見出し画像

乗り越えるべき【起業の壁】Chapter5 ファイナンスの壁(後編)

こんにちは、千葉道場メディアチームです。

千葉道場noteは、起業家コミュニティである千葉道場内の起業家が持つ経営ノウハウをもとに、日本のスタートアップエコシステムをよりよくする情報を発信しています。

スタートアップの経営では、起業後に必ず遭遇する悩みや困難、すなわち「壁」があり、それを乗り越えなくては成長が停滞してしまいます。

本連載『乗り越えるべき【起業の壁】』は、千葉道場コミュニティのメンバーでもある令和トラベルCEO・篠塚 孝哉さんのnote記事「スタートアップ経営で現れる壁と事例とその対策について」を参考に、スタートアップ経営において乗り越えるべき「壁」に注目。千葉道場コミュニティ内の起業家にインタビューを実施し、壁の乗り越え方を探ります。

本連載では起業家が直面する壁を8つに分類。壁ごとに前編・後編に分けて起業家の考え方をご紹介します。

第5回の前編は、事業の成長には必要不可欠な「ファイナンスの壁」の乗り越え方を探りましたが、今回はその続きとなる後編をお送りします。

【今回の壁】

第5回:ファイナンスの壁

【次回以降の壁】

第6回:PMFの壁
第7回:組織の壁
第8回:倫理・ガバナンスの壁

ご協力いただいた起業家の皆さん

黒川 晃輔さん
株式会社LITALICO、株式会社パンカクを経て、2013年10月にゲームアプリケーションの企画・開発・運用を行なうNobollel株式会社を創業。現・同社CEO。

石井 貴基さん
千葉道場株式会社取締役、千葉道場ファンドパートナー。2012年に株式会社葵を創業、誰でも無料で学べるオンライン学習塾「アオイゼミ」をリリース。2017年にZ会グループにM&Aを実施。以降も株式会社葵の代表取締役として、グループ各社と複数の共同事業を開発し、2019年3月末に退職。同年10月より現職。

門奈 剣平さん
株式会社カウシェ代表取締役CEO。日中ハーフ。2012年より「Relux」を運営するLoco Partnersにジョインし、海外担当執行役員と中国支社長を兼任。2020年4月に株式会社X Asia(現・カウシェ)を創業し、同年9月にシェア買いアプリ「カウシェ」をリリース。

創業期のファイナンス

石井 貴基さん(以下、石井)
資本金は100万円でした。というのも、後の資金調達で金融機関の融資を受けることを考えた時に、当時は借り入れできる金額の目安が資本金の3倍程度だったんです。その時は500万円くらいは借りたいと思っていたので、資本金は最低でも100万円ぐらいはないとダメだと計算したわけです。

とはいえ、せっかく資本金100万円を集めたものの、融資を受けることはできませんでした。当時はまだスタートアップ企業に対する理解が乏しく「オンライン学習? 何言ってるの?」と、箸にも棒にも掛からずに終わってしまったんです。

その後半年くらい経って知ったのがエクイティファイナンスでした。当時「EdTech」という言葉が盛り上がりはじめ、私たちもEdTechのイベントに足を運んだりしていました。そこで先輩起業家に「石井君たちのやっている事業はベンチャーキャピタルからお金出してもらえるかもよ」とアドバイスをいただいて、ベンチャーキャピタルの存在を知りました。

そこからスタートアップのイベントに積極的に顔を出すようにして、ベンチャーキャピタルの人たちとも話をさせていただき、1年かけてようやくエクイティで資金調達することができました。

黒川 晃輔さん(以下、黒川)
資本金は、自己資金で200万から300万円ほど、かき集めました。ただ、あまり長くはもたず、思ったよりも早く3か月くらいで使い切ってしまいました。なので、すぐに融資やエクイティファイナンスで資金調達をして3000万から4000万円を集めました。あんなにノープランで、よくやってこれたなと思います。

