した。
なにより、出掛ける前の準備や通勤時間がなくなり、自分の時間が目に見えて増えたので、これから紹介していく習慣に取り組みやすくなった。
もちろん、出社するほうが性に合う人もいるだろう。外に出て人と会うほうが気分転換になる人もいるのは知っている。
ただ、わたしにように妊活・不妊治療で心がザワザワしている時期や、HSPの気質で人といるのが疲れるなどの特性を持つ人は、無理をせず、社会通念にとらわれず、在宅ワークができる環境に身を置くといいと思う。
比較的、IT系の職種はリモートワークに理解のある会社や社員が多いと思う。コロナがあってその機運は強くなった。
そうじゃない職種の方でも、デザイン、プログラミング、ライティング、イラストレーション、動画編集などPC完結の仕事ができるように準備を始めてもいいし、SNSで発信力がつくと広告収入を得ることも可能だ。
今すぐじゃなくてもいい、興味があることを趣味レベルで小さく始めてみたら、いつかその経験が役に立つかもしれない。わたし自身もそういう経験がある。
しかし、完全に家にひきこもってしまうのは健康的と言えないので、出社と在宅のちょうどいいバランスを自分で「選べる」状態になるのが理想的だ。
(わたしは「週1日出社」が自分に一番フィットしていた。ひさびさに人と会ってあれこれと話すのも楽しくてストレス解消になる。)
【習慣01】 ジャーナリング(書くこと)
元々、手帳やノートなど「手書きすること」が好きだった。
在宅ワークで捻出できた自分の時間を、有効的に使いたいと思い、手帳やノートを使ったスケジュール術をいろいろ調べた。
これまであらゆるフォーマットの手帳を使ってきたが、その時の自分の暮らしや使い方にぴったりはまるものは見つからなかった。
ふと、見つけたのが「バレットジャーナル」という海外発祥のノート術だった。
「バレットジャーナル」と聞くと、絵を描くのが上手い人がノートをデコレーションしながらオリジナルの手帳を作っていく・・・というのを想像する人もいるかもしれない。
わたしも長年、そのイメージだった。たしかにそういうタイプのバレットジャーナルが流行った時期もあった。でもそれはあくまで応用的な使い方だ。
バレットジャーナルの本来の目的は、「頭の中のごちゃごちゃを整理して、やるべきことをきちんと実行すること」。(おしゃれなノートを作ってにんまりと満足感にひたることではない。)
そういった本来の目的に立ち返らせてくれ、バレットジャーナルの魅力を教えてくれたのがこちらの本。
バレットジャーナルの「公式本」と位置付けられており、これを読めばノートとボールペンだけで今すぐにバレットジャーナルを始めることができる。
バレットジャーナルでは、シンプルなノートを使うためフォーマットに当てはめることなく、書きたいことを自由に書いて良い。
その日に考えたアイデア、疑問、残しておきたいメモ、日記みたいな文章までなんでも書いてOK。
今日〜明日という日単位から、週単位、月単位まで見渡せるように、予定ややりたいことを書く。
「やりたいこと(やるべきこと)はあるけど、よくわからない」というぼんやりした状態のままでは、貴重な脳のメモリがどんどん消費されてしまう。
それらを言語化し、ひとつひとつ整理していくことで頭がクリアになる。
それだけで気持ちは随分とスッキリ、前向きになれるものだ。
「書くこと」は自分自身と向き合って話をしているようだった。
なんだか気分が晴れない時は、「もやもやノート」と名付けたノートにひたすら殴り書きをする。
吐き出したあとは気持ちが楽になった。
誰にも見せるつもりはないノートなので安心して書ける。(心配なら、最後にノートをちぎってびりびりに破くと証拠隠滅&気分がスッキリする。)
