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40代、二度目の起業で世界に挑むカバー谷郷元昭が明かす、“陰キャ”でも起業家コミュニティに参加するワケ

こんにちは、千葉道場ファンドです。

このnoteは千葉道場ファンドの投資先起業家でつくるコミュニティ「千葉道場」のカルチャーを伝えるべく、道場内のヒトやモノ、コトにフォーカスにして発信していきます。

今回は、千葉道場でMVPを受賞したカバー株式会社谷郷元昭(@tanigox)さんのインタビューをお届けします。40歳代半ばにして二度目の起業に挑戦。わずか数年で業界最大級の企業へと育て上げました。その成長速度と目標の高さは千葉道場内でもトップクラス。千葉道場の掲げる「Catch the Star」の理念を体現する活躍でMVPに選ばれました。

谷郷さんは、2008年に株式会社サンゼロミニッツを設立、日本初のGPS対応おでかけ情報サービスアプリ「30min.」をリリース。2014年に同社を株式会社イードに事業譲渡。

2016年に「つくろう。世界が愛するカルチャーを。」を掲げ、VTuber事務所『ホロライブプロダクション』を運営するカバー株式会社を創業しました。

ホロライププロダクションは2017年9月に「ときのそら」がデビューして以降、チャンネル登録者数172万人の「戌神ころね」を筆頭に、「兎田ぺこら」など大人気VTuberを多数輩出。所属VTuberの累計チャンネル登録者数は5000万人を突破しています(2021年11月時点)。

また、2020年にはインドネシアに現地事務所を立ち上げ、英語圏向けのVTuberグループ「ホロライブEnglish」がデビュー。「Gawr Gura(ガウル・グラ)」は、2020年9月のデビューからわずか1年でチャンネル登録者数が360万人を突破し(2021年11月時点)。バーチャル・エンターテインメント業界で海外マーケット開拓のパイオニアとして目覚ましい活躍をしています。

千葉さんと私は似た者同士。お互いに「陰キャ」なんです

谷郷さんは、ユーザーからは"YAGOO”としても親しまれています。

――千葉と出会った経緯を教えてください。

「2017年12月に開催された『Infinity Ventures Summit』のプレゼンコンテストに参加して『ホロライブ』をプレゼンした際に、千葉さんが審査員として参加されていたことが、最初の直接的な出会いです。そのプレゼンコンテスト後に『シリーズAに投資したい』と千葉さんからご連絡いただき、投資家と起業家の関係がスタートしました」。

「私と千葉さんは、バックグラウンドが似ているんです。私は最初に入社したイマジニアという会社で携帯公式サイトの事業などに携わっていました。その当時、千葉さんがいらっしゃったケイ・ラボラトリー(現:KLab)と取引をしていまして。直接的な出会いは2017年の12月ですけど、それより10数年も前から『会ったことはないけど知っている』という関係でした」。

「経験しているビジネス領域が似ているせいか、初めて会ったときも話がしやすかったことを覚えています。私は基本的にコミュ障なんですけど、千葉さんも同じようないわゆる『陰キャ』タイプ。そのあたりも含めて波長が合うのかな、という印象を持っています」。

――たしかに、千葉は「陰キャ」っぽいところもありますね。

「千葉道場内でも、千葉さんはご自身で『陰キャ』って言っていますからね。もちろん外で喋らなければいけない場ではきちんと話されていますが、自分からガンガン交流しに行くようなタイプではないと思います。ただし、決して熱量が無いわけではない。アクティブさが、ご自分に向いているんですよね。自分がやりたいことを自分で成し遂げていく、という。私もそういうタイプです」。

――千葉以外からも投資の話はあったのではないかと思います。そういった中で千葉から投資を受けた理由はなんですか?

