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哀悼・田村正和様。深作欣二『黒薔薇の館』1969

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田村正和氏が亡くなられました。
1943年生まれなので、享年77歳。ご冥福をお祈り申し上げます。

個人的には、「うちの子にかぎって・・・」(1984)の小学校教員役が一番、印象的でした。森下愛子さんが若妻役で登場し、かわいかったです。

田村正和氏といえば、阪妻の御子息で、「眠狂四郎」シリーズや、テレビドラマのイメージですが、売れっこになる直前の1960年代末に、深作欣二監督による『黒薔薇の館』1969に出演していました。松竹映画です。


『黒薔薇の館』



サロン「黒薔薇の館」に客として訪れる謎の美女(丸山明宏)に、サロン経営者の息子(田村正和)が恋い焦がれ、悲運に巻きこまれていく、というミステリアスなストーリー。映画ポスターの美輪様は、さながらオスカー・ワイルド&ビアズリーの『サロメ』風です。いわゆるファム・ファタルですね。


『黒薔薇の館』の前年には、深作欣二監督による映画版『黒蜥蜴』1968が公開されていました。


『黒蜥蜴』は、江戸川乱歩原作(明智小五郎シリーズ)、三島由紀夫による戯曲でおなじみです。三島由紀夫と親しかった丸山明宏(美輪明宏)が、舞台版・深作映画版の両方で、主役の女賊・黒蜥蜴を演じました。


この深作版『黒蜥蜴』の好評を受けて、丸山明宏をふたたび主役に迎えるかたちで、同じ深作監督&丸山明宏の組みあわせで『黒薔薇の館』が制作されました。

深作映画、かっちょい〜〜〜〜。
60年代っぽいアングラな感じが大好きです。
こんなサロンでバイトしてみたいです(ムリ)。

20代の田村正和は、モンストラスな美女・丸山明宏の大迫力を前にして、後年の朴訥としたしゃべりぶりをそのままに、いかにも世間知らずの放蕩息子という感じがかわいらしいです。美輪様に圧倒されて、声も小さいし、だいぶ存在感が薄いのですが、それも愛嬌。指先まで神経の行き届いた演技で見ているものの目を釘付けにする大スターの片鱗がそこにあります。圧倒的な輝きは、こうした数々の共演や舞台、上演を経て醸成されていったのかな、と勝手に想像します。

深作版の『黒蜥蜴』には、三島由紀夫本人が出演することでも有名です。女賊・黒蜥蜴に狂って人形化された男、という、なんとも情けない役どころでしたが。江戸川乱歩・三島由紀夫の耽美な世界観を可視化した、ファンには堪えられない一作です。

『黒蜥蜴』も『黒薔薇の館』も、VHS時代には、ふつうにレンタル店に並んでいましたが、日本国内では、DVD化がされていないようすですね。まことに残念です。。

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