バレットジャーナルのノート術は今も続けている。今年で3冊目になる。
子育てなど状況の変化で、書く量やペースは変化しているものの、基本的な書き方は変わっていない。
そして、一冊のノートが「なにを書いても受け入れてもらえる」親友のような存在であることも、数年経った今も変わらない。
毎年、自分の相棒となるノートに少しだけ予算を取り、色や大きさなどをその時の状況に合わせて選ぶのが楽しみだ。
今はロディアのゴールブックがお気に入り。バレットジャーナル術で書きやすいように細かな設計がされている。
【習慣02】 ドローイング(描くこと)
絵を描くことも小さい頃から好きだった。
だけど、「好きだから・得意だから」描くことを勧めたいわけではない。
絵の上手い下手関係なく、「描く」という行為自体にヒーリング効果を感じているのだ。
きっかけは、2021年に「CLASS101(クラスワンオーワン)」という韓国発祥のオンラインレッスンのサービスに出会ったことだった。
(Frescoのバージョンアップにより今は販売されていないが、)韓国人イラストレーター・ススジンさんが描く、気さくなタッチの可愛らしいイラストに一目惚れして受講を決めた。
それまで、iPadではノートをとることしかしていなかったので、この時はじめてドローイングアプリのAdobe Frescoをインストールした。(有料プランAdobeCCに入っていなくても、無料の範囲でかなり使えるのでありがたい。)
レッスンでは基本的に、PCで先生がイラストを描いている手元を見ながら、iPadで自分も同じように描くという流れ。
誰かに見られるわけでもないので、緊張しない。見たまま、感じたまま好きなように描いて良い。
描いた作品は自由にアップロードできる専用掲示板も用意されているので、投稿することで周りからの反応や、先生からコメントをもらうこともできる。
ひとりで描くと「なにをどこから描いて良いのかわからない」と思い、なかなか楽しく進まない感覚がある。
だけど、レッスンでは先生が色んなアイデアをくれる。建物やパン、ワンピース、朝食が乗ったプレートなど、描いたことのないものを描くのは新鮮だった。
描くためにまずは実物をじっくり観察することで、これまで気づかなかった些細なことに気付けたりもする。
ある時ふと、思いがけない楽しさを発見した。
韓国人の先生が描きながら話す内容が、異文化そのものだったのだ。
例えば、「ケーキを描きましょう」と言って提案されたケーキが日本で馴染みのないものだったりする。
ブラックフォレストケーキ?これはなんだとググりながら描いた。
同じアジアの隣国なので、日本と似てる文化もあるし、全然違うところもあるのが面白い。(わたしはブラックフォレストケーキは知らないけど、日本のメロンパンは先生も大好きらしい。)
そんな韓国の文化や、先生の思い出話を聞くのがとても楽しかった。
優しい声の韓国語を聴きながら、アップルペンシルを動かす時間が最高だった。
先生と一緒に描くので、絵が苦手な人でもきっとチャレンジできる。
なにより「絵は上手くなくて良い」という先生のアドバイスが温かった。
わたしは常に、ものさしを使うかのように正確に線を描く癖がある。
「完璧主義でこだわりが強い、人の目を気にする」という性格をイラストを描きながら実感した。
「自分らしく描いていいんですよ。それがあなたの個性ですから。」
まっすぐな線でも、たまにゆがむこともあっていいのかもしれない。周りや見本と同じにならなくてもいい。
イラストのアドバイスを通して、自分の生き方や性格も丸ごと肯定してもらえた気持ちになった。
韓国のススジン先生のレッスンはCLASS101ではもう受けられないけど、書籍でまたあのかわいいイラストに出会える!