資金調達は創業者自身が頑張るほかにないと思っています。スタートアップのイベントに参加するとか、お金を持っている知人に会いに行くなど、手段はいろいろあります。私は、若手を応援したい人が集まる会合に顔を出すようにしていました。もちろん、うさん臭い、怪しい集まりもあったりはしますが、そういったリスクを嗅ぎ分けて関わらないようにするコツもしだいに身についていきました。

人と会うこと以外にも、情報商材を売るとか、Webで何かを作って売るとか、YouTubeでチャンネルを作って売るとか、今はいろいろな方法でお金を作ることもできます。工夫の余地は大きいはずです。

門奈 剣平さん(以下、門奈)
資金調達に関してはおおむねポジティブにやってこれたのではと思っています。ただし、一度だけ不安にかられて、サービスをリリースする前に資金調達をしてしまいそうになったことがあります。リリース前にお金を1回確保しておいた方が安心なんじゃないか、と弱気になってしまったんです。

先輩起業家に相談したところ「気持ちは分かるけど、少しでもサービスの価値を証明してからの方が良いんじゃないか」とアドバイスを受けて思いとどまりました。まさにそのとおりで、今から振り返ると、拙速に資金調達に動かなくて本当に良かったと思っています。

ファイナンスを成功に導く勘どころ

石井
昔と違って今は、資金調達もいろいろチャレンジしやすい環境になってきていて、素晴らしいことだと思います。しかし結局のところは、やはり、起業家自身が人と会ったり勉強したりなどの努力をすることが大切だなと思っています。

黒川
そもそも投資家があまり注目していない業界は、資金調達が難しいと思います。私が創業した当時のゲーム業界はなかばオワコン扱いされており、調達は大変でした。

投資家が理解できていない業界も調達が難しいですね。今話題のメタバースも、その中心がゲームであることを理解できている人はそう多くありません。やはり、世の中の人が「来ている!」と共通認識を持っている業界のほうが、資金調達はしやすいのが実情です。

私の場合は結果的に資金調達できましたが、相性の良い投資家を見つけるのは簡単ではありませんでした。投資家と会うときは、その人が業界に対してどういう知識レベルを持っているのかをリサーチした上で話をするといいと思います。

門奈
「事業の相談に乗りますよ」といったオープンな投資家やベンチャーキャピタルの人もいますが、実際には、起業家にあってすぐ投資対象としてしっかりと判断をしている可能性もあります。なので、私はしっかりと準備して話に行った方が良いと考えています。常に「ここが勝負だ!」と思って、120%の力で臨むべきですね。

投資家もベンチャーキャピタルも、大変な苦労を経てお金を集めています。投資の成果に対する責任も負っているわけです。そんな人たちに「Wow!」という感動を与え、知的好奇心に訴えるためには、自分たちのビジョンを明確にして全力で勝負しにいくことが大事だと思います。「相談」ではなく、「営業」という感覚を持っていくべきでしょう。

起業家の話から読み取る「ファイナンス」の大きな壁

起業家が語る“スタートアップの8つの壁”、第5回では「ファイナンスの壁」について、前後編あわせて6名の起業家の話を紹介してきました。今回は「お金」が絡む話ということもあり、かなり赤裸々な経験を語っていただきました。

資本金については、少なくとも今回ご紹介した6名はいずれも、数10万~数100万円としていました。法律上「会社は資本金1円で設立できる」というのは確かです。しかし実際には、その後の資金調達や会社運営の都合から、ある程度まとまった金額を用意するのが現実的であることがわかります。

また、外部資金を調達するにあたっては、「リクルーティングの壁」と同様、起業家自身が動いて投資家と「会う」ことが重要であることを、皆さん異口同音に語っていたのが印象的でした。

次回は「PMF」がテーマです。どうぞお楽しみに!

文:小石原 誠
編集:西田 哲郎


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?