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「目的思考で」学びが変わる


久々にワクワクを感じる本に出会った。


多田慎介著書の「目的思考」で学びが変わる–千代田区立麹町中学校校長・工藤勇一の挑戦–である。


現在の教育システムに疑問を投げかけ、子ども達が主体的に自分で考えながら学びの場を作り上げていける、自律的に行動できる生徒を育てていく。公立の麹町中学校でその様な大胆な教育改革を行なっている工藤校長の取り組みを描いた一冊だ。


日本教育は何のためにやるのかという「目的思考」を生徒が習得できるような仕組みがない。工藤校長は、多様な変化を遂げつつある社会に今後放り出される子ども達が「自分で考え、行動できる」ようになってもらう為に形式的なルールや昔からの伝統に囚われず、子ども達や保護者と共に教育システムを日々改善し従来の教育、学校の在り方を変え続けている。


生徒主体で競技を決め運営や進行まで生徒が行って作り上げられる運動会、旅行プランを実際の旅行会社の社員にプレゼンするという目的のもと行われる修学旅行など、従来とは異なった教育を信念をもって進める麹町中学校の活動はとても興味深い内容であった。それと共に、今の教育が変われば日本も変わる、というアツイ熱意と使命感を感じる一冊であった。


目的思考で教育を受けていない私達は、社会に出てからも「どうしてこんな不必要なことするんだろう?」と思いつつも、それに耐えつつ無難に日々を過ごしていく事が多い様に思う。疑問を持っても、そこを自分なりに考えて行動していく、そうゆうトレーニングをされていないので最終的に自分の中で問いを重ねるよりも、一般的に正解と言われるカタチを追い求めていく。


昨今、多様性が叫ばれる世の中で、正解を教えるというよりは、自分で考えられ道を切り拓いていける力を身に付けられる教育が必要になってきている様に思う。昔の伝統的な教育方針を見直し、新しい教育のあり方を模索しながら改革を進めていくのは急務である。


自分にはまだ子どももおらず、子どもに関わる機会も中々ないのが現実であるが、自分の子どもができたら、意識して関わりたいと思える内容が盛り沢山であった。


特に印象的だったのは、後半に収録されている「すべての子どもの学習権を保障する」という理念を掲げ、教職員や地域の人々とともに新たな学校づくりのあり方を示した、木村泰子氏との特別対談②と第4章の保護者も、学校を変えられるだ。

ピアスや髪染め、その他問題だと言われていることのほとんどは、「大人が問題だと言うから問題になる」のだと私は思います。教員が言えば言うほど、子どもたちはそれを意識するようになっていきます。 ー本文より、工藤さんの言葉


人の心なんて教育できるものではない。‥‥私達が生徒たちに大事にしてほしいと伝えるべき事は「心」じゃなくて「行動」なんです。


自律のスイッチが入るタイミングは、ほぼ間違いなく、親以外の誰かがきっかけになっているんです。 ……だから大人たちは無理をして子どもの自律のスイッチを押そうともがく必要はないと思うんです。その代わり、子どもたちにとっての良い環境を作ることに注力すべき。もし不安になってふらついたら、子どもたちのために何をすべきか、私たち教員もみなさんと一緒になって徹底的に考えます ー第4章より


自分はどんな子ども達にどんな関わり方をし、どのように育って欲しいのだろう?と考えた。大人だって完璧ではないし日々アップデートが必要だと書かれていたが、その通りで子ども達の周りの先生や保護者等が子どもから教えられる事も多い様に思う。



自分は海外で生活しているが、海外での就学経験はない。夫と子どもの話になると毎回話題になるのが「子どもにどの国で教育を受けさせるか」だ。

私は日本で幼稚園から大学まで卒業しており日本の教育しか経験していない。その点、夫は中学生までは台湾その後はカナダで高校、大学、大学院を経験しており他国での就学経験がある。


日本の教育を子どもに受けさせる事に対して、自分の経験を踏まえるとあまり積極的ではない。いじめや毎日の塾通い、激しい受験戦争など不安要素は挙げるとキリは無い。しかし、どこか他の国の教育がが秀でて良いとも思わない。


やはりそうなると、結局は周りの大人がどの様に子ども達と関わっていくか、が1番の鍵であると思う。

自分も日々子ども達と共に成長し、自分の経験していない世界を歩んでいく子ども達に学び、そして存分に自分のやりたい事をさせてあげられるだけの安心感とバックボーンを与えられる親でありたい。

そして、親だけでなく色んなタイプの大人がいるという事を肌で感じてもらえるように、色んな人種やタイプの人達との交流をして社会の多様性を体感して育ってくれるよう子育てをしていきたいと思う。



この本を通して既にこの様な斬新な取り組みを公立の中学校で展開している人達がいることを知れて感動すると共に頼もしく感じた。

もっと多くの人にこの人達の存在や推し進める教育改革を知ってほしいと思った。

興味深いと思う人は沢山いると思う。


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