「私たちのビジネスはインターネットビジネスとコンテンツビジネスの融合です。実は、これを直観的に理解できる人は、そう多くありません。千葉さんは両方の領域を理解されている人ですから、自分たちの事業の話が通じやすいという意味で、投資家としてついてくれたら非常に助かるなと」。

「これは私見ですが、事業に口を出す投資家ってイケてない。そういった意味で千葉さんは『静観』といいますか、信頼していただいていると感じますし、『千葉道場』という学びの場を提供いただいていることも有難いと思っています」。

優秀でも経営に苦戦する人はいる。そのギャップから学ぶ

――千葉道場を「学びの場」と表現されましたが、具体的に千葉道場というコミュニティで得られているものについて教えてください。

「千葉道場に参加することで得られるメリットは『目線合わせ』ができることだと思っています。学習塾と同じです。そもそも私が起業を考えたのは、新卒で入ったイマジニアの同期や先輩に、後に上場企業の代表やCFOになった人がゴロゴロいたから。そんな環境にいたので『アイツに出来て俺にできないわけがない』と思うようになった。千葉道場もそれと同じなんです」。

「正直に言ってしまえば『社長』という肩書を持っていても、必ずしも優秀な人材だとは限りません。企業経営においては社長個人の優秀さというのは、そこまで重要ではないと思うんです。それよりも『どういう市場で、どういう戦い方をするか』という、目の付け所の良さが非常に重要です」。

「千葉道場にはいろいろな市場・戦い方で企業経営している社長がいて、うまくいっている人もいれば、そうでない人もいます。そういった社長たちの姿を客観視して『目線合わせ』ができることが、大きなメリットのように感じます」。

「人とコミュニケーションをとると、その人がどれほど優秀か、ある程度分かりますよね。その感覚と、その人が経営している会社の成長を照らし合わせてみると、必ずしもリンクしていない。優秀な人だなと感じるのに会社経営は苦戦している、ということがよくあるわけです。そのギャップに対して何か気付けることがあるんじゃないか、と私は思っています」。

「実をいうと私は普段、千葉道場の人たちとは、それほど積極的にコミュニケーションをとらないんです。むしろ、千葉道場というコミュニティに参加することに、当初は乗り気ではなかったくらい」。

「それでも千葉道場に参加しているのは、大学受験の時の苦い経験があるからなんです。ライバルがほとんど居ないような小さな塾に入ったら、切磋琢磨できず受験に失敗しました。ライバルがたくさんいて切磋琢磨できる千葉道場という環境は、今の私にはとても合っていると感じています」。

「千葉道場には『お互いが話し合った内容を外に出さないことを誓い合う』という『血判状』の文化があります。これにより、千葉道場の中ではお互いにかなり踏み込んだレベルまで、腹を割って話が出来ます。単に傷をなめ合うのではなくて、有効な解決策をお互いに出し合うこともできる。これも千葉道場ならではの良さだと思います」。

成功のパターンは共通化できない。失敗のパターンからは共通の知見を得られる

――普段は千葉道場の人たちとはあまりコミュニケーションをとらないとのことですが、合宿などの機会だけを活用している、ということですか?

「直接的なコミュニケーションはとりませんが、千葉道場のFacebookコミュニティは有効活用しているんです。何か困ったことがあったらすぐコミュニティに投稿して、ご意見を募っています。おそらく千葉道場の中でも投稿数が多い方じゃないでしょうか。先ほど『コミュ障です』というお話をしましたけど、直接のコミュニケーションが苦手なだけで、インターネット上では喋れるタイプなんです(笑)」。

「それとFacebookコミュニティでは、他の人も困ったこととか失敗談を投稿したりしている。テレビ番組の『しくじり先生』じゃないですけど、そうした失敗の経験を共有できると、周りの人が同じ失敗を繰り返さなくて済みます。成功のパターンは業種などによって様々なので共通化しにくかったりします。対して失敗パターンは、特にスタートアップに関しては、共通の知見を得やすいんです」。

――最近、千葉道場のFacebookコミュニティで相談した事はありますか?

