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山田沙夜
2018年11月9日 21:57
ナツミはコホンと咳をして唇を濡らした。かすかに香ったコーヒーの香りが、ふっと消える。 テーブルに頬杖をついて、緊張感皆無の所長が、嫌味か皮肉かどっちを聞きたい? とばかりに口元をにやりとゆがめた。ぬるそうなコーヒーを一口すする。「所長、昨日から鼻がむずむずしています。これからエアクリーナーをチェックします」「ちょっと待て、逃げるなナツミ。きみは今日の客の担当だろ。どうだ、きみの鼻までコーヒ