天狗の供物と夜叉の褥 9/14
わたしの中の恭輔さん
ペールグリーンの外壁が優しげなヴェルデ川東は築十年ほどの木造二階建て。一棟四世帯の建物が敷地内に三棟並んでいる。いつも通り平穏で、洗濯物を干している部屋がある。ベランダの鉢植えに水やりをしている人がいる。
西101が恭輔さんとわたしの住まいだ。特に変わった様子はなさそうだけど。
けれど部屋に鍵がかかっていなかった。
ドアを開けると二人のサンダルがてんでに転がっていて、恭輔さん愛用のスニーカーが見当たらない。下駄箱の靴は踵をこちらに向けてちゃんと