「当社は今、月に数10人のペースで人が増えているんですが、新型コロナの影響もあって、同じ部署にいる社員は分かるけど、他の部署の社員はよく知らない、という状況が起きてしまっている。そこで『何か上手いやり方はないですか?』というご相談をしました」。

「千葉道場の方々からは『シャッフルランチが良いと思いますよ』とか『他社ではこういうことをやっていますよ』など、いろいろなご意見をいただけました。それで私も実際にシャッフルランチを、オンラインでも参加できる形で取り入れてみたんです。そこには社長の私も参加していて。仕事の話を参加者同士で共有できたりして、良い手ごたえを感じています」。

「先ほどもお話したとおり、失敗のパターンは誰しもが通る道だったりしますから。困っていることを投げかけると経験に基づく解決策を返していただけるのは、有難いです」。

――カバーは海外展開を積極的に行なっています。これから海外を目指す企業に、起業家コミュニティとしての千葉道場はどんな貢献ができるでしょうか?

「千葉道場にはシリコンバレーで起業に挑戦されている方も何人かいらっしゃるんですよね。そういった方々が海外の拠点を作ろうとする時に、例えば採用面とか、どういうレベル感でスケールさせていくのかとか、そういった『海外における組織作り』の面で、千葉道場というコミュニティがフォローしていけるようになると良いなと思います」。

「海外ではまだまだ日本人のビジネスコミュニティが小さい。千葉道場の持つ人的ネットワークを有効活用できる余地があるように感じます。例えば、私たちカバーが、海外に事業所を構えている千葉道場のメンバーと連携することで海外進出が成功する、というような事例が生まれると、他の起業家にも良い影響を与えるんじゃないでしょうか」。

尽きないモチベーションの背景にあるのは“自己中”

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世界を目指すミッションは、まさに千葉道場の「Catch the Star」の理念に通じるものがあります。

――谷郷さんにとって、カバーは40歳代で二度目の起業ということになります。若くしてイグジットし、燃え尽きてしまう起業家もいるなかで、それほどのモチベーションを保つ秘訣を教えてください。

「『自分の人生を生きたい』ということに尽きると思います。基本、起業って大変なんです。カバーを立ち上げる時も『VR』なんていう当時は聞き慣れないものに手を出したから、周りからも距離を置かれたりしたんです(笑)」。

「一度目の起業に成功した起業家が二度目の起業を30歳代前半でやる、というパターンはよくあるんですけど、私のように一度目の起業を『なんとか乗り切った』というようなステータスの人が二度目の起業を、それも40歳代で挑戦するのって、ハードルが高く感じるんです。お金もあんまり無いし、家族もいたりしますから」。

「その点、私は言い方はアレですけど『自己中』なんだと思います。社会にインパクトを残すようなことをやりたいという思いが小学生の頃からあって、それはどうしても自分では譲れないことなんです」。

「カバーでは確かにホロライブプロダクションという大きなコンテンツを作り上げることができました。でも、これで満足しているわけではない。カバーという社名は英語で書くと『COVER』。これは『Communication×Virtual』の略です。共通の趣味を持つ世界中の人々や遠く離れた友人や家族と、オンライン上でコミュニケーションしながら楽しめるサービスの提供を、私たちは目指しています。ホロライブプロダクションの運営はあくまでその一環であり、今はホロライブで培ってきた知見を活かして、メタバースの領域でのサービス展開に挑戦しています」。

「もちろんホロライブプロダクションの事業も、積極的に事業展開を図っており、様々な新しい取り組みにトライしています。最近はローソンや郵便局、富士急ハイランドなど他業種とのコラボをどんどん行なっていますし、来年3月には初となる事務所全体のイベントも開催予定です」。

「二度目の起業でもこうして高いモチベーションを維持できるのは、背水の陣を敷いているからだと思います。『ここで失敗したら二度と同じようなチャンスはやってこないぞ!』という」。

「一度目の起業経験を経て、投資家の知り合いもたくさんできた。そして、どういう事業のやり方をすると失敗するかもよく分かりました。そうしたら『後は挑戦するだけじゃないか』と。一方で『最後のチャンス』という認識もありました。こういった考えがあるから、今も気合を入れて取り組めているんです」。

「余談ですが、当初は『40歳代での二度目の起業』に否定的だった人たちも、今の私を見て続々と意見を変えていらっしゃいます(笑)。私のようなタイプの起業家は珍しいかもしれませんが、私の取り組みを見せることで他のおじさん世代の方々にも勇気を与えられれば良いなと思います」。


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