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第一回 もじかき練習帳 お題2[作品発表]
お題2 以下の画像を文章で表現してください。
![](https://assets.st-note.com/img/1674204837137-GqhbTHCUkU.jpg?width=1200)
仕事終わりだろうか。重そうなボストンバックを左手に下げたスーツの男性は、夕日を右にしてオフィス街の歩道を渡り始めた。
都会の高層ビルの窓に映し出されるのは、夕日を浴びるビルと信号、車。
溶けるような日の光によって作り出された影は、終わりがなくどこまでも続いていくように見える。都市が眠りから目を覚ます。昇ったばかりの太陽の光に照らされながら、一人のサラリーマン風の男性が足早に横断歩道を渡っている。
いつもの通勤ルート、代わり映えのしない毎日に嫌気が差していた。
このまま今日も出勤し仕事にもまれ対して面白いことも起きることなく1日が終わるのか。
その思考が頭をよぎった途端、猛烈な絶望感を感じた。
私は。
いつも見ているだけだった、あの。
見たものを掴んで離さない、目尻が下がり、えくぼができる彼女の店へ。
横断歩道を踏み出した。車のタイヤが、アスファルトを擦る音がする。きん、と、冷えたガラスのような、硬質な冬の朝の匂い。ビルの隙間をすり抜けて、窓ガラスの反射の助けを借りて、差し込む朝日が目のふちを刺す。革靴の足音が、澄んだ空気をやけに鳴らして去っていった。
まるでお手本のような二点透視図法だ。消失点は写真の外。真ん中奥にある複数の建物は綺麗な直方体のビルだが、平面で見ると台形をつなぎ合わせたような形になっている。近くほど大きく、遠いほど小さく。等間隔に並ぶ窓も、奥行きを強調している。画面真ん中、歩く男の足元の横断歩道も、近いほど線の幅は太くなり遠いほど幅は細くなる。感動さえ覚える見事な二点透視図法だ。
ビルの隙間から差す陽の光に照らされて、横断歩道に長く伸びた影。なんだか面白くなって、かの有名なロックバンドのジャケットを真似して脚をまっすぐ伸ばしてみる。
徐々に白んでいく空。朝早いこの時間は、まだ道路を照らす街灯の光も消えていない。
赤みが強い日の出の光が、ビルの窓に強く反射している。人も少ない朝の往来には、行き交う車のエンジン音だけが響く。
交差点の信号が青になった。今から出社していくサラリーマンは、大きな鞄を片手に横断歩道を歩いていく。足早に駆けていくスーツの男性を目で負いながら、そんな急いでどこ行くの。と心の中で独りごつ。スーツマンの跡をたどるように横断歩道を渡る。早く渡りたがる車を無視し、ゆったりと。この時間、車の往来は忙しない。心なしか人の往来も。全てが茜色に染まる時間は、いつもの風景を特別に見せてくれるというのに。
もったいないよ。また一人私を追い抜いた人に話しかける。勿論、心の中で。夕日に染まった街角。信号によって停車させられた私は、ぼんやりと前を眺めていた。目の前の横断歩道を、スーツを纏った男性が一人軽やかな足取りで進んでいく。……旅行者だろうか。手には大きなバッグを持ち、どこかへ向かっている途中のようだ。
ビジネス街は夕暮れに染まり、無機質な窓が光を反射している。交差点の向こうに望む夕日に目を細めて、私はビジネスマンの後ろを歩いていた。通りの向こうにタクシーが見えたが、待ち合わせの時間にはまだ早く、このまま徒歩で向かったほうが良さそうだった。
もう幾度目かになる海外出張。車が右側通行の国は、いつ来ても慣れない。……と胸中でぼやいていれば、目的地のビルはもうすぐそこ。朝日が眼を刺して痛いぐらいだから、少し歩を速める。――ああ、こういう総ガラス張りのビル、子供の時は『空が映っていて綺麗!』と言って手を伸ばしていたな。大人になった今では、『災害時が大変そうだ』なんて超現実的な思考しか出来なくなってしまったが。あゝ、純粋無垢な幼き頃が懐かしい。
建物を照らしながらもう夜になりますよ、と顔を覗かせている神々しい程の光を放つオレンジ色の夕陽に少しづつ伸びていく影が、一日も残り僅かだと告げている
こちらを見下ろすようにそびえ立つビル
スクランブル交差点にはビルが立ち並んでいる。そんなビルを眺めていると、横から差し込んでくる橙の光に目を奪われた。もう夕日が降りている。目を細め、先を急いだ。
たまの早上がりに浮き足立つ。明るいうちに帰ることができるなんて! たったそれだけで幸せなのに、これから自分には更に人生を彩る用事がある。さあ家に帰って着替えよう。愛する人を、迎えに行くために。
帰路途中の横断歩道で立ち止まる。数多の雑踏や時折鳴らされているであろうクラクション、核も正しく世の中を回す環境音から私を切り離しているのは左右の外耳から聴こえる〝彼〟の声だ。視野を突き刺す夕陽でさえも敵うことのないその声は、朝も昼も、そして今日が終わるという今この時も、私の脳へ染み込んでゆく。
今日も仕事が終わった。着古したスーツ、踵がすり減った革靴、妻に頼み込んで新調したカバンを手に、家路を急ぐ。ビルが立ち並ぶオフィス街の、いちばん大きな交差点に差し掛かる。四つ辻のそこは道が広くとられていて、見通しがいい。老若男女、様々な人々が、信号を待つ。歩行者信号が青になった瞬間。一番にさっと歩き出した男が1人。ピシッとしたオーダーメイドのスーツにピカピカの革靴が夕日を反射する。鞄がやけに大きく、今から出張でも行くのかと、仕事終わりの頭でぼんやり思った。大変だな。一拍遅れて、男の後ろを歩き出す人々に混じり、私も歩き出す。思考はもう、この後飲むビールのことに移っていた。
いつもより早めの出勤で到着したのはまだ街灯が点いているくらいに薄暗いオフィス街。
さすがにこの時間帯ともなると人も車も疎らにしかおらず、昼のピーク時の青信号になった瞬間に溢れんばかりの人がいるこの横断歩道もすいすいと歩けてどこか不思議な感じがした。
いくつも聳え立っているどのビルもぽつぽつとしか明かりが無く、前を歩くサラリーマンも大きな荷物を持ってこれから仕事なのか、仕事が終わって帰宅するところなのか。
数時間後にはガラリと雰囲気を変えるこの景色も、目を覚ますまであと少し。曙の空が広がるオフィス街、ビルの隙間から昇った朝日が辺りを金色に染めていく。
始発前の時間帯は人も車の通行量も少なく、閑散としていた。
そんな初夏の朝に出張鞄を携えて会社を出る。自宅の最寄りからでは指定の新幹線には間に合わないため、会社に泊まり込んだのだ。
まだクールビス実施前なので、ネクタイと背広が手放せない。生地の厚い背広がじわりと体温を上げる。
額に滲む汗とギラリと照らす太陽が、今日の暑さを予感させた。所狭しと高層ビルが並び人で溢れかえるオフィス街も、赤と青が混ざり合う時間はまだ人気が少ない。車のライトを浴びながらスーツ姿の男性は、大きなバックを持ちコツコツと革靴を鳴らしながら横断歩道を足早に歩いている。
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