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私の夏休みの宿題 「悲しみよ、さようなら」

私は今、夏休み中だ。

別に会社の夏休みというわけではない。
自分で決めたこの夏休みは、作品作りもすべて手を止めて、とことん夏休みの宿題に専念するつもりだ。


まず、なぜ夏休みをとろうなどと思ったのか?

まず第一に暑すぎて作業ができない!!

レジンは紫外線で硬化してしまうため、アトリエスペースは北側の部屋にある。

しかしここにはエアコンの設置が出来ず、室温は最高36度…

カーテンを閉めれば南向きのリビングで作業もできるけれど、換気の悪い状態でレジンの気化物質をインコに吸わせるわけにもいかない。

なんだかやる気が削がれてしまい、いっそ休もうと思い至った。


けれど、やる気が削がれたのは
たぶん暑さのせいだけではない。

とにかく私は疲れ果てているのだ。

2019年は前年末からの心身衰弱のまま幕を開けた。

人生最大の凶事
幸せの絶頂からのあまりの絶望に心が付いていかない。

私の幸せを心から喜び、希望としてくれていた人たちに顔向けできない思いに苛まれ、これまでの交友関係のほとんどを避けるようになった。

どんな慰めの言葉も受け入れる事ができず、私の心にはなにももたらすことができない。

すべての楽しさ、幸せ、喜びを許さずに悲しみに暮れ続けなければ、この悲しみは簡単に癒えたことになってしまう。

そうしたら私が失ったものいっさいの価値がなくなるように思えた。

Twitterの他愛もないやりとりの中で「楽しみ」「好き」「嬉しい」という言葉を書いただけで、それをすぐに否定したくなる。

友人とどんなに楽しい時間を過ごしても、それは家に帰ればなかったことになる。

思い出はフラッシュバックのように頻繁に現れては容赦なく悲しみを呼び戻す。

過去の自分の至らなさを責め、前向きに生きることを少しも許そうとせず、不健全な想いに頑なになっているのはわかっていた。

わかっているにもかかわらず、悲しみの渦の中、自作のドラマにとどまろうとする愚かさも、ひどく自分を苦しめた。


「絶望」

この世界に永遠がないことは、わたしにとって絶望だった。

きっと、私を取り巻く外側の世界は、順調そのものに見えたろう。

精力的に作品数を増やし、大作にも取り組み、一定の評価も得ることができている。

まだ始めて1年あまりの新参アーティストとしてはまぁ上出来で、

私はすでに立ち直っていると言えるのかもしれなかった。

けれど、立ち直りたくはなかった。


人間とは不思議な生き物で、幸せを求めながら不幸に留まろうとする。

ほんの一歩、執着を手放して向こう側へと踏み出すだけなのに、それをせずに苦しみにとどまり自らを追い詰めるのだから。

8月になり、また別の大きな喪失の悲しみが私を包んだ。

そして、ようやく思えた。

私はこれまでと同じように生きてていいのかと。

こんなにも悲しいことがあったのに、なにも変わらなかったら、それはたいした悲しみとは言えないんじゃないか?


握りしめた悲しみへの執着は、意外にも別の悲しみによって溶けだした。

私の浅はかで恐れの塊のエゴは、そうしてようやく自らを救い 立ち直る活路を見出したのだ。

ずっと真実だと信じて大切に育んでいた「永遠」を、せめて私だけでも握りしめていなければ、私までもがそれはちっぽけな偽物だったと投げ捨ててしまうように思えて、それがとても悲しかった。

けれど、偽物になってしまうという怖れは、たしかにあったはずの真実を疑い否定することでもある。

悲しくてもすぐ立ち上がってもいいし
悲しくてもなにも変えずに生きていてもいい

どちらであっても、それによって悲しみの要因となったものの価値が変わることはない。

大丈夫なのだ。

悲しみという感情に意味付けなどせずに最初からそうシンプルに思えたなら、こんな風にこじらせることもないんだろう。


悲しみを人生の転機にすることはよくあることなのかもしれない。

私は2つも悲しみがなければ立ち直れなかった。

悲しみはひとつで十分だというのに。

人間は愚かだ。

苦しければなお、愚かになる。

けれども、愚かさ満載のドン底期間があったからこそ、立ち上がることを許せたのかもしれない。

私が自分を納得させるためには、どうしてもこれだけの時間が必要だったのだと思って、諦めて自分の愚かさと共に生きるしかない。


少しずつ、自分をあらためて見つめ直して、木っ端微塵に崩れ去った自分への信頼、希望、夢、自分自身への愛を取り戻していこうと思う。

夏休みはそのリハビリ期間だ。

これまで会ったことがない人に会ってみたり、初めてやってみることを増やしたり、少しの刺激を得ながらそこに楽しみを見出すことを許したい。

人間らしく、喜び、楽しみ、好き、幸せを感じ、その言葉を使うことを再び許したい。

自分を見つめ直しアーティストとしての在り方を明確にしていくことにもチャレンジしたい。

やっと、そう思えた。

8月31日の夏休み最終日には、これらの宿題を終えて、また気持ち新たに製作に戻ろうと思う。

ありがとうございます 嬉しいでーす ╰(*´︶`*)╯♡