シンプルでゆるいイラストだけど、こんなに癒やされるのはなんでだろう。
現在もたまに他のイラストレッスンを受講している。
イラストレーターさんによってこだわりや、描き方に個性が見られるのが楽しくてやめられない。とってもお気に入りのひとり時間だ。
今後は中級レベルの編み物や刺繍、ウクレレなんかも挑戦してみたい。
【習慣03】 社会人の勉強(学ぶこと)
興味があることをじっくり学んでみることもお勧めしたい。
わたしは不妊治療中にメンタルダウンして完全在宅勤務になった頃、いそいそと毎日何かを学ぶことで心を保っていた。
学び始めた最初の動機は、不安や悲しみから逃れたい一心で、とにかくなにか別のことに集中したかった。
在宅勤務で捻出できた余暇時間をだらだらと過ごしても、ろくなことを考えないし、自己肯定感が下がる一方だ。
なのでせっかくならこの自由時間になにかを学んで、自分に自信をつけたいと思った。
どうせ学ぶなら興味のあることや、仕事に活かせる分野を選んだ。
色彩検定は長年興味があったことだ。
仕事でデザインするようになって、ますます体系的に色の知識を得たいと感じるようになった。
公式テキストと問題集を揃え、Udemyで講座を買ってみた。いざ学んでみると、色彩の世界は奥深くて、あっという間に虜になった。
これまで漠然と関わってきた「色」の捉え方が180度変わった。
「色相・彩度・明度」が理解でき、作りたい色を直感的にアプリ内で作れるようになった。
実用的ないくつかの配色技法も、理解するとすぐに仕事で使えるようになった。感覚でうんうんと悩みながら選んでいた色も、目的に合わせてもっとロジカルに配色できるようになった。
こんなかんじで「勉強」というよりも、興味関心のままに、3級だけにとどまらず、2級やUC級も楽しく学べて、結果資格も取ることができた。(今後、チャンスがあれば1級の知識も学んでみたい。)
英語にもチャレンジした。
海外文化に興味があったし、映画を観るのも好きなので、登場人物が話す英語の細かなニュアンスをもっと理解してみたかった。
毎日、NHKのラジオを聞いたり、中学・高校レベルの基礎文法や単語を覚えた。
アウトプットとして、始業前にオンライン英会話で30分、フィリピンの先生とおしゃべりした。
はじめての英会話はハードルが高かったが、次第に先生と顔見知りになると緊張はほぐれていった。
「今日はこんなことを話してみたい!聞いてみたい!」と事前準備にも熱が入った。
英会話も、やっていることは異文化コミュニケーションだ。
英語というツールを使って、お互いのことを話して理解し合う。
フィリピンは「雨季」か「雨季じゃない」季節しかないとか、女性はとても子煩悩で家庭的だとか、日本の漫画やアニメについては先生の方がわたしより断然詳しいとか、朝には先生の自宅の庭からニワトリがよく鳴いてるとか・・・小さな作業部屋にいながら、遠く離れた国のことを体感できることに感動した。
完全在宅勤務で人と会うことを減らし、むやみに傷つけられないように人と距離をとりながら過ごしていた時期。
毎朝30分、わたしのことを何も知らない外国人と話をするのは最高の気分転換になった。
妊娠してつわりが辛くなってから、英語の勉強は中断したままだが、機会を見てまた再開したい。英語とは人生を通して関わりたいと思っている。
大人になって「学ぶ」ということは、堅苦しいことばかりではない。
学生の頃は「これを学んで何に活かせるんだ?」と思ったけど、大人になると学びたい分野を自分で選べる。
そうして得た新しい知識を、明日からの暮らしに活かすことができる。
また、「生きづらい」と感じて、この状況から抜け出したいと思っているわたしのような人にとっても、新たな学びは、新たなスキルになって、これから続く人生において選択肢を増やしてくれるかもしれない。
そういう未知のワクワクが、「学び」にはあると思っている。
今回は「生きづらさ」を感じやすいわたしが、習慣にしてみて良かったと思うことを3つ紹介してみた。
どれも夢中になって取り組んでいる時間は、スマホの存在も忘れ、さっきまでの悩みや悲しみも忘れ、気づくとワクワクしていた。
それは、大袈裟ではなく、「自分の心を取り戻している」時間だった。
社会の中で、社会人として、正しくふるまい続けるのは、当たり前なのに大変なことだ。
そんな時、ひとりでも、家の中にいても、心を取り戻すことができる時間の過ごし方をいくつか手札に持っていてほしい。
今回は3つに厳選したが、「編み物」「映画鑑賞」「ラジオ発信」など、ひとり時間にやってよかったことはたくさんある。
それらはまた今後の記事で紹介していくので、「暮らしのデザイン」の発信をこれからも楽しみにしてもらえると嬉しい。
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