見出し画像

パダウが咲いたよ。

ひと雨来たらといったら、瞬く間に雨季がやって来た。しとしと降る紫陽花の季節とちがい、ミャンマーの雨は激しい。川のような道をどう渡ろうか、と考える季節がやってきたのだ。

輪番停電が一日1回になりました。
わーい!と手を叩いてよろこぶ姿にスタッフはほほえんでいる。乾季には一日4-5回あった停電が1回に減ったのだ。(まだあるが)それで喜ぶようになるとはずい分ミャンマーに慣らされたものだ。
来週で立ち上げから一周年になる。

ミャンマーの新年をつげる花にパダウがある。4月の水祭り正月の暑い時期、ひと雨来た翌朝、雨粒の刺激により一日だけ花開く。黄色い花は女の人の髪飾りとなり、得も言われぬ香りを放つという。

西行は、「願はくは花の下にて春死なむ」といったが、パダウのようにパッと咲いて、パッと散るという死生観にも例えられるところが桜にも似ている。その香りがずっと気になっていたが、今年の4月は暑すぎて、これまで一度も観ることはなかった。

 「パダウの香りをご存じないとは。それではお届けしましょう。」
エントランスの黄色い花飾りを見上げながらマネージャーがいった。水祭り正月にはパダウを模したお花があちこちに飾られる。門松やしめ飾りのように、事務所にも飾りたいがどこで入手できるのか分からない。

「この雨をどう思います?」
涼しくなってよいのでは。カフェの店員はうなずくと、キリリと曇り空を見上げた。サイクロンが近づいているらしく、木々が揺れている。
翌朝、スタッフが賑やかに相談している。
やがて、酉の市の熊手のように黄色い枝を揺らしてやって来た。
「パダウをどうぞ。」
ちいさなオフィスにはあっという間にいい薫りが広がった。ウチに帰ったら、テーブルの上には、ミモザのように枝をまとめた黄色い花が活けられている。

雨で涼しくなってよかったね。パダウも咲いたしと声をかけたら、
「はい。でも地元のそばを通ったサイクロンが心配です。」
とスタッフは顔を曇らせた。そうか・・雨も喜んでばかりはいられない。
すると、堰を切ったように語り始めた。地元の一大事にボランティアもまだ出来ていないことに自責の念があるという。
では、事務所からできることをしよう。アレンジを頼むねというと、ようやくほっとした顔をした。

パダウは二度咲くのです。一度目は新年をつげ、二度目は雨季のはじまりです。

7月は雨安居、本格的な雨季がやって来る。


Charlie Puth  - Cheating on You 
https://youtu.be/fOoSbUoayQE



#雨の日をたのしく  #今こんな気分 #ミャンマー #パダウ   

この記事が参加している募集

#雨の日をたのしく

17,579件

#今こんな気分

76,197件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?