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とり戻せない淡い色

(今回の記事は、1400字をこえています)

目が覚めたら、両手の爪は長いままだった。

いつもの、指先用の薬指サイズの白い爪切りを、パチンパチンと鳴らしていたのは、夢の中の出来事だった。

私は、手と足の爪切りを分けて使っている。それは、衛生面に気を配っているのではなく、距離感があるために足の指は長くて大きな爪切りを使う。

手の指の爪は、長くなっているのが2〜3日気にかかっていた。
ようやく夢ではなく、現実に切ることができた。

それにしても、音まで臨場感があったなぁ。

夢占い🔮で、調べてみた。

「足の爪を切る夢」‥‥意味は、成長しているサイン。あなたが進歩するという暗示。

「手の爪を切る夢」‥‥意味は、自分磨きに励むと吉。自分への不安を示唆している。
また、違う自分になりたい。前向きな気持ちで、不安を希望に変えること(ポジティブ思考)により、理想に近づく。
不用なものを断ち切る暗示。
              と出ていた。

最近、変わりたい、という気持ちは強くなっていた。
デジタルデトックスをやってみたり、朝日を浴びるように心がけたり、つぶやきでも、宣言している。

小学校の美術の時間に、水彩画を描いたことを思い出す。

『身近な景色を描いてみよう』というテーマだった。

みな、家の周りの景色だったり、畑仕事をしている人だったり、学校から見える川や動物を描いた。

2時限くらいの、短時間で仕上げなければならないという縛りがあり、のんびりとデッサンをする私には向かない難題な授業だ。

下書きだけで1時間ほど経ってしまい、色塗りは焦っていた。

それでも、山の稜線を滲ませたり、青空を明るく仕上げたり、鳥が飛んだり、キレイな風景を描いていた。

すると、先生がやって来て、

「山はこんな色をしてないぞ。ちゃんと枯れ葉は秋らしく描きいれて、土だって、こんなんじゃダメだろう」

と私の画用紙を自分の方にむけた。
パレットには茶色や灰色や黒色の絵の具を広げ始めた。そして、私の筆を取りあげて、上から塗り始めた。

あ〜あ、鳥が夜空のトリになっちゃった‥‥

全体的に茶色が強く、下書きで描いていた鳥は、すっかり消えてしまった。

現在の教育ではないかもしれないが、40年くらい前の先生は怖いヒトもいた。

「あと30分しかないからな。ちゃんと仕上げるんだぞ」

と、あたかも生徒のために描き進めました、という先生の自己満足に、私は呆れ返って持つ筆は止まり、黒々としたパレットを眺め、
暫くすると悲しくなった。

先生は、リアルな山や地面を描いた。

間違いは、綺麗な色づかいの私だったかもしれない。

でも、先生のリアルな景色は、私の絵じゃない。これは、先生の絵だ、と思った。

小学生なりに、私にもプライドがあった。

そこからの残り時間は、ひたすら全体の色を薄くして、飛んでいる鳥を復活させる時間になった。鳥が、薄暗い空に舞い戻ることは、小学生の私の技術では無理だった。

先生の絵は、下手っぴだ。

ココロの中で悪態をついて、私は授業の最後に、ほかの同級生が提出した後、完成した先生の絵を出した。

『変わりたい』という気持ちを阻む力があることを知った。
小学生の私にも、変えたい気持ちが備わっていた。

悔しかった気持ちが、何十年も経ってから思い出されるなんて、noteがなきゃあり得なかった。

あー、😮‍💨また長くなってしまった。

思い出との対峙は、
日曜日だから出来ることで、
穏やかな気候の秋の日、あの頃に見上げた景色が私の中では続いている。

見た目が変わっても、私の絵ゴコロは健在でした。

パステルの淡い色は、簡単に塗りつぶしてはいけません。

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