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映画「目の見えない白鳥さん、アートを見にいく」で流した涙の訳

2022年Yahoo!ニュース本屋大賞で話題の作品が映画化された。
本を読んでまもなく近くで上映会があるなんて、ほんとうに幸運だ。

2022年12月4日、広坂シネマクラブで開かれたトーク会は、控えめな拍手ではじまった。金沢は地方だから熱がないのか、と思ったがそうではなかったようだ。

上映された映画には、とってもチャーミングで障害者の悲壮感など全くない爽やかな白鳥さんの人柄があふれていた。動画からもその様子がうかがえる。

映画の上映後ステージに並んだのは次の3人。

  • 全盲の美術鑑賞者目の見えない白鳥建二さん

  • 共同監督の三好大輔さん

  • 同じく共同監督で書籍も執筆した川内有緒さん

「見える人と見えない人の差はない」
「仲良くなりたい人と仲良くなるだけ」
「誰とでも繋がる必要性ない」
と障害は大した問題ではないという白鳥さん。
「この映画での自分の立ち位置はとても気楽だ」と、白鳥さんの屈託もなく笑う。

上映後のトークで印象的な出来事が起こる。
聴覚障害者の方が手話で感想を述べたのだ。
「障害者だからと行って、我慢しないで遠慮しないで伝えることが大切」
これを聞いて(実際には手話通訳を見て)三好監督の感極まった様子に、会場ももらい泣き。

障害を超えた映画でありながら、障害を持つ方の言葉に泣く。
この矛盾はなんだろう。
結局、障害者に同情しているのだろうか。

映画関係者が字幕や解説に膨大な時間と労力を要したことが報われたからか。
字幕一つにしても、生まれつきの聞こえない人と中途失聴者では、求める情報量が異なったというから、落とし所を下げるのは大変だっただろう。

しかし、三好監督が涙したのは違う理由ではないか。
障害者であろうと健常者であろうと、いい人はいるし悪い人もいる。
わかりあえる人とわかりあえない人も。
しかも、わかりあえたと思っても、ほんの一瞬で過ぎ去る思いかもしれない。

この映画の冒頭では、白鳥さんが「人はわかりあえないもの」と言う。
本を読んでいて本質だなと思っていたことを直球で投げてきたのに驚いた。
サビから入る最近のヒット曲のよう。
だからこそ、白鳥さんはどんな境遇の人であれ、一緒に居て心地よい人とアートを見ながら会話を楽しみたい、と思ったのだろう。

映画で泣くシーンはないが、トーク会で泣いた。

【あとがき】
考えがうまくまとまったら、書き直すかもしれません。
以前自分書いた書評も読み返し中。


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